大震災、9年目の教訓

3月5日の日経新聞オピニオン欄は「震災復興 9年目の教訓」でした。

大山健太郎・仙台経済同友会代表幹事の発言から
・・・仙台市は人が集まっているのでよいが、それ以外は産業構造が急速に縮んでいく。企業は10年先をみる。東北の生産年齢人口は2030年に秋田県は21%減、青森県は19%減、福島県は17%減。山形県と岩手県は15%減だ。10年後に東北の市場は間違いなく2割減る。人がいなければビジネスは成り立たない・・・
・・・政府はなりわい支援でグループ補助金を出したが、水産加工は5割しか戻らない。なりわい支援の目標は元に戻すことで、それでは商圏を奪われた分は戻らないからだ・・・

・・・福島県の沿岸部は避難指示が徐々に解除されているが、人は戻らず、農地が放っておかれている。復興庁に言っているのは、ここで土地を集め大規模農業ができる制度をつくること。作ったものはアイリスが全部買い取る。そうした福島モデルをつくり、成功したらほかに展開していけばよい。ほかにできないことが今の福島にはできる。ピンチをチャンスに変えるときだ・・・

御厨貴・東大先端研客員教授の発言から
・・・驚いたのは、市町村が作る復興計画がどれも人口増加が前提の成長プランだったことだ。首長に「そんなに大きな街をつくっても人は戻らないのでは」と話したら「縮小プランなんて作ったら次の選挙で落ちる」と怒られた。
あとで聞くと「プラン通りにはならないから大丈夫だ」と言っていたが、結局、復興住宅はどんどん作られた。あれは地元負担を求めなかったのがまずかった。ある程度、地域が痛みを感じてやらないと、どうせ作るなら大きい方がよいとなってしまう・・・

・・・復興庁は残ることになったが、今後はこうするという選択肢、モデルを示して、地元に選んでくださいと言えるような組織にする必要がある。ここは仕方ないというところも出てくるだろう。縮小モデルの未来像まで検討する官庁にしなければならない・・・
・・・この堂々巡りを断つには、人口減少を踏まえた日本列島全体のグランドビジョンをあらかじめ作っておく必要がある。自然災害が恒常的に来るとすれば国として平時から復興のあり方を考えるべきだ。それを常に考えているのと、全く考えていないのとでは、いざという時に違う。これは政治家が先導すべきだ・・・