年別アーカイブ:2022年

若手官僚の悩み、講義後の質問

2022年3月15日   岡本全勝

1月から実施した内閣人事局幹部候補研修では、質問を受けることとしました。課長補佐級、係長級あわせて、22人から質問が寄せられました。

寄せられた質問は、私の話し足らなかった点への質問や、現場で実際に悩んでいる事柄です。前者は、簡単に回答しつつ、詳しくは拙著「明るい公務員講座」3部作の該当ページを読んでもらうようにしました。後者は、まさに彼ら彼女たちの仕事の上での悩みです。一生懸命取り組んでいる職員ほど、悩むのかもしれません。

このほかに、この時代特有の悩みというべきものもありました。
その中の一つは、コロナ対策で在宅勤務が増え、職員との対面が減ったことでの困りごとです。もう一つは、働き方改革です。霞が関は滅私奉公の代表的職場でした。今、仕事と生活の両立に向けて改革中です。ところが、部下たちは定時に帰るのですが、職場の仕事は相変わらず多く、課長補佐たちがそれを引き受けて「満杯」になっているのです。

質疑応答は、集合研修なら通常のことですが、オンライン講義なのでいささか勝手が違います。集合研修なら、その人の目を見つつ、こちらからも質問したりして、回答を見つけます。また、時間が限られているので、エイヤッと答えなければなりません。
今回は、電子メールで寄せられた質問に、電子メールで回答する。そしてそれを掲示板に載せて、参加者は読むことができるようにします。回答は慎重になります。
しかも、最後の週に10問も一度に出てきて、回答を作るのが重労働でした。でも、少しでも若手官僚の不安に答えることができたら、うれしいです。この項続く

アメリカ、連邦から州への交付金の使い方

2022年3月15日   岡本全勝

3月1日の日経新聞、エコノミスト誌の転載「米1.9兆ドル対策、州支出は放漫」が興味深かったです。国から地方への交付金が、どのように使われるかについてです。米国救済計画法(ARPA)です。

・・・2021年3月に成立したARPAに基づく経済対策は総額1.9兆ドル(米国の国内総生産=GDP=の9%に相当)規模に上る。前提には、州政府と連邦政府が深刻な財務難に陥っているとの判断もあった。だが実際には、同法の発効前から税収は急速に回復していた。来年度予算案の作成に取りかかっている知事や州議会議員らは、良くも悪くも独創的な方法で支給された資金を使おうとしている。
資金の一部は賢明な投資に振り向けられ、何年も恩恵が見込める。一方で、その多くは長期的にコストが発生する大規模な新インフラ建設計画や社会プログラムに投じられている。潤沢な資金を貪る知事たちは民主党・共和党を問わず、政治的な上昇機運を享受している。だが、資金はいずれ底を突く。高水準の州財政は長続きしない。

州の一般財源(その大部分が税収)はパンデミック当初こそ急減したが、現在はあふれ返っている。過去最大の財政黒字を計上する州も多い。ARPAで配分される連邦政府の資金は州・地方政府への直接支援に3500億ドル、医療インフラ、学校、交通機関への支援が3000億ドル超に及び、州政府に前例のない規模の財源を与えた。
ARPAの資金は、26年までに消化しなければ全額を失う。予算分析のアナリストの間では、その時点で歳入がパンデミック前の趨勢に回復しているとの見方が多い。ARPAは資金使途に一定のルールを定めているが、州政府は自身が適切と判断した用途に巧みに資金を配分している。

賢明な投資から見てみよう。ほとんどの州は万一の場合に備え、資金を予備費に回している。各州の予備費が歳出に占める比率の中央値は、過去30年間で最高に達した。新型コロナ禍で底を突いた失業保険基金は補充された。ただし、州政府は今後、失業保険基金に充当された連邦資金の中から800億ドル以上を支出することになっている。
これらの賢明な支出は、州政府が次の困難を乗り切る力となる。また、長期的なリターンが期待できる単発投資に資金を投じる州も多い。ほとんどの州は修理・修繕、環境汚染対策、旧式コンピューターの更新など積み残されていた投資(総額8730億ドル)を実行するためにARPAの資金を使っている。ARPAの大盤振る舞いは、パンデミックという激変期のさなかに公的医療制度や教育の強化にも役立っている・・・
・・・一方で、多くの州政府が乗り出しているインフラ投資計画は玉石混交だ。ARPAの管理に関する財務省の規定では、各州が投資できるインフラは高速インターネット、下水道、水道の3種類に限られている。各州は勢いこんで高速インターネットに資金を配分し、推定76億ドルがすでに投じられている。
だが、ワシントンに本拠を置くブルッキングス研究所のアディー・トメア氏は、こうした予算の使い道で経験のある州はほとんどないと警鐘を鳴らしている。22年は1.2兆ドル規模の「インフラ投資法」に基づく資金配分が始まるため、インフラ投資はさらに底上げされることになり、大部分が高速インターネット網への投資に向かう。
しかし実際には、州議会議員の多くは、たとえいくら悪い政策でも、「歳入補塡」の資金を使えるようになったことで肝煎りの案件を優先的に支援できるようになった・・・

