年別アーカイブ:2021年

ゲーム依存で壊れる生活、家族

2021年8月14日   岡本全勝

8月5日から読売新聞くらし面で「依存社会 ゲーム」の連載を始めました。子どもがインターネットゲームにのめり込み、親が悩むだけでなく、暴力をふるわれる実態が報告されています。

・・・「なんで回線切んねん!」
中部地方の高校に通う聡さん=仮名=が、血相を変えて2階から下りて来た。2019年9月。1日15時間もゲーム漬けの日が半年も続いていた。たまりかねた母の美雪さん(48)=仮名=がネットの回線契約を解除したのだ。
聡さんは台所から包丁を取り出した。「刺される」。しかし、聡さんは刃先を自分の首元に突きつけ、声を震わせた。「ゲームがないと、俺、死ぬ」。何かにとりつかれたような苦しそうな息子の表情に、美雪さんは胸をつかれた。「ゲームをやめないのは、ただ楽しいからではないのでは」・・・
・・・ 筑波大教授(臨床心理学)の原田隆之さんによると、依存症は脳の病気だ。依存物の摂取や行動の反復により脳の機能が変化しコントロールが利かなくなった状態をいう。「意志や心がけで対処できるほど、依存症は生やさしいものではない」と指摘する。
旭山病院(札幌市)精神科医長の中山秀紀さんは「依存症は、快楽と不快が同時進行する」と話す。快楽を求めてゲームをするが、様々な要因から依存症になると今度はゲームをしないと不快になる。不快を解消するためにまたゲームをする。「人は快楽の消失は諦められても、不快を我慢し続けることは難しい」・・・

インターネットなし、スマートフォンなしの生活は考えられません。自己管理のできない、自己管理を勉強中の子どもには、スマホは便利であるとともに、危険な道具です。
どのように与え、教育するか。多くの親が悩んでいることでしょう。学校の先生も、悩んでいることと思います。まだ、これだという教育方針はないのでしょう。技術の進歩は、さまざまな悩みを生みます。

異なる価値観を統合する場

2021年8月13日   岡本全勝

8月5日の朝日新聞オピニオン欄「夫婦別姓、国会か司法か」が、国民の間の異なる価値観を、どのように統合するかです。予算査定のように「足して二で割ることができない」ことも多いです。どれか一つに決めなければならない場合もあります。

・・・夫婦の姓を同じにしなければ結婚できない今の制度について、最高裁大法廷は2015年に続いて再び、憲法に違反しないと判断した。決定は「制度のあり方を考えるのは国会だ」としてボールを国会側に投げた。決めるのは国会か、それとも司法か。ボールはどこにあるのか・・・

価値観の違い、どうあるべきかの判断は、それぞれの利害得失をあげることはできますが、それを秤にかけることはできません。そして、理論では決まりません。
ここで問われているのは、その決定を国会がするのか、裁判所がするのかということです。国民の代表であり、唯一の立法機関である国会が、国内の異論の決着をつける場所です。国会が決めない、それが憲法に違反するなら、裁判所の出番でしょう。アメリカでは、しばしば最高裁が判断を下すことがあるようです。

子どもの臓器移植の家族同意について、2009年法改正を総理秘書官として官邸から見ていました。行政府の長として総理はどのような立場に置かれるかを考えていたのです。自民党も党議拘束をかけず、議員個人の判断に任せたと記憶しています。「生命倫理をどう議論するか

朝日新聞「ふるさと納税見直しを」

2021年8月13日   岡本全勝

8月13日の朝日新聞社説は「ふるさと納税「官製通販」見直しを」でした。

・・・ふるさと納税は、寄付額の多寡にかかわらず、自己負担は実質2千円だ。高所得者ほど返礼品を多く受け取れるうえ、税の優遇も大きい。コロナ禍による格差の是正が政策課題になるなか、不平等な仕組みをこれ以上放置することは許されない。
総務省によると、寄付額の45%が返礼品の購入費や、返礼品を選ぶ民間のポータルサイトへの手数料などに費やされている。昨年度の寄付額から換算すると、全体で約3千億円の税収が失われることになる・・・
・・・ふるさと納税の当初の趣旨は、寄付を通じて故郷に貢献してもらうことだった。しかし現状では「官製通信販売」になってしまっている。NTTグループの昨年の調査では、「出身地への貢献」のために制度を利用した人は12%しかいなかった・・・

