年別アーカイブ:2021年

日本記者クラブ登壇「政と官」3

2021年6月14日   岡本全勝

日本記者クラブ登壇「政と官」の続きです。
記者クラブのサイト「会見レポート」に、倉重篤郎 ・毎日新聞社客員編集委員が「成熟社会の方向性提示を」を書いてくださいました。私の主張を、簡にして要を得た報告にしてくださっています。

最後に、次のような文章があります。
・・・説得力ある分析と提言だったが、官邸人事権に対する忖度問題についても老練な見立てを聞きたかった・・・

そのような論点もあるとは考えていましたが、まずは政と官問題の構図を示そうと思いました。もう一つは、報道されているような「事案」が実際はどのような形で行われているか知らないので、無責任な発言を慎んだからです。
あえて言えば、私が提示した「政治家が官僚を使いこなしていないのではないか」の事例でしょう。それは、政治家からの説明を待ちたいです。
私の今回の「問題の整理」をたたき台として、おかしな点の批判はもちろん、建設的な議論を積み重ねていただきたいです。

年長管理職の技能とは

2021年6月14日   岡本全勝

6月8日の日経新聞「一目均衡」、M&Aエディターの奥貴史による「取締役のスキル、投資家にさらせるか」が、面白く、興味深かったです。
・・・「酒とゴルフには自信があるんだけどな……」。ある上場企業の取締役が先日、寂しそうにこうつぶやいた。
この企業では最近、株主総会に向け取締役候補者の「スキルマトリックス」というものを作成した。これは各取締役がどんな能力を持っているかを一覧表にしたものだ。東京証券取引所はスキルマトリックスなどを活用して取締役の技能を投資家に分かるよう開示することを求めており、2021年内に開示できない場合はその理由を説明する必要がある。
スキルマトリックスには取締役が持つ経験や技能を「見える化」し、適正な陣容が保たれているかをチェックする効果がある・・・

この記事の冒頭にある「酒とゴルフ」は接待技術なのでしょうが、会社が開示する文書には載せにくいでしょうね(苦笑)。記事には、次のような文章があります。
・・・日本では社内から昇格した取締役の場合、漠然とした長年の論功行賞や年次バランス、社内での調整力をいかして取締役になった例も少なくないからだ。株主など市場関係者に胸を張れるスキルがある、と主張できる人はどれだけいるだろうか。
それだけではない。スキルマトリックスをつくってみたら「その企業の目指す中長期の経営方針との不一致をさらしてしまう例も散見される」・・・

頭は類推する。カタカナ語批判。3

2021年6月13日   岡本全勝

頭は類推する。カタカナ語批判。2」の続きです。カタカナ語(カタカナ英語)がなぜわかりにくいか、覚えにくいのか。

英単語を覚えるために、私たちは中学生の頃から、辞書に線を引いたり、「××の英単語」といった本を読んだり、単語カードを作ったりして覚えます。覚えるように、しばしば色を付けたり線を引いたりします。
日本語ならそんなことをしなくても覚えた単語を、英語の場合はそのような努力をしないと、覚えられません。そして、すぐに忘れます。私たちは毎日、日本語の海に浮かんでいるのですが、英語はその日本語の海のところどころにある、島のようなものです。

そして説明したように、単語は、文章の中で文脈に依存して理解しています。英単語を一つだけ日本語の文章に入れても、理解しにくいのです。「私はこんな格好良い英単語を知っているよ」という見せびらかしになっても、それを知らない人、生半可な知識しかない多くの人には、理解しにくいのです。

ここに、「見せびらかし」の連鎖が始まります。「ゲーム」や「カード」のように、日本人のほぼ全員が知ってるようなカタカナ英単語では、「見せびらかし」の意味がなくなります。多くの人が知らないカタカナ英語でないと、その人たちには格好良くないのです。ハイカラ、舶来品嗜好です。こうして、多くのカタカナ英語が消費され、消えていきます。
MDGs、SDGsのほかに、CSR、CSV、ESG・・・近年流行した企業関係の言葉です。あなたは、どれだけ説明できますか。CX、DX、SX、UXも。では、FX、XL、MX、OX、PX、TX、VXは。

画像認識でも単語認識でも、脳は類推しています。意識しないうちに、連想しています。
ところで、NHK番組「チコちゃんに叱られる」で、唯我独尊ゲームがあります。ある言葉から連想される単語を次々とつなげていく連想ゲームに対して、この唯我独尊ゲームではその反対で「連想しない言葉」をつなげていくというものです。
ご覧になった方はわかると思いますが、なんと難しいことか。私たちの脳は、私たちの意思に関わりなく、連想を続けるのです。それを止めるのに、力が必要になります。

