政府に「公文書等」はあるが「公文書」はない

2026年2月25日   岡本全勝

変な表題ですね。でも、次のようなことなのです。役所が扱う文書について定めた法律に、「行政文書」「公文書等」は出てくるのですが、「公文書」という言葉は出てこないのです。もし間違っていたら、すみません。

コメントライナー2023年5月11日号に「「行政文書」は正確か」を書きました。昔は、現在の「行政文書」という言葉はありませんでした。職員が作った文書は、「公文書」といわれる保存を前提とした重要な文書(決裁を受けた文書)と、それ以外の執務の過程で作ったメモなどに区分されていました。「行政文書」という言葉は、1999年に制定された「情報公開法」で作られました。同法では、行政文書には公文書とそのほかの文書の両方が含まれることになりました。ここで、法律上は「公文書」という言葉がなくなり、役所で作る文書と扱う文書は「行政文書」という言葉に変わりました。

ところが、「公文書等」という言葉は残ったのです。「公文書等の管理に関する法律」は、「行政文書管理法」という名称ではありません。
第1条 この法律は、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ、国民主権の理念にのっとり、公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り・・・
第2条第4項 この法律において「行政文書」とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書(図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)を含む。第十九条を除き、以下同じ。)であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。
第8項 この法律において「公文書等」とは、次に掲げるものをいう。
一 行政文書
二 法人文書
三 特定歴史公文書等

行政機関の保有する情報の公開に関する法律
第1条 この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により・・・
第2条第2項 この法律において「行政文書」とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。

正確には、「公文書館法」は公文書を題名に使っていて、と第2条に「公文書」という言葉も出てきます。ただし定義はありません。
第1条 この法律は、公文書等を歴史資料として保存し、利用に供することの重要性にかんがみ、公文書館に関し必要な事項を定めることを目的とする。
第2条 この法律において「公文書等」とは、国又は地方公共団体が保管する公文書その他の記録(現用のものを除く。)をいう。

国立公文書館法」も、公文書という名称を使っています。

なお、刑法には「公文書偽造等」という言葉があります。第155条の見出しです。ただし、法文には出てこず、定義もされていません。
(公文書偽造等)
第155条 行使の目的で、次の各号に掲げるいずれかの行為をした者は、一年以上十年以下の拘禁刑に処する。
一 公務所若しくは公務員の印章若しくは署名(以下この章、第百六十五条及び第百六十七条において「印章等」という。)を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画(以下この章において「文書等」という。)を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章等を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書等を偽造する行為・・・