政府における専門家と官僚の役割

7月3日の朝日新聞、片山杜秀さんへの各務滋記者のインタビュー「専門家と官僚機構に責任を」から。

各務 「科学者の議会」で思い出すのは日本学術会議です。科学技術も人文社会も網羅する魅力的なシンクタンクにみえますが、菅前政権の任命拒否問題を見ても政府がその役割を重視しているとは思えません。
片山さん 学術会議が首相所轄の形で設計されたのは、専門家が内閣に助言し、それが重要な意思決定に作用するような会議体として考えられたからでしょう。ただ政府が1959年に科学技術会議(総合科学技術・イノベーション会議の前身)を別途作った時点で、その役割はすでに形骸化していると思います。

各務 一方では有識者会議が乱立しています。
片山さん 政府がやりたい政策について、それを支持しそうな顔ぶれが選ばれてお墨付きを与えているだけ。責任の所在があいまいなのも問題です。
専門家の知見が十分生かされる仕組みを考えるとしたら、責任を持たせないとダメだと思います。科学者の提言を受け入れて政府が行った施策がうまくいかなかったら、メンバーが交代するぐらいでなくては。

各務 官僚機構も専門知を担うシンクタンクですが、国土交通省の統計不正やコロナでの接触確認アプリの不具合など、近年はほころびが目立ちます。
片山さん 政治改革で官邸・内閣官房・内閣府と頭でっかちにして、既成省庁の権限を弱めて上で決めたことだけやらせるようにもなりました。でも官邸の方が各省庁より専門知があるわけではない。コロナでの一斉休校や布マスク配布はその欠陥の表れです。むしろ疫病のような専門的な問題が生じたときは、その分野の専門知が集まる省庁の大臣に優越的な権限を与える方がいい。