イスラエルによるシリア原子炉爆撃

ヤーコブ・カッツ 著『シリア原子炉を破壊せよ─イスラエル極秘作戦の内幕』(2020年、並木書房)を読みました。2007年に行われた、イスラエル空軍による、シリアの原子炉空爆です。どのようにして秘密裏に敵国に侵入し、空爆に成功したのか。興味があって、買ってありました。
読んでみたら、もっと深い内容のものでした。戦記物ではなく、複雑な政治意思決定過程を書いた本です。

シリアが原爆作成につながる原発を建設していることを、諜報機関がつかみます。その衝撃。その情報をさらに確認します。
2007年9月6日深夜、8機のイスラエル軍機がシリア国内を超低空で侵犯し、砂漠の奥深くで秘密に建設されている原子炉を破壊し、無事帰還します。この事実だけでも、興味深いのですが、この本は、それについては大きな紙面を使いません。その決断にいたるイスラエル政府内での苦悩、同盟国アメリカとの関係、その他関係各国との関係に、記述は費やされます。

イスラエルは、この成果を公表しません。シリアも、事実を公表しません。公表すると、原発を作っていたという国際法違反がばれるからです。イスラエルは、シリアのこの反応に賭けるのです。そして、成功します。
イスラエルが1981年にイラク原発を破壊した際には、その成果を誇り、当時の首相は政治的危機を脱します。しかし今回は、国内政治で苦境に陥っているオルメルト首相は、この成果で支持を挽回できるのに、国家の利益を優先します。
この項続く