本と書店の生き残り戦略

11月1日の朝日新聞オピニオン欄「本と書店 生き残りは」、永江朗さんの発言から。

・・・本の出版流通は、百年ぶりの大転換期にあります。
書籍と雑誌が同じ運送便で全国の書店に届く現在の配本の仕組みは、関東大震災後に原型ができました。雑誌は、出版社にとっては販売と広告で二重に利益が出るビジネス。書店も大半は雑誌の販売で成り立ってきました。しかし人口減とデジタル化で雑誌という経済的基盤が崩れ、雑誌にうまく乗っかってきた書籍も苦境に立たされています。

現在の出版流通の仕組みは、書店が利益を出しにくいものです。新刊は1日平均200点も出るので、多くの書店が、配本を担う出版取次会社に仕入れる本の選定も頼っています。しかし取次は、規模や立地に応じて機械的に選んだ本を送るので、各店の客層に合わない本も多い。その結果、平均で雑誌40%、書籍30%ほどが返品されます。無料で返品できる委託販売制度を利用する書店が多いですが、リスクを負わない分、取り分は価格の2割ほどと少ない。日本には、紙の書籍は定価販売するという再販制度があり、戦略的な値引きもできません。
利益率の低さは書店員の生活を直撃します。大手書店でも正社員は一握り。正社員でも、生活に不安があると転職する方もいます。

今までも、書店が売りたい本を自ら選んで仕入れることや、仕入れ時に本を買い切ってその分取り分が高くなる取引もあるにはありましたが、少数派でした。ここに来てそれが広がりつつあります・・・