インフレ下での地方税財政のあり方

11月1日の日経新聞オピニオン欄に、斉藤徹弥・上級論説委員の「地方税財政にインフレの影」が載っていました。詳しくは原文を読んでいただくとして。

・・・久しぶりに政治課題に上った所得税・住民税減税は評判が芳しくなく、税を巡る課題をいくつも浮き彫りにした。その一つにインフレ下での地方税財政のあり方がある。
所得税と住民税とでは、多くの納税者にとって負担感が重いのは住民税の方だろう。住民税は一律10%で、所得税は5%の人が6割を占めるためだ。所得税も10%の納税者は2割。残りの2割が所得税の方が高い層である・・・

・・・住民税の課税最低限が所得税より低いのも減税を複雑にする。これも町内会費はできるだけ多くの人が負担すべきとの考え方からだ。町内会費は生活保護世帯も負担する。
かつて住民税の課税最低限は所得税と同水準だった。戦後税制の基礎であるシャウプ勧告で住民税は所得税と一体と考えられていたためだ。その見直しを促したのが高度成長期のインフレである。
賃金と物価が上昇すれば生活保護の基準も上がる。生活保護世帯から所得税はとらないため、所得税の課税最低限が引き上げられる。すると、所得税と一体の住民税も課税最低限が上がり、所得の伸びない市町村は住民税の納税者が減ると悲鳴をあげた。
そこで所得税の課税最低限と切り離し、所得税は納めなくても住民税は納める所得階層を設けた。インフレが国税の所得税と、地方税である住民税との税の論理の違いを明確にさせた形だ。
再び迎えたインフレの季節は、地方税財政に新たな課題を生む。物価が上昇すれば地方税収も増加基調になるが、それに伴って人口や企業といった税源の多い東京都と地方の税収格差が広がることだ。地方税収が増えても増収分は東京都に集まりかねない・・・

この主張にあるように、自治体格差の拡大に対し、どのように対策を打つのかが問われます。
税制議論を聞くのは、確かに久しぶりです。景気が拡大しないデフレ下では、議論する余地がなかったのでしょうか。