年別アーカイブ:2022年

市町村アカデミー、一流講師招聘の悩み

2022年5月18日   岡本全勝

市町村職員中央研修所(市町村アカデミー)では、研修講師に、それぞれの分野の第一人者を呼んでいます。皆さん、都合がつく限り、喜んで引き受けてくださいます。

ところで、そのような方をお呼びすると、時々難しいことが起きます。急きょ、別の催し物(国際会議など)や、国会審議に呼ばれるとかです。その分野の第一人者ですから、そのようなことも起きます。
その場合は、代わりの方を立てたり、録画収録で対応したりしています。

一流講師をお招きしていることの「危険」であり、「悩み」です。

こども食堂

2022年5月17日   岡本全勝

「こども食堂」と聞いて、皆さんはどのようなことを思い浮かべますか。貧困家庭の子どもが食事を提供してもらう場所と想像する人が多いでしょう。ところがそれだけではなく、もっとさまざまな機能を提供しています。そして、これからの行政のあり方を示しています。
湯浅誠著『つながり続けるこども食堂』(2021年、中央公論新社)を、お読みください。

確かに、貧困家庭の子どもの食事対策になっているのですが、子育てに疲れているお母さんの息抜きの場、相談する相手や話し相手がいないお母さんのつながりの場にもなっています。子どもたちも、栄養を補給するだけではなく、異年齢の子どもやお兄さんたち、おじいさんやおばあさんと遊んでいます。ほかにそのような場がないのです。おじいさんやおばあさんも、居場所を見つけています。

貧困家庭(赤信号)だけでなく、そこまではなっていないけれど困っている家庭(黄信号)を救っています。さらに問題ない家庭(青信号)にも、子どもや親の居場所を作っています。行政が業者を使って提供する食事でなく、おじいさんやおばあさんも役割を持つことで、その人たちが生きがいを見いだします。
食事というものを配っているだけでなく、つながりという目に見えない安心を配っている、その場を提供しているのです。

コロナ禍での「集まってはいけない」は、こども食堂に大きな制約を課します。食事を配るだけでは、居場所としての機能を果たすことができないのです。孤独・孤立問題に対して、何が重要かがよく分かります。詳しくは本を読んでください。
この項続く。「こども食堂の活動

個人情報の組織間共有

2022年5月17日   岡本全勝

日本都市センターの機関誌「都市とガバナンス」第37号に、寺田麻佑・国際基督教大学教養学部上級准教授執筆「異なる組織間における個人情報の取得・利用・共有―ポストコロナ時代の危機管理の課題―」が載っています。

「個人情報の取得や利用、共有は、緊急時において必要となることが多い。しかし、日本においては、組織を超えた利用に関して、各組織において個人情報保護条例や個人情報保護法の解釈が異なる結果、必要な情報が共有されずに緊急に必要な支援などがなされないという事態が発生している。
この点については、2021 年の個人情報保護法改正によって制度改正がなされたこともあり、大きく状況は変わるものと考えられるが、改正個人情報保護法の完全施行前の現在は、自治体・組織間における個人情報の共有にまだ大きな課題がみられる。ポストコロナ時代の危機管理のためにも、緊急時や災害時においては、人命が何よりも優先されることから、個人情報の緊急時における取得・利用・共有については、法改正前からも可能であったことが認識される必要がある。
本論考は、危機発生時の組織間の個人情報の取得・利用・共有について、コロナ対応のための法改正と災害法制を振り返り、通知やガイドラインによって主に共有が促進された現状には限界があることを指摘し、ポストコロナ時代の危機管理としても、緊急時・災害時における個人情報の取得・利用・共有が可能であることについて、法律に明記すべきであることを提案するものである。」

個人情報の組織間共有について、日本の法と条例の課題とともに、ドイツでの実態がまとめられています。

岡義達先生の政治学を分析する

2022年5月16日   岡本全勝

4月に出た、前田亮介編『戦後日本の学知と想像力――〈政治学を読み破った〉先に』(2022年、吉田書店)は、東京大学駒場で御厨貴ゼミに参加した若手研究者たちの論文集です。御厨先生の古稀にあわせて出版されました。

そこに、澤井勇海執筆「岡義達 行動論・象徴論から演技論へ」が収録されています。前田亮介さんの「序」には、次のように紹介されています。
・・・澤井勇海「岡義達 行動論・象徴論から演技論へ」は、その難解さと寡作ぶりがしばしば秘教的に語られてきた『政治』の作者(岡義武の歳の離れた弟でもある)の政治学の全体像を提示した、おそらくはじめての論考である・・・

私は大学3年の時に、岡先生の政治学の授業とゼミを取りました。『政治』は、最初に読んだときは歯が立ちませんでしたが、何度かくり返し読むうちに理解できるようになりました。古典から最近の新聞記事まで背景にある知識が広く、さらりと引用されているので、それらを知っていないと理解できなかったのです。それさえ分かれば、そんなに難しい文章ではありません。「思い出の本、その2。岡先生「政治」
惜しむらくは、もう何冊か書いてくだされば、もっと理解しやすかったでしょうに。

1991年生まれの澤井さんは、岡先生に直接指導を受けたことはないでしょう。御厨先生を通じてだと思いますが、どのようにして関心を持たれたのでしょうか。

低学歴国日本

2022年5月16日   岡本全勝

5月2日の日経新聞1面に教育岩盤 揺らぐ人材立国①」「「低学歴国」ニッポン 博士減 研究衰退30年」が大きく取り上げられていました。
・・・教育で人を育て国を立てる。日本の近代化と経済成長を支えた「人材立国」のモデルが揺らいでいる。成長に必要な人材の資質が変わったのに、改革を怠るうちに世界との差は開いた。教育の機能不全を招いた岩盤に迫る・・・

・・・大学教育が普及し、教育水準が高い―。そんなニッポン像は幻想で、先進国の中では「低学歴国」となりつつある。
文部科学省科学技術・学術政策研究所によると、日本は人口100万人当たりの博士号取得者数で米英独韓4カ国を大きく下回る。減少は中国も加えた6カ国中、日本だけだ・・・
・・・根っこには大学院への評価の低さがある。どの大学に合格したかが企業の採用基準になる社会では、学びは学部に入った時点で終わり。研究を志す学生だけが集う大学院の魅力が高まるはずはなかった・・・
・・・最大の課題は岩盤を砕くドリルが見えないことだ。文科省は義務教育の管理官庁の性格が強く、高等教育政策の司令塔としての存在感は薄い。多くの企業も院卒採用のノウハウがなく大胆な一歩を踏み出せずにいる。産学官が連携してビジョンを描き、実行することなしに危機は脱せない・・・