ちなみに、FXは外国為替証拠金取引または次期戦闘機、XLは服などでLより大きい規格、MXは東京メトロポリタンテレビジョン、OXは牛、PXはアメリカ軍の軍隊内売店、TXはつくばエクスプレス、VXは毒ガスの一種です。

労働者の再教育の重要性

2021年6月13日   岡本全勝

6月6日の日経新聞1面「チャートは語る」は、「学び直し 世界が競う、出遅れる日本 所得格差が壁」でした。
・・・新型コロナウイルスの感染収束後の経済成長に向け、欧米主要国が人材の「学び直し(リスキリング)」を競っている。デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速するなか、スキルの向上は生産性のカギを握り国際競争力を左右する。出遅れる日本は公的支援の改善が課題だ。
学び直しと生産性は一定の相関関係がある。経済協力開発機構(OECD)のデータをみると、仕事に関する再教育へ参加する人の割合が高い国ほど時間あたり労働生産性が高い・・・

時間当たり労働生産性と、仕事関連の再教育への参加率の国際比較が、図になって載っています。ノルウェー、デンマーク、スウェーデンでは再教育の参加率が50%を越え、時間当たり労働生産性は80ドルを超えています。日本は、再教育の参加率は35%、時間当たり労働生産性は40ドルあまりで下位にいます。

私のような事務職の経験からも、職場で必要とされる技能が変わってきていることがわかります。パソコンも、電子メールも、ワードプロセッサも、図表作成も、就職してから身につけました。情報セキュリティも。そして、どんどん進化しています。職場で、研修を受け、見よう見まねで覚え、できないところは、職員たちに助けてもらっています。
もちろん、行政官として知らなければならない「社会の変化」も激しいです(これについては拙著「明るい公務員講座 仕事の達人編」94ページで書きました)。大学で学んだことでは、役に立たず、追いつけません。
かつての日本企業は、社員を抱え、教育訓練して、新しい生産工場へ配置転換する。それが強みだと言われました。どうなったんでしょう。

7か国財務相会合、対面会議で困難案件に合意

2021年6月12日   岡本全勝

6月9日の読売新聞に「課税合意「サプライズ」法人税最低15% G7財務相、対面で結束」が載っていました。
・・・ロンドンで開催された先進7か国(G7)財務相会合は5日、世界共通の法人税の最低税率や米IT大手などを対象とする「デジタル課税」の導入に向けて具体的な水準で一致した。対面形式の復活やG7の結束を示したい思惑が重なり、「サプライズ」の合意を生んだ。
「歴史的なことでしょうな。つくづくそう思います」。麻生財務相は8日の記者会見で満足そうに振り返った。
G7会合前、米国が法人税の最低税率を「15%以上」と明記することを強く求めたのに対して、議長国の英国は慎重な姿勢を示していた。日本政府内では当初、共同声明に具体的な数字を盛り込むのは難しいとの見方が大勢だった・・・

・・・雰囲気を一変させたのは、約2年ぶりとなる「対面」の会議形式だった。オンライン会合は事務方が仕切った段取りに沿って行われるケースが多く、政治家同士の微妙な駆け引きには向かない。7か国の財務相は今回、顔と顔をつきあわせて個別会談や非公式の意見交換を重ね、急速に相互理解を深める。麻生財務相はG7が結束を示すことの重要性を説いて回った。
「デジタル課税の具体策を明記できれば、英国は『最低税率15%以上』を受け入れるかもしれない」。会議前にあった漠然とした期待が、時間を経るにつれ確かなものに変わっていく。
会合の終盤。英国のスナク財務相が「利害対立はあるが、我々に大事なのはメッセージを出すことだ」と呼びかけると、室内に大きな拍手がわいた・・・

・・・世界では法人税の引き下げ競争が40年近く続き、米調査機関タックス・ファンデーションによると、1980年に40・11%だった世界の平均税率は2020年に23・85%に下がった。税制は工場やオフィスなど物理的拠点を根拠に課税しており、国境を越えてネットビジネスを手がける巨大IT企業に適切に課税できていない。国際的な最低税率の設定とデジタル課税のルール作りは、こうした問題を是正する狙いがある。
ただ、国際的な合意への道のりは険しい。法人税率を低く抑えるなど税制優遇で海外企業を誘致してきた国々が反発している。財務省内では「G7の合意は一里塚」との声がある・・・

「国会」がない国際社会では、合意を得るのが難しいです。この動きが進むことを期待します。日本のマスメディアは、このような国際行政についての報道が少ないですが、もっと伝えてほしいです。
リーマン・ショック後の麻生内閣の国際貢献(IMFへの1千億ドルの拠出)について、官邸の記者会見ではまったく反応がありませんでした。記者クラブにいる政治部記者が、ことの重要性を理解してくれませんでした。担当した浅川・総理秘書官(現アジア銀行総裁)と、がっかりしたことを思い出します。