冷戦長期化は有益

2021年8月12日   岡本全勝

8月5日の日経新聞経済教室経、経済安全保障の論点、國分俊史・多摩大学教授の「冷戦長期化は有益の視点を」から。

・・・米中冷戦は30年以上続くと聞くと、多くの企業人はけげんな表情を浮かべる。しかし冷戦が長期化する方が、日本および世界にとって有益という考え方に人々は気付いていない。冷戦が実際の戦争(熱戦)にならない状態こそが平和な状況という理解に乏しいのだ。
急激に力の均衡が崩れる方が、戦争リスクは高まる。新しい現実への準備が紛争当事国のみならず、周辺国にもできていない状態で勢力均衡が大きく崩れると、新秩序が台頭するまでに混乱が生じる。これを機に現状変更を仕掛けようとする勢力の動きも活発になる。

冷戦を引き起こさない努力と、起きてしまってからの努力では、力の投じ方が全く違う。米中冷戦が起きないことを願ってきた人々は、起きてしまった状態に早く蓋をして、沈静化したいという思いに駆られて早期決着を望みがちだ。だがそれこそが緊張を急激に高めて最悪の結果を招く・・・

子どもや若者にとっての居場所の重要性2

2021年8月12日   岡本全勝

子どもや若者にとっての居場所の重要性」の続きです。「「孤立」が子どもや若者を苦しめる。だから私たちは「居場所」をつくる 下」(7月13日掲載)から。

・・・私たちが2011年に「たまり場」を作ったのは、(1)学校や社会の「階層格差によって作られたトラック」で競争に耐えられなくなった子どもたちが一時的にでも避難や休息ができ、他者からの視線に耐える力を育てること、(2)異なる価値観をもつ人が集う場で人間の連帯を体験し、社会で協働の機会を得る「場」を創設することが、多様な価値観が交錯する社会で生きていく上で必要だと考えたからである。
(3)居場所に多様な若者たちが集まり、交流することで受容し合える力を若者たちに育てなければならないとも考えた。さらに、(4)外国人の若者が日本の同世代の若者と最初に交流できる場にもなっていた。様々な目的で日本にやってきて、不安の中で暮らす外国人の若者たちが日本語の習得や仲間づくりに利用できる場になっていた・・・

・・・さいたまユースが運営する居場所は、学校や家族の中で孤立し、仕事や学校で躓いた若者たちが利用している。中には精神疾患や障がいで悩んでいる若者も少なくない。
「学校は勉強ができるか、運動がうまい人のためにある」と話した「ルーム」に通う若者がいたが、この言葉を否定する説得力のある言葉を私たちはもっていない。
また「ぼくはみんなと違う。同じようには生きられない……」。この言葉も今の若者を象徴する言葉だ。多くの学校も職場も「みんな同じでなければならない」という同調圧力の中にある。日本の若者たちは日々、この空気の中でプレッシャーを受けながら生きている。
「たまり場」や「ルーム」は、支援する側・される側に拘わらず、日本社会で生きにくさを抱えた人々の社会的居場所となっている。利用者の多くは、生活保護や障がい者支援制度の枠から外れた若者がほとんどだ。「たまり場」と「ルーム」はそんな若者たちが生きがいや社会での役割を見つけ、生きる意欲を探す場所として機能してきた。

若者たちに居場所が求められる背景に、学校での競争がさらに低年齢化し、緊張と不安の中で子ども世界の歪みが大きくなっていること、そして子ども世界のいじめも社会的にも大きな話題になり、教員たちが懸命に対応しても一向に収束する気配はないことがある。
「競争教育」の深刻化と貧困と格差の拡大が進み、子どもや若者たちの社会(他者)に対する信頼感が失われていく中で起きている現象なのである。教育の市場化が進行し、勝者のない、しかも社会的弱者が切り捨てられる状況を目の当たりにしながら、子どもや若者たちの中に社会への信頼や他者への信頼など生まれるはずがないのである。努力しても報われないとあきらめの中で若者たちは社会への関心を失っていく。しかし、人間は他者の存在なくして生きてはいけないこともまた事実であり、そのはざまで若者たちは居場所を求め続ける・・・
連載「公共を創る」で孤立問題を取り上げているので、現実を知ってもらうために、紹介します。