三陸鉄道の震災学習列車

2022年3月15日   岡本全勝

このホームページの読者から、依頼がありました。復興支援の感謝の言葉とともに、三陸鉄道の震災学習列車を宣伝してほしいとのことです。
三陸鉄道は岩手県沿岸、すなわち東日本大震災で大きな被害を受けた地域を走っています。鉄道も寸断されたのですが、復旧しました。眺めがよいですよ。三鉄は、大震災津波の伝承や三陸地域の魅力発信に取り組んでいます。それを支援する仕組みです。クラウドファンディングによる寄付募集です。
岩手県のホームページをご覧ください。

安藤宏『「私」をつくる 近代小説の試み』

2022年3月14日   岡本全勝

安藤宏『「私」をつくる 近代小説の試み』(2015年、岩波新書)が、分かりやすかったです。宣伝には、次のように書いてあります。
「小説とは言葉で世界をつくること.その仕掛けの鍵は,「私」──.言文一致体の登場とともに生まれた日本近代小説の歴史は,作品世界に〈私〉をどうつくりだすかという,作家たちの試行錯誤の連続であった.漱石や太宰などの有名な作品を題材に,近代小説が生んだ日本語の世界を読み解く,まったく新しい小説入門」

文学評論というより、明治以降の小説を「私=書く主体と書かれる主体」を切り口にした、日本社会分析です。

第4章「「私」が「私」をつくるー回想の読み方、つくり方」72ページに、次のような文章があります。
・・・自分で自分の書いた日記を読み返し、そこに描かれている「私」の姿にとまどいや自己嫌悪を感じた経験はないだろうか。
描かれている「私」はたしかに自分であるはずなのだけれども、まるで別人のようにも感じられる。いっそ赤の他人ならよいのだろうが、一見異なる人物が実はほかならぬこの自分自身でもある、という二重感覚がわれわれをとまどわせ、羞恥や嫌悪の引き金になるのである。
いや、こうした言い方はあまり正確ではないかもしれない。たとえば写真で過去の自分の姿を見た時、われわれが感じるのは羞恥や嫌悪よりも、むしろ「こんな自分もいたのだ」というおかしみや懐かしさである。画像が外面的、形態的な客観性を保持しているのに対し、日記は言葉で書かれているために、本来外にさらされることのないはずの「内面」を露呈してしまっている。そのためにわれわれは勝手な「内面」づくりにいそしんでいた、まさにその行為にいたたまれなさを感じるのだ。
日記に登場する「私」は実にさまざまだ。友人と喧嘩したときの記述は自分に都合よく正当化されてしまっているかもしれないし、失恋したときの記述はこの世の悲劇を一身に背負ったヒーロー、あるいはヒロインになってしまっていることだろう。その時々の要請に従ってフィクショナルに仮構された「内面」が、今、読み返している「私」と同一であることを強いられるがゆえに、われわれはいわく言いがたい羞恥と嫌悪を感じてしまうのである・・・

故・竹下亘先生お別れ会

2022年3月14日   岡本全勝

今日3月14日お昼に、故・竹下亘先生のお別れ会(東京プリンスホテル)に行ってきました。岸田総理をはじめ、大勢の政治家の方が来ておられました。

竹下先生は、復興大臣を務められました。私は統括官と事務次官としてお仕えしました。
大臣就任早々にお話があり、「復興事業の中でも、地元自治体負担を求めないと、公平ではないものがあるのではないか」との、お尋ねと指示でした。私も常々考えていたことなので、直ちに案を作りました。関係者と調整して、案を持って、大臣と一緒に自治体に説明に回りました。大臣自ら乗り出していただいたので、この難しい話が進みました。「次官就任