5月31日の日経新聞別刷りに「竹の魔術 しなりが導く匠の技」が載っていました。
・・・日本人にとって竹がもっとも身近な植物の一つであることは間違いないだろう。和的な景観を彩る要素としてだけでなく、しなやかで強靱な特性は昔から、人びとの暮らしを支えてきた。近年は厄介者扱いされることもある一方、その秘めた能力に魅せられる人は少なくない。
細い竹ひごが、生き物のようにしなる。岐部笙芳(せいほう)さんの手が交差するたび、目の前で美しい網目模様が広がっていく。大分県九重町にある岐部さんの工房を訪れた。現在全国で3人いる竹工芸の重要無形文化財保持者(人間国宝)の一人だ。
創作は「材料とり」と呼ばれるひごづくりから始まる。真竹を縦に割り、包丁を使ってひごをつくる。細いものは1ミリ以下。端から見ているとわけなく見えるが、均一な幅を保つのは経験のたまものだ。使用する数も作品によっては百本を超えるというから、繊細さに加えて根気もいる・・・
・・・(訓練学校の)1年の課程を終えた後も学び続け、展覧会で受賞もした。だが、作品づくり一本で食べていくのは難しい。問屋の求めに応じてつくった小物は一つ3000円。月に10個が精いっぱいだ。バブル期にはバッグが高値で売れたこともあったが、崩壊とともに需要は激減。アルバイトをしながらの制作が続いた。
第二の転機は25年ほど前だ。ある日、日本の竹工芸に造詣が深い米国人ロバート・コフランドさんが通訳を伴い工房を訪れた。「作品を見せてほしい」と請われ、2点を注文して帰った。その後、米国で個展を開催することになる。
いまも購入者の8割を外国人が占める。団体が山あいの工房にバスで乗り付けることもあるそうだ。「元の竹から変化して様々な形に変化する。実演すると『なんなんだこれは』と驚かれる」。竹が醸す日本文化への憧憬もあるのだろう・・・