年別アーカイブ:2021年

ドイツの社会的能力

2021年4月15日   岡本全勝

先日紹介した、高松平蔵著「ドイツの学校にはなぜ『部活』がないのか」に、「社会的能力」の説明があります(156ページ)。
子ども向けスポーツの広告に、運動能力と並んで、社会的能力が促進されることが書かれています。では、社会的能力とは何か。商工会議所が掲げる説明が紹介されています。

1 自己認識と外部認識
自分で自分のことをどう捉えているか。他人は自分をどう見ているかを認識する能力
2 コミュニケーションスキル
まざまな人と関係をつくっていく能力です。
3 異なる視点から見る能力と共感する能力
これも、他者と仕事をしていくために、相手を理解するために必要な能力です。
4 摩擦、批判の能力
仕事がうまく行かないとき、批判されることも批判することもあります。その摩擦、ストレスに耐える能力です。
5 チームワーク
上に述べた1~4の能力は、これに収斂されます。

著者は、日本企業がしばしば求める「体育会系」との違いを指摘します。特に4は、先輩の指示を聞くだけの人物ではダメだということです。
なぜ、商工会議所の解説が取り上げられているか。ドイツでは、日本と異なり、教育と職業がかなり密接です。そして、どの会社に属するかでなく、どのような職業かが重要です。大学に進学しない場合は、職業学校への就学が義務づけられています。職業教育を終えると、試験が行われ、商工会議所が職業資格を発行します。職業人に求められる資格が、定義づけられているのです。

医師も病床数も多く患者も少ないのに、逼迫するコロナ医療

2021年4月15日   岡本全勝

4月11日の読売新聞、辻哲夫・元厚労事務次官の「コロナで見えた予兆 増える高齢者 病床再編が必要」から。
・・・新型コロナの大流行は、くしくも日本の医療提供体制の弱点を浮き彫りにしたのではないか。よく分析して、医療の総合政策を見直す必要があります。
コロナ禍では、病院がコロナ患者を受け入れきれず、入院待機者が膨れ上がった。その余波でがんなど本来の患者の入院診療も手いっぱいになる事態も招きました。
弱点の一つは、病院で医師や看護師が「薄い配置」になっている実態です。
日本の場合、人口あたりの医師や看護師の数は欧米とほぼ同水準である一方、病床数が過剰となっています。そうした中で、集中管理が必要なコロナ患者が数多く入院し、医療が逼迫したわけです。

もう一つは、医療提供体制が民間の中小病院に多く依存し、連携体制も不十分なので、機動的に動けなかったことです。民間病院は公的な病院と違って、行政の指導が及びにくく、病院間の連携もうまくいかないのです。こうした日本の医療が構造的に持つ弱点を改善し、よりメリハリをつけた医療提供体制にしていくべきです。
今回、もう一点気になったのが、開業医を中心とする「かかりつけ医」の役割がよく見えなかったことです・・・

11年目の東日本大震災復興活動への支援。募集中

2021年4月14日   岡本全勝

サントリー(株)が、「東北サンさんプロジェクト みらいチャレンジプログラム」を始めました。応募者を募集しています。日本フィランソロピー協会などとの共催です。
東日本大震災被災3県を対象に、地域の再興を目指して新たな活動を 立ち上げようという個人や団体の活動を支援します。1件あたり100万円を上限とし、給付総額3,000万円です。締め切りは、5月10日です。

たくさんの企業や団体が、被災地支援に協力してくださいました。10年が経って、津波被災地では復興が見えてきて、域外からの支援も終了しつつあります。サントリーは、このような形で、支援を続けてくださいます。ありがとうございます。

被災地の復興、地域の活性化に取り組んでいる非営利団体も多いです。財政的に苦しい団体もあるでしょう。ぜひ応募してください。関係者に、このような支援があることを、宣伝してください。

日本自治学会、休止

2021年4月14日   岡本全勝

日本自治学会が、5月15日に最後の総会を開き、活動を休止するそうです。

・・・地方分権一括法が2000年に施行されたのに合わせて、さらなる改革を進めてゆくために幅広く英知を結集しようと学会を立ち上げてから、すでに20年が過ぎました。
一括法が築いた分権改革のベース・キャンプから、地方自治を真にそれにふさわしい実質を備えたものに育て鍛え上げていくことをめざし、行政法、行政学、財政学など学界の研究者、さらにはジャーナリストたちを中核に全国各地で活動してきました。
分権改革は、現下の通常国会に第11次の一括法が提出されるなど、いまも続いてはいます。しかし、その内実は乏しく、足踏み状態にも見えます。この時点で学会を閉じることには忸怩たる思いもございますが、20年をひとつの節目として、いったん幕を引き、新たな展開を模索することといたします・・・

この文章の最後の段落に、分権改革の現状が表されています。2000年の第一次分権改革を経験した一人として、考えるものがあります。
大きな社会の改革を進め実現するには、理論ともに、社会の指導層や国民を巻き込む仕掛けや、社会の雰囲気が必要です。
自治体学会は、活動中です。

ドイツの学校にはなぜ「部活」がないのか

2021年4月13日   岡本全勝

高松平蔵著「ドイツの学校にはなぜ『部活』がないのかー非体育会系スポーツが生み出す文化、コミュニティ、そして豊かな時間 」(2020年、晃洋書房)が、勉強になりました。
欧米のスポーツクラブが、地域の人たちによって支えられ、社交の場であることは有名です。この本はドイツの町を例に、スポーツクラブが地域の人たちに支えられ、地域の人たちの自慢であることを紹介しています。
学校のクラブ活動がないことは、分かりやすい象徴です。それは広い社会的背景に支えられているので、そこだけを切り取って輸入するわけにはいきません。

明治以来の学校体育、そして競技体育が、日本にスポーツを輸入し、根づかせました。プロスポーツも、広がりました。これもまた、発展途上国に効率的な、体育や競技の普及方法だったのです。しかし、それは学校内に閉じたスポーツでした。地域の人が参加するスポーツとは違います。クラブハウスが、あちらでは地域の人が集まる社交場なのに対し、日本のゴルフハウスは同好の士だけの、場合によっては接待の場です。

プロサッカー(Jリーグ)が、地域に根ざした競技団体を目指しています。イギリスやドイツのように、100年かけて地域の団体(NPO)を作ってきた社会とは、背景が違います。
住民が参加する地域の非営利団体(NPO)は、日本が輸入しなかった、また輸入できない活動かもしれません。連載「公共を創る」で、地域での住民のつながり、居場所作りを考えているので、勉強になりました。
この項続く