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安保法制から10年

2025年10月1日   岡本全勝

9月19日の朝日新聞オピニオン欄は「安保法制、10年たった世界」でした。
・・・集団的自衛権の行使を一部容認し、戦後日本の安全保障政策の大転換となった安全保障関連法(安保法制)の成立から19日で10年。「立憲主義に反する」との批判が続く一方で、安保法制以降、自衛隊の活動は拡大している。いまこの法制をどう評価するのか、識者に聞く・・・

佐々江賢一郎さんの「日米軸に、真の全方位外交への礎」から。
――安保法制の推進派はなぜ法整備が必要だと考えたのですか。
「このままで安全保障環境の変化に対応できるのかという問題意識だと思います。議論の核心は、日本は集団的自衛権の行使が認められるのかという憲法論です。国連憲章で認められているのに、日本独特の憲法的制約があって、軍事力への性悪説に立つ安保観が長く続いてきたのです」
「正論を言うなら、憲法9条の改正で対応すべきでしょう。でも憲法を変えようとすると、イデオロギーや感情的な対立があって、とても難しい状況が政治的に控えている。それによって現実的な対応が遅れることへの危惧もあり、安倍政権は憲法解釈を変更して安保法制を進めました。非常に大きな、勇気ある決定だったと思います」

――妥協の産物だとしても、現実的だと。
「そういうことです。米国に依存するだけでなく、日本も自ら努力し、互いに助け合い、協力していく。集団的自衛権をどう考えるかは安全保障問題への成熟度の一つの指標でした。国際情勢が急速に厳しくなるなかで、解釈変更による法整備はやむを得ざる知恵だったと思っています」

――情勢の変化とは。
「冷戦期の日本にとって最大の脅威は、旧ソ連でした。冷戦後は北朝鮮が核・ミサイル開発を進めた。さらに中国が大国化し、経済発展とともに軍拡を進め、周辺に威圧的な態度を取り始めた。これらの脅威に対する備えが日本にあるのかという問題です」
「ここに来て、ロシアの復活と野心、北朝鮮の脅威の増大、中国の軍事大国化の三つが重なっています。中国との戦争はあってはならないことですが、同時にその誘因を与えない努力は必要です。日本は力の弱い国だとみなされれば、さまざまな対応が難しくなる。日米韓や日米豪印(クアッド)などの地域の枠組みの構築を進めてきましたが、安全保障上の緩やかな連携と言うべきものです」

――ただ、安保法成立から10年が過ぎても、日本がより平和になったようには感じられません。
「それは世界の力学が変わったからです。米国が築いてきた国際秩序を米国が壊そうとしている今、日本は米国との同盟の上に真の意味での全方位外交を進めるべきでしょう。欧州やグローバルサウス(新興・途上国)との関係強化はもとより、中国、ロシア、北朝鮮を過度に敵視せず、力の均衡を図る自主的な努力が重要です。備えを進めながら友好的に話をしなければなりません」

――自身の外交官経験とは違う世界ですか。
「全く違う世界ですよ。これからは、より混沌(こんとん)とした合従連衡のパワーゲームの時代に入るでしょう。だからこそ、トランプ米大統領の動きに振り回されない『ビヨンド・トランプ』の発想が大事になります」

――どういう意味でしょう。
「トランプ氏の存在を超えて、米国の役割を再認識し、そのうえに秩序を形成していく。実際に今、米国を凌駕する力を持つ国はありません。経済、軍事、世界への影響力も、相対的に劣化はしたが基本的には変わっていない。だとすれば、日米関係を基軸としながら、各国に幅広く連携を広げていくべきです」

――こうした連携に安保法制が役に立つと。
「役に立っているし、政府の関係者や安全保障の専門家らが想定していたことです。これを後ろ向きに戻すようなことは、日本の力をそぐことになります」

――日本の平和主義は変わっていきますか。
「航海図のない世界に入りつつあり、国と国との関係は理想論だけでは対応できません。でも一人ひとりの個人が平和を願う気持ちは、やはり大切でしょう。騒々しくなる世の中で日本は極端な方向に進まないことです。平和への希望を失わず、かたや現実的な力を失わず、両方組み合わせて進むことが重要なのです」

市町村職員中央研修所学長を退任

2025年9月30日   岡本全勝

9月30日付けで、市町村職員中央研修所学長を退任しました。学長職は、ほぼ4年務めました。結構長いですね。あっという間でしたが。
就任した2021年10月は、まだ新型コロナウイルスに注意を払いながら研修を実施していました。年間約5千人の研修生を迎えると、病気や事故も起きます。来ていただく外部講師は、400人に上ります。講師が突然来られなくなることもあります。

年間約80本の宿泊研修(それぞれ期間は3日から2週間)を実施することは、大変な作業です。それとともに、次回に向けて主題や内容、講師の入れ替えを検討します。自治体の電子化、働き方改革、危機管理などなど。社会の変化と自治体の悩みに応じなければなりません。
当研修所は、1987年にできました。先輩たちのおかげで、高い評価を得ています。2003年から2009年にかけて、教室や宿泊施設を増築しました。

