企業による表現の自主規制

5月12日の日経新聞オピニオン欄、ファイナンシャルタイムズのジョン・ソーンヒルさんの「SNS無規制が招く危険 表現の自由、企業に任せるな」から。

・・・米フェイスブックの監督委員会が同社SNS(交流サイト)からトランプ前大統領を「追放」した会社側の対応を支持したことについて、トランプ氏の支持者は恥ずべきことだと語る。トランプ氏反対派の多くは、同氏が選挙後に首都ワシントンの暴動をあおったことに対する適切な処罰だと言う。
だが、それ以上に大きく重要な問題は、フェイスブックが構築し、委員を任命し、運営資金を出している監督委員会が果たして、そうした判断を下すのに適した団体なのかどうかだ。表現の自由の境界線を引くために、フェイスブックの「最高裁判所」と呼ばれる疑似公的機関の創設が民間企業に委ねられたのは、一体なぜなのか・・・
・・・かつて、認知科学者のジョージ・レイコフ博士はかつて、問題を特定の枠組みにはめることで都合よく政治・社会的な課題の結論を導き出せると説明したことがある。「どういう枠組みを設定するかによって問題が定義され、問題をどこまで話せるかも決まる」と同氏は述べている。
独自の監督委員会を創設することで、フェイスブックは表現の自由という問題の枠組みを巧妙に規定した。そうすることで、自社の業務慣行とビジネスモデルを暗に是認し、原因ではなく結果を重視する仕組みにしたのだ。だが、監督委自体が先日論じたように、これはフェイスブックが責任を回避できるということではない・・・

・・・これだけの質問をみても、フェイスブックが今、社会システム全体にとって重要な情報機関となったことが分かる。かつてラジオとテレビが規制されてきたように、現代におけるコミュニケーションインフラとして、厳しい監視の目を向ける必要があると考える根拠にもなる。
フェイスブックを擁護すると、監督委は確かに、以前と比べるとさらなる透明性とアカウンタビリティー(説明責任)を提供している。
フェイスブックのグローバル問題を担当するニック・クレッグ副社長は先日、本紙フィナンシャル・タイムズのイベント「グローバル・ボードルーム」に参加し、合意に基づく規制がないせいでフェイスブックは自ら空白を埋めるしか手がないと言った。また、監督委を立ち上げるために1億3000万ドル(約140億円)の予算を割り振ったと述べた。
さらに、クレッグ氏は監督委が設立からまだ日が浅いことを認め、フェイスブックとともに絶えず進化を遂げ、外部のパートナーをさらに呼び込んでいくと語った・・・

・・・だが、国連や市民社会が業界全体に対して監視体制を築こうとしている可能性を奪いつつあるとも危惧している。「(監督委は)興味深い仕組みで革新的だが、他の重要な体制づくりの可能性を潰してしまっている」とケイ氏は言う。
フェイスブックほどの巨大なSNSを運営・管理することは気が遠くなるような難題だ。フェイスブックの監督委や3万5000人のコンテンツモデレーター(管理人)、さらには最も優秀なアルゴリズムを駆使しても力が及ばないのは明白だ・・・
・・・オンライン上での表現の自由をめぐる問題には、単純な答えは存在しない。だが、より複雑な答えを探す試みは不毛だというわけではない。ただ、表現の自由というすべての人にかかわる問題について、フェイスブックという一企業が自社に有利になるように枠組みを規定することは許してはいけない・・・

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