年別アーカイブ:2021年

連載「公共を創る」第95回

2021年10月8日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第95回「「政府が家庭に入る」─公私二元論の変容」が、発行されました。

今号の前半は、行政が公私二元論に縛られていたことを、災害対策行政を例に説明します。
国や自治体の役割が公共施設復旧に絞られ、個人や企業の施設復旧、生活や営業の再開はそれぞれの責任とされたのです。また、避難所や仮設住宅での生活支援の水準が「最低限」のままで、通常の生活水準に達していないことも挙げることができます。

後半は、弱者支援の過程で、政府が家庭に入るようになったことを説明します。
「政府は家庭に入らない」という近代憲法の原則は、いくつも変更を受けました。生活保護、介護保険などです。個人の資産や能力を調べ、住まいの中に入ってきます。これらは、本人の同意の下に行われます。他方で、引きこもり支援はどう考え、どのようにしたらよいのでしょうか、家族は助けを求めていますが、本人は求めていないことが多いでしょう。
児童虐待や家庭内暴力の場合は、本人たちが介入を求めていなくても、被害者を救うために家庭に入ることが必要です。
社会的に自立できない人を支援する場合も、問題があります。「嫌だ」と言っている人に対し、「首に縄をつけて」社会に引き出すことはできません。生きていく力をつけることも、本人の意欲がないと、政府などが強制することはできません。

基礎研究が実を結ぶまで

2021年10月8日   岡本全勝

日経新聞私の履歴書、10月は、吉野彰さんです。リチウムイオン電池の発明者として、2019年にノーベル化学賞を受賞されました。

第1回の「創造と挑戦」に、次のような話が出ています。基礎研究が実を結ぶまでには、多くの困難があるとして、3つの難関を挙げておられます。
・研究の大半は芽が出ず、すぐに振り落とされる。「悪魔の川」
・ここを泳ぎ切って基礎技術ができても、商品化にいたるまでに多くの課題を解決しなければならず、大半が脱落する。「死の谷」
・ここを乗り越え、商品化に成功しても、市場が拓けるまでに長い年月がかかる。「ダーウィンの海」

組織の目標と業務管理

2021年10月7日   岡本全勝

10月2日の日経新聞に「パナソニック、長期視点の経営に転換 利益率目標示さず」が載っていました。
・・・同日記者会見した楠見雄規社長は「(利益などの)結果数値で管理しない」方針を示した。利益や時価総額が競合に比べ見劣るなか、新たに事業ごとに競争力向上につながる指標を設定し、長期的な視点で復活につなげる。
楠見氏は会見で「事業戦略の推進のアプローチを変える」と、津賀一宏前社長の経営路線を転換する姿勢を鮮明にした。

パナソニックは2012~21年まで社長を務めた津賀氏の下、売上高営業利益率5%を経営目標に据えてきた。楠見氏はそれが「事業部には足切りラインのように受け止められた」と振り返る。
事業部では目標達成に向けて無理な受注や投資の先送りなどを繰り返し帳尻合わせの数字を作るようになった。結果として大胆な投資などを打ち出した海外勢に比べて競争力を失い、「過去30年間、パナソニックは成長していない」停滞につながっているとの分析だ。
そこで売上高や営業利益など結果として表れる財務指標だけで管理するのをやめ、事業ごとに競争力の向上につながる指標まで落とし込んで管理するように変える・・・

詳しくは、原文を読んでいただくとして。
難しいですね。組織の長は、内外に組織の目標を示す必要があります。部下はその実現を目指して仕事をします。ところが、下部組織に数値目標を割り当てると、記事にあるように、帳尻あわせになることがあります。これでは、本来の目標が忘れられ、手段が目標になってしまいます。他方で、数値でない目標は、物差しにならず、評価もできません。
では、どのように下部組織に目標を割り当て、事後評価をするか。企業は売り上げや利益が数字で出ます。その点で、売り上げがない役所は難しいです。もっとも、企業でも、開発部門や本社管理部門は同じような問題を抱えています。

