年別アーカイブ:2021年

変えなければ変わらない

2021年4月5日   岡本全勝

「東日本大震災は日本を変えたか」という問いがあります。私は、拙著「復興が日本を変える」(2016年)の「はじめに」で、次のように述べました。
・・・「東日本大震災が大きな被害をもたらしたのに、日本社会は変わっていない」という人もいます。しかし、私は、この言い方について、次の2つの面から疑問があります。
まず、大災害が起きたら、社会は変わるものでしょうか。確かに、大震災は日本社会に大きな衝撃を与えました。大津波はたくさんの街並みを飲み込み、多くの人命を奪いました。原子力発電所の事故は、原発の安全神話を吹き飛ばすとともに、科学技術への信頼も揺るがしました。自然の脅威や科学技術への信頼について、国民の意識を変えたことは、間違いありません。しかし、社会に大きな衝撃を与え、国民の意識を変えたとしても、それだけでは社会は変わりません。無常観や不信感が広がるだけです。その衝撃をきっかけに、国民が行動を起こし仕組みを変えなければ、日本社会は変わりません。
第2次世界大戦の敗戦は、日本社会を大きく変えました。それは、戦後改革が行われ、民主化や自由化が進んだからです。阪神・淡路大震災で、ボランティア活動が社会に認識されました。それは、多くの若者が支援活動に駆けつけたからです。社会が変わるには、私たち日本人が変えようとしなければならないのです。
次に、東日本大震災によって、日本社会は実際に変わったのかどうか。私は、日本社会は変わったし、変わりつつあると考えています。その中で、私たちには今、何をどのように変えようとしているのかが、問われているのです。「大災害が起きたら社会は変わる」というだけでは、何がどう変わるかがわかりません・・・

3月27日の読売新聞夕刊「東日本大震災10年 変わらぬ日本 考える人作り」では次のように書かれています。
・・・東日本大震災から10年を機に、多くの報道があふれた。批評家の東浩紀さんに、この10年の日本を振り返り、課題を挙げてもらった。
「震災で日本は変わるのかなと思っていた。脱原発社会やライフスタイルの変化などが盛んに吹聴され、デモも行われるようになった。だが、ほとんど何の結果も出せず、社会は何も変わらなかった」・・・

3月29日の朝日新聞社説「若者の力と社会課題 大震災後の潮流を育みたい」は、次のように述べています。
・・・その東日本大震災は、もう一つ、いまに連なる変化が顕著になった節目でもある。日々の生活で抱える様々な問題は、災害など非常時に深刻さを増す。課題に直面する人たちへの支援を行政任せにせず、自らかかわりたい。そんな思いを持ち、実際に動く人が目立ち始めた。
特に注目されるのが、若い世代の意識と行動だ・・・

差別につながる文書の売買規制

2021年4月5日   岡本全勝

4月3日の朝日新聞に「ハンセン病資料?ネット出品 明治期患者の個人情報、回収手段なく」が載っていました。
・・・明治時代に長野県内のハンセン病患者の情報をまとめたとみられる資料が2月、インターネットのオークションサイトに出品された。患者の住所や氏名が書かれていたとみられ、新たな差別につながる恐れがあった。資料は最終的に支援団体が買い取ったが、法的に回収する手段はなく、県は対応に苦慮した・・・

・・・「ヤフオク!」に出品された資料は「癩病患者並血統家系調」と題された台帳のような書類。敬和学園大(新潟県)の藤野豊教授(日本近現代史)からの連絡で出品を把握した長野県が確認したところ、表紙には「明治三十二年」「大町警察署」「永年保存」とあった。患者名、住所、生年月日などの個人情報が閲覧できる状態だった・・・
・・・資料が他者の手に渡れば、患者の子孫の人権を侵害する恐れもあった。だが、県にも県警にも関連する記録や資料はなく、強制的に回収できる法的根拠もない。県は古書店に無償提供を頼んだが断られ、「外部に出さないようお願いするしかなかった」という・・・

法律で規制し、場合によっては国が買い取る制度を、つくるべきだと思います。

新年度、期待と不安

2021年4月4日   岡本全勝

4月になって、新年度が始まりました。
職場の異動があった人、新しく社会人になった人は、大きな夢と少々の不安とで仕事を始めているでしょう。異動がなかった人も、上司との期首面談や、今年度に処理する仕事の計画を立てて、決意を新たにしていることでしょう。その意識を忘れず、頑張ってください。
週、月、年度という区切りは、仕事を進める上で重要です。区切りがないと、仕事の計画は立ちません。区切りがないと、毎日がのんべんだらりと進んでしまいます。終わったときに、「何をしたんだっけ」と反省することになります。

新入生、職場を異動した人、今年は成果を上げようと思っている人に、参考書を紹介します。拙著「明るい公務員講座」の3冊です。新入生には「明るい公務員講座」、中堅職員には「明るい公務員講座 仕事の達人編」、管理職または管理職を目指している人には「明るい公務員講座 管理職のオキテ」です。
多くの人が悩むことについて、わかりやすく解説しました。高尚なことは書いてありません。普通の職員が悩み、普通にやればできることです。読んでみて、なるほどと思ったらあなたも実践してください。知っていることばかりなら、安心してください。

仕事を、山登りに例えてみましょう。初めて山に登るときに迷わない方法は、地図を見ることと、経験者に案内してもらうことです。この3冊は、その地図になります。経験者については、先輩を見つけて相談しましょう。
悩んでいる同僚や後輩、応援したい職員がいたら、あなたの持っている本を貸してあげるか、教えてあげてください(拙著の宣伝です)。

学童保育

2021年4月4日   岡本全勝

3月29日の日経新聞夕刊に「存在感高まる学童保育 指導員の待遇などに課題」が載っていました。

・・・主に小学1~3年の児童を預かる放課後児童クラブ(学童保育、以下学童)の存在感が高まっています。厚生労働省によると2020年の登録児童数は約131万人と10年前から6割増。小3では4人に1人が利用しています。共働き家庭が増えニーズが増す一方、現場の人手不足など課題も抱えています。
新型コロナウイルスの感染拡大で、20年は学童にとっても激動の一年となりました。3月に全国で学校が一斉休校になると、厚労省は学童に対して「原則開所」を要請しました。親が家にいられない児童の居場所確保が狙いで、ほぼすべての学童が応じました。通常、学童は午後から開所しますが、厚労省の調べでは、午前中から開所した自治体も全体の7割に達しました・・・

学童保育は、いまや、なくてはならない機能です。保育園が必須になったと同じように、学校が早く終わる小学校低学年では、保育園や学校を補完する機能なのです。その割には知られておらず、また従業員(指導員)の処遇も悪いようです。

連載「公共を創る」第76回

2021年4月3日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第76回「社会の課題の変化―再チャレンジ政策で考える行政のあり方」が、発行されました。

前回に続き、再チャレンジ政策があぶり出した弱者を生み出す日本社会の特性とともに、再チャレンジ政策が働き掛ける対象である社会意識や慣行を説明しました。
そして、ニートとフリーター対策として行った、働く意欲や自信に欠けている若者を応援し、職業的自立を促すための仕組みである「地域若者サポートステーション」を例に、人への働きかけの難しさを説明しました。

困っている人の自立支援は、これまでの行政の主流だった、産業振興、公共インフラ整備、公共サービス拡充とは、手法が大きく異なります。それを表にして整理しました。この表はわかりやすいと、自賛しています。

今回は、掲載紙『地方行政』の2ページ目に載るという「出世」でした。いつもは、後ろの方に載るのですが。