アメリカ政府の経済戦略

5月18日の日経新聞オピニオン欄、小竹洋之コメンテーターの「オブラートに包む米国第一」から。

・・・米バイデン政権が「ニュー・ワシントン・コンセンサス」と称される経済戦略の理論武装に躍起だ。安全保障の強化、成長の促進、そして温暖化の防止を目指し、政府が繰り出す産業・通商政策などのパッケージである。
サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)やイエレン財務長官が4月の講演で体系化し、国内外で話題を呼んだ。19〜21日に広島で開く主要7カ国首脳会議(G7サミット)では、バイデン大統領が要諦を説くという。

1989年の冷戦終結後に普及したワシントン・コンセンサスは、市場の機能を尊ぶ「小さな政府」の政策体系だ。米政府と国際通貨基金(IMF)・世界銀行が推奨し、経済運営の手本として長く影響力を行使してきた。
しかし産業の空洞化、地政学上の競争、気候変動、格差の拡大という4つの課題に直面し、「新たなコンセンサス」が求められているとサリバン氏は説く。国家の介入を重んじる「大きな政府」の政策体系への転換である。
市場の「見えざる手」をつかんでは持ち上げるかのごとく、政府が進路を指示してきた――。米経済学者のスティーブン・コーエン氏らは2016年の著書に、市場ではなく政府こそが米国を繁栄に導く主役だったと記した。
新コンセンサスの哲学は、その延長線上にある。同時に「米国第一」の野心をオブラートに包み、トランプ前政権より穏当な経済ナショナリズムや保護主義を正当化するための方便でもある・・・

記事には、旧ワシントンコンセンサスの10政策と、新しいワシントンコンセンサスの5分野が表になって載っています。
自由主義、市場経済主義のアメリカが、このような形で政治が経済を主導します。