改善を提案すると仕事が増える、組織文化

2021年10月6日   岡本全勝

10月2日の日経新聞「三菱電機 工場あって会社なし 品質不正で調査報告書」から。
・・・三菱電機の品質不正問題を受け、調査委員会が1日公表した報告書は、従業員が会社全体よりも「工場や製作所の利益」を優先する体質が背景にあると指摘した。経営陣の現場に関与する姿勢が弱く、本社に不信感を持つ現場との情報共有も乏しかった。それが長期にわたる不正の放置につながった。企業風土や緩い統治体制を根本から立て直せるかが問われている・・・

・・・ある従業員は調査委員会の聞き取りに対し、不正検査の問題を報告しても「『それでは、あなたたちで改善してね』と言われるだけ」と回答。「改善を提案すると、言い出した者がとりまとめになり、業務量を調整してもらえず、単純に仕事が増える」との声もあった。「是正が現場に丸投げ」されるため、現場は本社への不信感を募らせた。本社と現場の間で断絶が起き、不正が長期間見過ごされてきた。
鉄道向けの空調装置や空気圧縮機で検査不正が発覚した長崎製作所(長崎県時津町)。不正について「相当数の従業員が認識していた」が、それを正そうとする機運は出てこなかった。ある従業員は「国内顧客は細かいことを言わないで任せてくれる」と打ち明けた。現場は「下手に突っ込むと生産が成り立たなくなる」と自分たちの論理を優先した・・・
・・・現場で問題を認識しても、情報は本社に共有されなかった。内部通報制度もあったが「匿名と言いながら、通報者をあぶり出すのではないか」と現場は疑心暗鬼になった・・・

詳しくは、記事をお読みください。記事には「役員は関与していなかった」と書かれていますが、それは免罪符にはなりません。部下が法令違反をしていながら、それを知らなかったのですから。中間管理職は板挟みになって、悩んだでしょうね。
このような事態は、どの職場でも起きる可能性があります。多くの組織で「細かい実務は部下に任せる」上司が良い上司と思われてきました。仕事がうまく回り、部下もやりがいを持って仕事をしていれば、これはよいことです。
ところが、部下が困っているのに上司が知らない組織は、悪い組織です。上司が、管理職の仕事をしていないのです。また、部下が声を上げられないのは、そのような職場にしている上司の責任です。

私の心配は、役所がそのような状態になっていないかです。新しい政策を考える場合は、上司も一緒になって進めますから、この心配はありません。問題は、過去から引き継いでいる「定例業務」「日常業務」です。調査統計などが当たります。このような業務は、過去から引き継いでいる、職員が前任者か引き継いでやっている、そして上級職でなく中級職や初級職がやっていたことから、課長がしっかり把握していないことが予想されます。まさに「関与していない」のです。
担当職員は、「前任者もやってきたことだから」と前例通りに処理します。また、それが期待されます。ところが、そのような事務が次々と積み重なって、大変な労力を割いています。
見直しをしようとしても、そのために仕事が増えるのです。また、新しい政策をつくると評価されますが、業務の簡素化はさほど評価されません。それでは、簡素化に取り組む意欲はわきません。

苦笑・正直な人

2021年10月6日   岡本全勝

最近経験した、笑い出しそうになった話を、少し改変してお伝えします。また関連して、思い出した場面も載せておきます。
二人の人が、挨拶をしています。
場面1
Aさん いつもお美しいですね。
Bさん はい。あなたは正直な人ですね。

場面2
Cさん お急ぎでしょうか。
Dさん はい、急いでいます。

場面3
Eさん 私は仕事が遅くて・・。
Fさん そうですね。あなたは仕事は遅いし、内容も悪いし。

場面4
Gさん いつもお世話になっております。
Hさん はい、いつも世話をさせてもらっています。