4月7日の日経新聞オピニオン欄は、「国防人材どう育てる」でした。黒江哲郎・元防衛次官の発言「民間上回る処遇改善を」から。
・・・自衛隊が動かなくてはいけない緊急事態は多岐にわたる。他国から武力侵攻された際に日本を守ることや、大地震などへの災害派遣だ。自衛隊が募集対象とする18〜32歳の人口は30年後におよそ4割減る。今の応募水準が続くと現在と同じような手厚い対応は確実にできなくなる。
・・・自衛官は極めて特殊な職務内容を含む。自衛隊法では「事に臨んでは危険を顧みず」と記されている。上官の命令に背いて危険を回避してはいけないことや、状況によっては退職する自由も制限される。仕事に命をかける義務が法律で定められている。
厳しい義務を課しているのに、自衛官の自己犠牲で済ませてしまうのは国のあり方として間違っている。だからこそ処遇改善が必要だ。国民一人ひとりが、命をかけて困難な職務を行うよう自衛官に求めていることを自覚するべきだ。
石破茂政権は2024年末に自衛官の処遇改善策をまとめた。手当の拡充や隊舎の改善、再就職支援などを打ち出したことは評価できる。ただ他業種との人材獲得競争に勝つためには、民間の処遇改善のスピードや内容を上回らなければならない。
そのために国が自衛官に報いる新たな制度を設けてもいいだろう。たとえば一般的な厚生年金や国民年金に加え、年金を上乗せするのはどうか。財源は税金とすることで、国民が責任を持つべきだ。
社会からの敬意を自衛官が感じられる教育も必要だ。外国から攻められたら我々の生活すべてが脅かされる。その事態に陥ることを防ぐために自衛官が国を守っていると学校で教えてほしい。
・・・人的資源の減少を止められないのであれば、少人数でなるべく戦闘に集中できる仕組みもつくらなくてはならない。装備の無人化や、後方支援職種の民間委託を加速すべきだ。官民の役割分担のうち、民の役割を大きくしていかないと自衛隊は戦えない・・・