年別アーカイブ:2020年

少子化対策 失われた30年

2020年8月17日   岡本全勝

8月16日の日経新聞風見鶏、山内菜穂子・政治部次長の「少子化対策 失われた30年」から。
・・・少子化が止まらない。1人の女性が一生に生む子どもの平均数を示す2019年の合計特殊出生率は1.36と4年連続で低下、12年ぶりの低水準となった。出生数は予想より早く90万人を割り込み「86万ショック」という言葉もうまれた・・・

・・・日本の少子化対策の起点は30年前に遡る。1990年、前年の出生率が調査開始以来最低となる「1.57ショック」が起きた。その後、バブル経済が崩壊。政府は経済や高齢化問題に注力し、大胆な少子化対策を出せないまま時間が過ぎた。
「この30年は一体、何だったのか」。自民党が6月に設置した少子化問題のプロジェクトチームで厳しい意見が相次いだ・・・

・・・孤独な子育て、子育てと仕事の両立の難しさ、不安定な雇用―。コロナ禍で露呈した不安は、政府のこれまでの少子化対策の根本的な弱点と重なる。
少子化は、政治が子育て世代やこれから家族をつくる若い世代の不安を解消できなかった結果でもある。危機に左右されることなく、失われた30年を見つめ直す作業こそが「86万ショック」からの第一歩となる・・・

復興地域の町内会活動

2020年8月17日   岡本全勝

先日、いわき市の津波被災地域を視察してきました。いわき市は、60キロメートルもの海岸線を持っています。いわき市の沿岸部も、たくさんの集落が津波に飲まれました。それぞれの地域で、防潮堤をかさ上げし、防災緑地を造り、土地区画整理事業や高台移転を組み合わせて、新しい町を作りました。工事はほぼすべて終わっていて、公営住宅や新しい住宅が建っています。「概要
ただし、土地区画整理事業などに時間がかかり、その間に別の場所に新しい家を建てた方もおられます。それで、計画しただけの宅地が埋まりません。新しい住民を呼び込むこともしています。

今日紹介するのは、豊間地区の「ふるさと豊間復興協議会」です。ホームページをご覧ください。地域コミュニティの復興を目指し、地域の住民たちがつくりました。
中央集会所では、いろいろな催し物が開催されています。毎週土曜日曜は、子育て中の家族に開放しています。遠くからも、幼児を連れてお母さん(お父さんもかな)が来られるようです。ママ友の口コミで広がっているようです。
また、新住民呼び込みと助言もしています。この地区で、40軒の新規移住があったそうです。市の中心部は地価が高騰し、子育て中の若い家庭にとっては、この地区は魅力的なのだそうです。
私が訪問した日には、役員さんたちが出てきてくださって、説明や質問に答えてくださいました。役員さんは高齢者でした。平日ですから、仕事のある人は出てこられませんわね。「若い人たちは子育てで忙しく、町内会活動に参加してくれない」ことが悩みだそうです。でも、いずれ参加してくださるでしょう。

この地区には、津波災害を後世に伝えるための施設ができました。「いわき震災伝承みらい館」です。
良い海水浴場(今年は開設せず)で、近くには塩屋埼灯台もあります。この灯台は、映画「喜びも悲しみも幾年月」のモデルであり、美空ひばりさんの「みだれ髪」に出てくる「塩屋の岬」です。ご関心ある方は、お運びください。

チケットレス、乗車券は必要

2020年8月16日   岡本全勝

JR東日本が、チケットレスサービスを宣伝していました。チケットって、乗車券・切符のことですよね。ということは、切符を買わなくても乗れる=無料ということでしょうか。インターネットで調べたら、次のように書かれています。

・・・スマートフォン・携帯電話の「チケットレス申込メニュー」から申込めば、駅で指定席特急券を受取ることなく、そのままご乗車いただけます。
スマートフォン・携帯電話の「えきねっと」のサイトにアクセスし、「チケットレス申込」メニューからお申込みください。申込完了後、購入完了メールが届きます。「購入完了メール」および購入完了の画面メモをご利用の端末に保存し、ご持参のうえ、ご乗車ください。
乗車券はSuica・モバイルSuicaなどをご利用ください。・・・
紙の切符を買わなくてもよい、ということのようです。紙でなくても、乗車券は買うのですよね。それを、「チケットレス」というのかなあ・・。外国人に通じるかな。

JRも、カタカナ語氾濫の犯人の一人です。そもそも、「JR、ジェイアール」という略称が通用していますが、これって日本語表記では使いにくいです。縦書きの文章の中に入れてみてください。小説家は苦労しているでしょうね。俳句の場合は、どうするのでしょうか。据わりが悪いです。「カタカナ語乱造者