他方で、施設の管理(立派な校舎と宿泊施設です。全景航空写真の奥、壁のような高い建物が宿泊棟、右側が増築部分)、職員の人事管理と組織の運営もあります。職員たちのおかげで、大きな問題なく運営することができました。また、社会の変化に応じた改革にも、取り組んでくれました。
近年では、業務と研修での電子化です。また、超低金利政策ために基金の運用益がゼロに近くなり、財政運営も課題です。専門家の指導を受けて、株式(ETF)の運用も始めました。
これからも、職員たちが、期待に応える研修を実施してくれると期待しています。

経済低迷でも再開発が進む東京

2025年9月30日   岡本全勝

9月11日の朝日新聞オピニオン欄「東京のカタチ2025」、地理学者のラファエル・ランギヨン=オセルさんによる「再開発で維持する競争力」から。
労働者の中で正規雇用と非正規雇用の格差が進むとともに、地域間では東京とその他の地域の格差が広がったのです。

・・・私はフランス南西部の田園地帯の出身です。そのためか大都市にひかれるのですが、東京は魅力的で成熟したグローバル都市です。
都市研究の専門家として、丸の内、六本木、日本橋、渋谷などの再開発プロジェクトや昭和からの商店街の関係者に聞き取りを行い、東京の再開発について博士論文を執筆しました・・・
・・・バブル崩壊後、日本経済は低迷が続きましたが、東京はバブル崩壊前より競争力のある都市となっています。なぜ、何十年も経済が停滞しているのに、東京はめざましい再開発が進んでいるのでしょう。それには政治・経済の世界的、歴史的な流れが大きく影響していると思います。

バブル経済期には地価が上がり、都市圏が拡大しました。1991年にバブルが崩壊し、「失われた10年」が来ました。この時期が東京が大きく発展する準備期間でした。金融再編が起こり、地価が下がって土地の集約が進みました。さらに2002年の「都市再生特別措置法」といった立法措置によって、高層化を伴う都市再生が可能になりました。
1991年は日本でバブルが崩壊しただけでなく、ソ連が崩壊した年です。戦後、日本は冷戦構造の恩恵を受けて発展しました。しかし冷戦が終わり、前後して急激な円高のため輸出産業の競争力が失われます。
日本は資本の投下先を、生産部門から空間の整備、それも東京という都市の再開発へと大きく転換しました。いわば産業の空洞化を国レベルで進め、東京の再開発に集中的に投資することを選択したのです。

90年代から、東京はニューヨーク、ロンドンと並ぶグローバル都市とみなされてきました。今は同じアジアのソウルや台北、香港、シンガポールや中国の大都市とも競争しています。東京のどの再開発プロジェクトも、競争力を維持するために、細心の注意を払って計画されています。
東京は国際的な地位を保ってはいますが、日本全体としては問題もあると思っています。東京だけが発展し、ほかの都市や地方とのバランスを欠いていることです。バブル崩壊後の政策が背景にありますが、この偏りを是正することは、人口減少や少子化とも関わる大きな課題でしょう・・・

まだまだ元気な蚊2

2025年9月29日   岡本全勝

まだまだ元気な蚊」の続きです。
宅急便の配達員に、「まだまだ暑いですね」と声をかけたら、「ええ、少し涼しくなりました。それで、昼から蚊に刺されるようになりました」とのこと。

猛暑だと蚊も活動しないので、これまで30度を超える昼間は刺されなかったのです。昼の気温が下がり、といっても25度を超えていて、蚊の活動時間帯になったようです。

夕方、玄関で郵便受けから郵便物を出していたら、その間に3カ所刺されました。2匹は叩きましたが、首筋は気がつかず・・・。玄関で待ち受けているようです。

大学への公的支出、国際平均の半分

2025年9月29日   岡本全勝

9月10日の朝日新聞に「大学への公的支出、国際平均の半分 OECDが報告書 「社会格差生む」指摘も」が載っていました。
日本の教育への公的支出が少ないことは、以前から指摘されています。「日本は教育に熱心だ」という通説は変更しなければなりません。「日本では親は教育に熱心だけれど、政府は熱心ではない」とです。政府・与党、文科省、財務省はどう考えているのでしょうか。
緊縮財政を続けた結果です。バラマキと批判される給付金配布には熱心なようですが。「米百俵」を思い出します。予算の問題とともに、その根底にある「社会の意識」「国民の精神」の問題です。

・・・経済協力開発機構(OECD)は9日、大学など高等教育への公財政支出額(在学者1人あたり)が、日本はOECD加盟国の平均の54%にとどまるとする報告書を公表した。小学校~高校は平均より多い。大学に対する、国などの公的支出の少なさが目立つ。
また、高等教育の女性教員の割合は31%にとどまり、比べられる国の中で最低だった。

報告書によると、高等教育の在学者1人あたりの公財政支出(研究開発を含む)は、日本は8184ドル。OECD平均は1万5102ドルだった。最高はルクセンブルクの5万4384ドル、最低はメキシコの4430ドル。比べられる37カ国の中で、日本は10番目に低かった。
一方、高等教育を卒業した人の割合(25~34歳)は66%で、OECD平均(48%)より多い。少ない公的支出にもかかわらず、大学などを卒業する人が多い形だ。
日本は、幼稚園など就学前教育の公的財源の割合も低く、OECD平均(85・6%)を下回る78・2%だった。教育への投資額全体をGDP比でみても、日本は3・9%で、OECD平均(4・7%)より低かった・・・