月別アーカイブ:2025年7月

コミュニティの再生を

2025年7月29日   岡本全勝

7月12日の朝日新聞読書欄、饗庭伸・東京都立大学教授の「コミュニティの再生 豊かで魅力的な資源へ生かす道」から。

・・・コミュニティは呪文のような言葉である。社会学の専門用語だったこの言葉が人々の口に上るようになってから約50年たつが、「~センター」や「~デザイン」など、色々な言葉とくっつきながら、この言葉はちょっとよい世界に人々を導いてきた。そしてそこに「再生」がつくと、「なんかやってみようか」と人々の背中を押す実践的な言葉になる。
人々が豊かな暮らしを送るために必要な資源を調達する場が都市である。そこで発達した調達の仕組みが政府や市場であり、コミュニティもその一つ。それは資源が政府や市場では調達できないときに期待されて登場する。
その現状は、はっきり言ってぼろぼろである。コロナ禍の時にも役に立たなかった。アベノマスクはコミュニティではなく郵便を使って分配されたし、怪しい自警団に成り果てたコミュニティもある。しかし、まだ使える骨組みは残っており、何よりもこの言葉には、人々を明るく前に向かわせる力がある。だから「コミュニティの再生」なのだ・・・

続いて、関係図書の紹介が載っています。原文をお読みください。

毎日新聞企業人大学に登壇2

2025年7月28日   岡本全勝

毎日新聞企業人大学に登壇」の続報です。7月23日の毎日新聞千葉県版に、記事が載りました。写真付きです。「元復興庁事務次官・岡本全勝さん 中間管理職のあり方アドバイス 「1人で悩まないで」」。竹内支局長との対談形式だったのですが、写真や記事では講演になっています。

・・・毎日新聞企業人大学が22日、千葉市美浜区の「ホテル ザ・マンハッタン」であり、元復興庁事務次官の岡本全勝さん(70)が中間管理職のあり方などを講演した。職場の悩みやトラブルについて「1人で悩まないで」と呼びかけた。
岡本さんは、職場の悩みの大半が人間関係だとして、「誰かに話すことで気が楽になったり、他の人の知恵を借りたりできる」と助言。また難しい部下がいるときは人事課に相談し、組織として対応していく必要があるとの考えを示した。
一方、自分が平職員で精神的につらかった頃、直接の上司には弱みを見せたくなく、別の課の課長補佐と飲みに行ったことで持ち直した経験を披露した・・・

長期休み「1日2食以下」の子、3割超

2025年7月28日   岡本全勝

7月15日の朝日新聞に「休み「1日2食以下」の子、3割超 物価高でより深刻「支援を」 困窮する子育て家庭、NPO調査」が載っていました。

・・・止まらない物価高やコメの高騰が、困窮する子育て家庭を直撃している。「長期休みは給食がないので食費に余裕がなくなる」「高くてコメを1年間買っていない」。支援団体のアンケートには切実な声が寄せられ、夏休みを前に協力を呼び掛けている。

認定NPO法人「グッドネーバーズ・ジャパン」(東京都)は6月3日~11日、学校給食がなくなる長期休みの状況を尋ねるアンケートを実施。低所得のひとり親家庭の保護者2105人が回答した。
長期休み中の家計について、97・7%が「やや苦しくなる」「かなり苦しくなる」と回答。「給食がないので食費に余裕がなくなり、生活が逼迫する」「家で過ごす時間も長くて電気代も増えるし、苦しみしかない」といった声があった。
子どもの1日の食事回数は、学校給食のある期間は「2回以下」が12・9%。長期休みに入ると32・2%に増え、約4割が「経済的に余裕がなく家庭で十分な食事を用意することが難しいため」と答えた。

コメ価格の高騰を受け、67・1%が「パンや麺類などで代用する」、58・0%が「自分が食べるコメの量が減る」と回答した。
グッドネーバーズ・ジャパンでは、所得の低いひとり親家庭に食糧を配っている。代表理事の小泉智さんは「食品を取りに来る方が激増し、こちらで調達する量も増えている」と話す。

認定NPO法人「キッズドア」(東京都)も5月23日~6月2日、困窮する子育て家庭にアンケートし、2033世帯から回答があった。約半数の世帯で年間の所得が200万円未満だった。
物価高騰によって、99%が前年同時期よりも家計が厳しくなったと答え、「食費が増えた」世帯も90%に上った。前年同時期と比べて、約3割で子どもの食事の量が減り、約8割で保護者の食事の量が減ったという結果だった。
自由記述欄には、「高くて、1年間コメを買っていない」「子どもの体験、経験、学力不足を気にしている」などの回答があった。
子どもにお小遣いを毎月または時々あげている家庭は、小学生33%、中学生47%、高校生49%。「お小遣いをあげることができず友だちと付き合わない生活をするようになり、不登校になった」との声が寄せられた・・・

人事院白書、公務員のやりがい

2025年7月27日   岡本全勝

人事院の「令和6年度年次報告書」(6月6日公表)は、国家公務員が世間でどのような印象を持たれているかという意識調査をしています。「第2部 「選ばれる」公務職場を目指した魅力向上・発信戦略~働く場としての公務のブランディング~ 第1章 公務のブランディングの必要性 第3節 国家公務員に対して持たれているイメージ」

