月別アーカイブ:2025年8月

連載「公共を創る」第231回

2025年8月21日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第231回「政府の役割の再定義ー遅過ぎる質問通告、多過ぎる質問主意書」が、発行されました。
首相や大臣が官僚をうまく使うために、官僚にやりがいを持たせる重要性を指摘しています。人事院の年次報告書や私の経験から、職場に関する官僚の不満とその対策について説明しています。

収入については、公務員は民間準拠ですから、企業の給与の平均です。しかし、官僚の多くは世間でいわれる難関校を卒業していて、同級生たちは日本を代表するような大企業などに就職しています。彼らは、企業の平均ではなく、もっと高い給与をもらっています。それと比較すれば、官僚の給与ははるかに低いのです。人事院も比較対象の企業を変更するようですが、まだまだでしょう。

そして、国会業務に起因する長時間労働は、改善されていません。通告の遅い国会質問については、誰がなぜ遅くなったのかを明らかにして欲しいです。
しかも、その国会答弁案と質問主意書作成の内容を見ると、そのような形を取る必要があるのか(通常の問い合わせで答えられるのではないか)、それが政策立案に役立っているのか(答弁が政策立案につながっているのか)、疑問になるものも多いのです。
このままでは、優秀な若者は官僚という職業を選ばないでしょう。

公文書の電子化が進まない霞ヶ関

2025年8月21日   岡本全勝

7月28日の日経新聞「押印廃止でも残る紙文化 公文書電子化阻む霞が関の「仕事の流儀」」から。
・・改ざんや隠蔽などの不祥事をきっかけに政府が打ち出した公文書(行政文書)の電子化が進んでいない。方針を掲げてから7年が経過したが、今なお新規に作成・取得した文書の6割を紙が占める。民間への人材流出が止まらない霞が関にとって非効率さの代名詞とも言える「紙文化」の脱却は喫緊の課題だが、熱は一向に高まらない。

「政府全体の電子化率を引き下げているとの批判を受けかねない極めて深刻な状況にあると認識している」
法務省公文書監理官は2024年11月、同省幹部宛てに電子化の推進を求める通知を出した。通知には部署別の電子化率も記載し、「電子媒体で作成・取得したものを紙決裁しており、電子決裁システムの活用も図られていない」と苦言を呈した・・・

・・・政府が公文書電子化に本格的に乗り出したのは18年だ。南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報隠蔽問題や学校法人「森友学園」を巡る決裁文書改ざん問題が相次ぎ発覚し、公文書管理の適正化の一環として打ち出した。
22年度には公文書の管理に関するガイドラインに「電子媒体による作成・保存等を基本とする」と明記。全省庁共通の新たな文書管理システムの整備も進む。
にもかかわらず、電子化は滞っている。内閣府の公表資料によると、23年度に新たに作成・取得した文書の電子化率は36.2%。保有文書全体では19%にとどまる。
省庁間の格差も大きい。デジタル庁や消費者庁などは保有する公文書の8割以上が電子媒体だが、法務省や厚生労働省は5%を割り込む。23年度に新規作成・取得した公文書で比較してもデジタル庁97.8%、消費者庁89.7%に対し、法務省10.6%、厚労省14.6%と差は歴然だ・・・

次のような指摘もあります。
・・・そもそも日本は国民共有の財産であるはずの公文書の存在を軽視する姿勢が目立つ。9割以上の文書は国立公文書館に移管されず廃棄される・・・

貧しい?おじさんたち

2025年8月20日   岡本全勝

電車に乗っていると、「おじさんたちは、貧しいなあ」と思うときがあります。
35度を超える猛暑が続いているのに、濃紺のスーツを着ています。白いワイシャツ、ネクタイはなし。上着を手で持っている人もいます。
それなら、上着はやめたらどうですか。あるいは、上着はもっと明るい色の、夏用のものを着るとか。

貧しいという意味は、二つあります。
一つは、濃紺のスーツしか持っていないのでしょう。財布が貧乏という意味です。それなら、妻と相談して、夏用の上着を買ってもらってください。
もう一つは、その服装をなんとも思わない、意識の貧しさです。昔の写真を見ると、そんな格好をしている男性は見当たりません。上着なしにするのか、羽織るなら夏用の上着にしてください。
濃紺のスーツなら無難という意識も、困ったものです。

