11月8日の日経新聞に「東芝の不正会計が時効 刑事責任問えず」が載っていました。
・・・2015年に発覚した東芝の不正会計問題が、刑事事件として公訴時効を迎えたことが関係者への取材で分かった。現在も続く経営混乱の発端となったが、当時の経営陣らの刑事責任は問われずに終結した。問題を調査した当局関係者からは「膿(うみ)を出し切れなかった」と悔やむ声も上がる・・・
詳しくは記事を読んでいただくとして、次のような指摘があります。
・・・当時の東芝の社内調査や監視委の調査などでは、東芝が会社ぐるみで見かけ上の利益をかさ上げしていた実態などが次々に明らかになった。不正は幅広い事業分野に及んでいたが、監視委は特にパソコン事業に注目。同事業では「バイセル」と呼ばれる取引を使い、利益を実態よりも多くみせかける手法が使われていた。バイセルとは、パソコンの製造委託先に、東芝が購入した(buy)部品を有償で販売する(sell)仕組みを使い、利益をコントロールする手法だった。
行政処分が先行した。15年末、監視委の勧告を受けて、金融庁が東芝に金融商品取引法違反(有価証券報告書などの虚偽記載)で約73億円の課徴金納付命令を出した。会計監査を担当した新日本監査法人にも3カ月の新規業務の停止を命じ、監査法人へは初となる約21億円の課徴金も命じた。
その後、焦点は刑事事件として立件できるかに移った。監視委は西田厚聡(故人)、佐々木則夫、田中久雄の歴代3社長らを任意聴取し、東京地検特捜部に刑事告発できるか検討した。
ところが監視委の調べでは、経営トップから「チャレンジ」などと呼ばれる過度な収益改善の圧力があったものの、利益水増しなどの具体的な手法はほとんど現場で発案、実行されたとみられることが判明した。経営陣は、不正の全容を把握すらしていなかった。
具体策も示さず現場に無理なプレッシャーをかけ続けた経営陣の振る舞いは無責任にみえた。だがこの構図が逆に刑事事件化を困難にした。有報の虚偽記載で個人の刑事責任を問うには、投資家の判断を誤らせるようなうその記載を、故意に行ったことなどが要件になるためだ・・・
旧日本軍でも指摘された、日本の組織に内在する責任者が責任を果たしていない状況が、違った観点から浮き彫りになっています。