官邸主導の欠点

4月27日の朝日新聞オピニオン欄、宇野重規・東大教授の「論壇時評」から。

・・・最後に問題になるのは、そのような日本の外交・安全保障戦略を日本国内でいかに構想するかである。日本にとって死活的な判断が、十分な国民的議論を欠いたまま決定されることはあってはならない。多様な選択肢を前提に、政治的に分厚い議論が不可欠である。はたしてそのような仕組みが日本に存在するのか。

不安にさせるのは、行政学者の牧原出が指摘する、官邸官僚が生み出す「無責任体制」である。本来の官邸主導とは、あくまで首相や大臣が能動的に政策革新を図るものである。ところが第2次安倍政権において現実に進んだのは、大臣不在のまま、「首相の意向」を盾とする官邸官僚が主導的役割をはたす事態であった。結局は誰も責任を取らないまま、各省庁の間に無気力が蔓延したという。日本外交の構想力が問われる現在、責任ある政治的決定のメカニズムの再建が不可欠であろう・・・