氷河期世代の今とこれから

2025年8月20日   岡本全勝

7月28日の日経新聞「溶かせ氷河期世代」「ようやく正社員…でも年金・住宅・介護の三重苦」から。
・・・就職氷河期世代はバブル崩壊後の1993〜2004年ごろに社会に出た1700万人ほどを指す。大卒男性の就職率は1990年の81%から2000年に55%まで落ち込んだ。新卒一括採用と終身雇用が当たり前の時代。スタートでつまずき、望まぬ非正規就労を強いられた人も多い。生産年齢(15〜64歳)人口の2割ほどを占め、働き盛りの終盤にある。

明るい兆しはある。総務省の労働力調査によると1978〜82年生まれの男性は40代前半になって初めて正規雇用率が9割を超えた。企業の旺盛な採用意欲が40〜50代に波及しつつある。
ようやく雇用に光明がみえても、その先には三重苦が待ち構える。
まずは低年金だ。公的年金の財政検証によると、経済成長率が低迷するシナリオでは2024年度末時点で50歳の人の5人に2人は将来年金が月10万円未満しかもらえない。
非正規雇用が長い氷河期世代は年金の2階部分、厚生年金の加入が短くなりがちだ。1階部分の基礎年金(国民年金)も年金額を抑える措置が57年度まで続く・・・

・・・衣食住の一角、住宅も難題となる。総務省の住宅・土地統計調査によると、23年の持ち家率は40代で58%、50代は66%だった。いずれも30年前から10ポイント程度低下した。終の棲家(ついのすみか)を持てぬまま、高齢期に突入する。
みずほリサーチ&テクノロジーズの藤森克彦主席研究員は「長期雇用を前提にした企業の福利厚生と相まって、政府は景気対策の側面のある持ち家政策を進めてきた」と話す。
マイカーやマイホーム、専業主婦世帯といった昭和の人生モデルは氷河期世代に当てはまりづらい。藤森氏は「90年代以降、非正規労働者や家族形態の変化によってほとんどの年齢層で持ち家率が低下した。生活基盤を整備する住まい政策が重要だ」と指摘する。

見過ごされがちなのは親の介護負担だ。日本総合研究所は氷河期世代のうち親を介護する人は33年に約200万人と23年から2.6倍に増えると試算する。下田裕介主任研究員は「貯蓄が乏しく介護離職の選択は難しい。仕事と介護の両立に大きな負担を強いられる」とみる・・・

コメントライナー寄稿第24回

2025年8月19日   岡本全勝

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第24回「英語が国語になる日」が8月18日に配信されました。

解説には「日本語には、ひらがなとカタカナと漢字3種類の文字があります」と書かれていますが、アルファベットも使っていますよね。
外国語を翻訳せずカタカナ語で取り入れることも多いですが、最近では日本語にある単語も、カタカナ語に置き換えることが進んでいます。「行事」をイベント、「手助け」をサポートなどです。ところがさらに進んで、アルファベットのまま入れるようになっています。例えばSNS、LEDとか。

1500年ほど前に漢字と音読みを取り入れ、その後の日本語ができあがりました。それを考えると、現在は英語を取り入れているということです。いずれ、イベント、サポートは、event、supportと書かれるようになるのでしょう。そして、英語が国語となり、現在話している日本語は古語になるのではないでしょうか。
理由の1つ目は、英語が必須になりつつあることです。タクシー運転手や和風旅館の従業員も、英語を話しています。
2つ目は、言葉が変わる体験です。40年前に私が鹿児島で勤務したときは、言葉が通じなくて苦労しました。ところが最近は、沖縄の人も鹿児島の人も、ほとんど東京共通語を話しています。急速に変わったのです。
これを考えれば、3世代もあれば、日本語は英語に取って代わられるのではないでしょうか。文法や発音が異なりますが、英語教育と生活での必要性は、それを乗り越えるでしょう。

言葉だけでなく、広く考えると、文明の乗り換えと見ることができます。
1500年前の漢字の導入は、言葉だけでなく、中国思想の輸入でした。古事記の世界から、論語や仏典や史記の思想に乗り換えたのです。そして、江戸末期の開国以来、今度は西欧思想を輸入することに転換しました。法学、科学、医学などなど。この150年あまりを文明の乗り換えとみれば、翻訳とカタカナ語は転換期の手法だったのです。その完成が、日本語から英語への切り替えでしょう。

文明の乗り換えは、明治以来150年をかけてやってきましたから、多くの日本人にとって違和感ないでしょう。憲法をはじめとするこの国のかたちを、西洋風に変えたのですから。しかし、国語の転換は、私にとって悲しいことです。紫式部や夏目漱石はこの事態を見たら、何と言うでしょうか。国語学者に、意見を聞いてみたいです。