広井良典教授。昭和、平成、令和。私たちの生き方

2020年8月16日   岡本全勝

8月9日の読売新聞、広井良典・京大こころの未来研究センター教授の「持続可能な社会に移れるか「地方分散」分岐点は5年後」から。
・・・成長から成熟へ、経済効率一辺倒から環境や福祉にも配慮した社会へ――。約20年前、「定常型社会」という言葉で、いち早く社会の変革の必要性を指摘したのが広井良典・京大こころの未来研究センター教授だ。最近はAI(人工知能)を活用した研究で、「都市集中型」ではなく「地方分散型」の重要性を提唱し、注目を集めている。東京一極集中の是正と地方分散型への転換は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、7月に出された政府の「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針2020)でも実現が必要とされたテーマだ。人口減少、貧困・格差の拡大、膨らむ財政赤字、環境破壊など、持続可能性に黄信号が灯ともっているように見える日本。その針路や岐路について広井教授に聞いた・・・

・・・時代認識の話から始めたいのですが、昭和は「集団で1本の道を登る時代」だったと思います。人口も経済も拡大を続け、経済成長という明確な目標に向かって、みんなが一本道を登っていた。それはそれでうまくいきました。
平成は「先送りの時代」です。平成半ば過ぎから人口が減り、経済も低成長となったのに、引き続き一本道を登ろうとした。経済も大事だが環境や福祉に配慮した成熟社会に舵かじを切るべきだったのに、そうはなりませんでした。昭和の成功体験が強烈だったからです。
令和はどうか。持続可能で豊かな成熟社会に移れるかどうかの分岐点が今です。「24時間頑張れ」と言われて競って山を登り、山頂に立ったら視界は360度開け、道は無数にあることがわかった。今後は各人が多様な形で個性や創造性を発揮する時代といえます。

ここでお断りしておきたいのは、私は拡大・成長を否定しているわけではないことです。ただ、ひたすら量的拡大を目指し、成長を目的化するような経済のあり方には疑問を感じます。
経済成長さえすれば財政赤字があっても大丈夫、との声も聞きますが、人口が減り、地球資源の有限性が顕在化する中で、ノルマ主義的な拡大路線は各人の首を絞めるだけです。競争で無理をした企業は倒産や不祥事を起こし、働いている人は過労死やうつ病を患う。仕事と子育ての両立もままならない。結果的に少子化が進み、人口が減り、成長に必要な需要が縮小して、経済にも悪影響が出る。「経世済民」といわれるように、経済には国を治め、人民を救うという相互扶助的な意味があることを忘れてはならないと思います。
もう一つお断りしておきたいのは、拡大・成長から成熟・定常へと言うと、何か進歩の止まった退屈な社会と思われがちですが、そうではないということです・・・
・・・今度こそ、令和が始まった今こそ、成熟社会の実現に向けたデザインを描かなければと思います・・・
原文をお読みください。

イギリス労働者階級の昨今

2020年8月15日   岡本全勝

書評に取り上げられていたので、ブレイディみかこ著『ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち』(2020年、筑摩書房)を読みました。
著者は、『子どもたちの階級闘争』『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で有名です。イギリスで働き、結婚し、子育てをしつつ、その体験から、イギリスの労働者階級や貧困層の生活実態を書いておられます。

この本は、月刊誌に連載された文章を、まとめたものです。ブレイディさんが暮らしている町での出来事、特にパブから生まれた交流を通じて、地域のおじさんたちの生態が描かれています。それが副題の「ハマータウンのおっさんたち」です。
ポール・ウイリス著『ハマータウンの野郎ども』(原著は1977年)で取り上げられた労働者階級の若者たちが、年を取って初老の「おっさん」になっています。彼らの楽しく、また悲しい生活です。ブレイディさんの軽快な筆で、笑って泣いて読めます。

出てくる人たちが、結婚、離婚、同棲を繰り返します。親の違う子どもたちの面倒を見ます。失業も。そのたくましさ、優しさに、引きつけられます。
また、イギリス特有のパブが、地域のコミュニティを支えていることがよくわかります。もっとも、近年はそのパブも、閉店が相次いでいるようです。イギリスの庶民の暮らしの一面を見せてくれます。

日本の庶民の暮らしを、このような視点から捉えた書籍はありませんかね。あまりに当たり前すぎて、本にならないのでしょうか。しかし、テレビドラマなどで取り上げられるような東京の若手の勤め人でない、地方都市での普通のおじさんとおばさんの暮らしを報告して欲しいです。
連載「公共を創る」で書いているように、この半世紀で日本の庶民の暮らしは大きく変わりました。そしていま、頼るべき「人生のお手本」、歳の取り方や近所付き合いの見本がなくなっているのです。落語に出てくる横町のご隠居、長屋の熊さん八さんの世界がいまや理解しがたくなったように、昭和の暮らしは遠くなったのです。そしてさらに変わりつつあります。