5月23日の朝日新聞オピニオン欄、吉井理人・千葉ロッテマリーンズ前監督へのインタビュー「勝手に育った」超人たち」から。
・・・メジャーリーグで活躍する佐々木朗希、大谷翔平、ダルビッシュ有。3投手がアメリカに渡るとき、指導者として携わったプロ野球・千葉ロッテマリーンズ前監督の吉井理人さんは「勝手に育った」と評する。超人に共通する言動とは。その礎となる思考を鍛えるために、周りはどうサポートしたらいいのか。
―「勝手に育った」3投手の共通するものはなんですか。
「好奇心、向上心が強く、自分の頭で考えて工夫して練習する。主体性をもって、自分の意思や判断で物事に向き合うとも言えます。主体性は、言われたままを積極的に取り組む自主性とは明確に異なります」
―とはいえ、主体性は個人の資質によるような……。
「主体的な思考は鍛えられます。ああしろこうしろと他人に指示されるのではなく、自分で考えて取り組むことで、モチベーションが高まる。活躍する選手は自分を客観視できるから、やるべきことがわかるのです」
「まずは自分を知ることが一番のポイントです。三人称で日記を付けてみたり、脳内で自分がコーチになったつもりで自分をインタビューしてみたりすることをお薦めします。『私は』ではなく『吉井は』と俯瞰した視点で振り返る。できたこと、できなかったことが言語化できるようになれば、自ら解決策を見いだせるようになります」
―結果に至ったプロセスに加えて、そのときの感情も振り返ることが大事だそうですね。
「感情によって行動は変わります。気合が入りすぎると力んでしまう。実は家族とケンカしていたという私生活が影響することもある。メンタルをコントロールすることは重要です」
「大谷のすごさは、いつも機嫌良く見えることです。楽しくない日もあると思うんですけど、自分で自分の機嫌をとれる。力を発揮できる精神状態を作れるのです。小さいときから訓練してきたのでしょう。大谷が一人いるだけで、周りの雰囲気がぐっと良くなります。日本が優勝した2023年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)がいい例です」
―主体的な思考を育むために、指導者や保護者ができるサポートはありますか。
「気づきを与えることが全てだと思っています。まずは相手に話してもらう。安心して話してもらう関係を作るために、相手の主張は全肯定します。そのなかで『なぜ』『どうすればよかった』『どうしたい』と質問攻めにします。最初は上辺だけのことしか話せなくても、質問を繰り返すことで一歩ずつ思考が深くなっていきます」
「答えは与えられません。その人のなかにしかないのです。困ったときにヒントを与えたり、提案したりするなかで、自分に合うと思う解決策を選んでもらいます。自己決定を尊重し、成功体験を積み重ねた先に、主体性は養われていきます。もちろん年単位の時間がかかることもあります」
―勉強などでもそうですが、指導者は「答え」をアドバイスしたくなります。
「一時的には効果が出ますが、やらされてもうまくいかないとやる気がなくなり、やめてしまいます。長い目で見るとマイナスです。サポートする側は我慢が必要です。私も駆け出しの頃は、最初は選手に質問していても、最後は自分で答えをまとめていました。その会話を録音して、見直しました」
「32歳でメジャー移籍し、投手コーチから『自分のことを一番知っているのは自分自身だから、君のことを教えてくれ』と言われたのが印象的でした」