この調査は、2025年2月に、職業等を問わず6000人を対象に実施しました。他の業界と比較する形で実施し、比較する業界として、人材獲得において国家公務員と競合する可能性の高い、商社、コンサルタント・シンクタンク、金融機関、メーカー、地方公務員を設定しています。
「やりがいのある仕事ができているイメージがあるか」という設問では、国家公務員(本府省と地方機関勤務とも)も地方公務員も、他の業界に比べて、肯定的回答の割合が低いのです。白書は、「公務員全体に対して、やりがいについてポジティブなイメージを持たれていないことが分かる」と述べています。なお、この項目では、金融機関も低いようです。
「仕事を通じたスキルアップや成長の機会が多いイメージがあるか」という設問への回答においても、国家公務員も地方公務員も、他の業種に比べて肯定的回答の割合が低いです。

「第2部  第2章 公務職場の魅力の整理」には、次のような紹介もあります。
「マイナビ2026年卒大学生公務員のイメージ調査」(2025年2月17日株式会社マイナビ)によれば、国家公務員と地方公務員を含めた「公務員」になりたい理由について、公務員を就職先として考えている人では、「安定している」、「休日がしっかりとれる」という項目に次いで、「社会的貢献度が高い」、「社会・市民のために働ける」が挙がっています。
転職希望先では、「ビジネスパーソン6500人に聞いた「官公庁・自治体への転職」意識調査」(2025年1月6日エン・ジャパン『エン転職』『AMBI』『ミドルの転職』3サイト合同調査)では、「官公庁・自治体への転職に興味がある」と回答した者が興味を持つ理由の上位は、「安定した収入を得たいから」、「仕事を通じて社会貢献をしたいから」となっています。

これに対して、国家公務員採用総合職試験等に合格して2024年4月に採用された職員へのアンケートでは、国家公務員になろうとした主な理由は、「公共のために仕事ができる」、「仕事にやりがいがある」、「スケールの大きい仕事ができる」が上位となっています。総合職では、「安定している」ことではなく、やりがいが理由になっているのです。もっとも、転職希望者調査でも「仕事を通じて社会貢献をしたいから」が二番目であり、これも広い意味で「やりがい」でしょう。

では、現役官僚はどう考えているか。内閣官房内閣人事局の2023年度「国家公務員の働き方改革職員アンケート」では、「私は、現在の仕事にやりがいを感じている」という問について、「とてもそう思う」が12・5%、「どちらかと言えばそう思う」が45・5%、合わせて58%です。他方、「まったく思わない」が6・2%、「どちらかと言えばそう思わない」が12・6%で、合わせて18・8%です。「どちらとも言えない」が23・2%です。6割が満足し、2割が不満を持っています。これは、満足度が高いと考えても良いのでしょうか。
その際に、働きがいと関連している割合が高いものは、「成長を実感できている」、「国民・社会に貢献していると実感できている」です。他方で、数年以内に離職意向を有する職員についてその要因を見ると、「自分にとって満足できるキャリア形成ができる展望がない」に次いで「成長実感が得られない」が高くなっています。現役職員については、「成長実感」の有無は、働きがいと離職意向の双方に関連しています。

 

努力が報われない日本社会?

2025年7月27日   岡本全勝

7月8日の日経新聞「やさしい経済学」、米田幸弘・和光大学准教授の「「働く」意識の変化」第5回は、「努力が報われない日本社会」でした。
このような社会の変化や国民の意識の変化に、政府はどのように対応すれば良いのでしょうか。政府内に、このような問題を専門的に扱う部署は見当たりません。それも、問題です。社会の問題を政治・政府の問題と捉え、それを行政の課題とする。その意識と仕組みが必要です。

・・・経済が成長しない、賃金が上がらないといった理由から、努力が報われにくい時代になったといわれます。人々の意識はどう捉えているのでしょうか。

統計数理研究所の「日本人の国民性調査」で、1988年調査と2013年調査を比べると、「まじめに努力していれば、いつかは必ず報われる」と考える人が減り、「努力しても報われない」と考える人が17%から26%に増えています。とりわけ、「この10年で生活水準が悪くなった」と感じる人ほど、「努力しても報われない」と回答する傾向が見られました。
世界価値観調査によると、00年代に入った日本では「(成功するには)勤勉に働くことよりも、運やコネによる部分が大きい」と考える人が増えました。調査年で多少の変動はありますが、運やコネのほうが重要だと思う人の割合は、1990年代と比較して2000年代と10年代では10ポイントほど高くなっています。
努力が等しく報われなくなったというより、人によって報われなさの度合いが異なる、つまり、競争社会のフェアネス(公平性)に対する疑念が高まったといえそうです。

日本生産性本部が1969年に開始した「新入社員の意識調査」からは、若者の「野心の低下」ともいえそうな意識変化がうかがえます。
働く目的として「自分の能力を試す生き方がしたい」を挙げる人の割合は、1990年代は25〜30%で推移していましたが、2000年ごろから低下し始め、10年代後半には10%程度に下がりました。代わって上昇したのが「楽しい生活をしたい」という回答です。1990年代の回答率は20%台後半でしたが、2010年代後半には40%前後になっています。回答率は高くないものの「社会のために役立ちたい」も上昇傾向です。一方で「人並み以上に働きたいか」という質問では、10年あたりから「人並みで十分」という回答率が上昇しています。

努力が報われにくくなったと感じる若者の間で、未来を見すえたチャレンジより、「今」のやりがいや楽しさを求める現在志向が広がっているといえます・・・