年別アーカイブ:2019年

中間団体の重要性

2019年5月15日   岡本全勝

5月9日の日経新聞「令和新時代」、猪木武徳・大阪大学名誉教授の「新技術 道徳と調和を」から。

・・・平成が始まった年は東西冷戦が終わった年でもあった。世界の体制変化と日本の経済力の相対的な低下が同時に進んだ。なかでも、中国の台頭は大きなファクターだ・・・

・・・中間組織に弱さ
経済でも、昭和は大企業が安定的に支配していたが、平成には野望を持つ新興企業が参入し市場を揺さぶった。一方で、国と個人の間にある中間組織が弱くなった。労働組合の組織率は低下、経営者団体もかつてのような発言力がない。民主的な精神が徹底したが、補完する装置は弱まった。
民主制を安定的に機能させるには、個人と国家が直接対峙するだけでなく、非営利法人(NPO)も含めた中間的な組織が大切だ。個人は弱いので団結して共同の利益を主張することも必要だ・・・

中間団体は、公共を考える際にも、重要な要素です。

敗戦が生んだ憲法、日本、ドイツ、イタリア

2019年5月14日   岡本全勝

5月2日の朝日新聞「憲法を考える」は、「敗戦が生んだ条文はいま 日本・ドイツ・イタリア、根幹の理念に」として、第2次大戦に敗れ新しい政治体制をつくった3カ国の憲法を比較しています。

・・・第2次世界大戦に敗れ、新しい体制のもとで国際社会への復帰を果たした日本、ドイツ、イタリアの憲法には、それぞれの歴史を背負った特徴的な条文がある。象徴天皇制と戦争放棄、人間の尊厳、社会権。それらは戦後の国づくりや外交の中で根幹的な理念となった・・・

・・・日本と同じように全体主義的な国家体制で敗戦を迎えたドイツとイタリアは戦後、どんな条項を新憲法の根幹としたのか。
「戦後憲法を作った人々」など日独伊の憲法制定過程に関する著書がある石田憲・千葉大教授は、ドイツでは人間の尊厳、イタリアでは社会的連帯に基礎をおく社会権だと説明する。
ドイツではナチスが、対抗する政治勢力や異なる思想信条の持ち主を徹底的に弾圧し、ユダヤ人虐殺へと進んでいった。その反省から、憲法にあたる基本法の1条は「人間の尊厳は不可侵である」と規定。ドイツ国民は「世界のすべての人間共同体」の基礎としての人権を信奉するとうたった。石田教授によると、ドイツ憲法で「人権」が詳細かつ網羅的に示されたのは初めてだった・・・

東京電力廃炉資料館、紹介動画

2019年5月13日   岡本全勝

東京電力がつくった廃炉資料館。このホームページでも、紹介しました。
インターネットで、施設紹介動画を見ることができるようになりました。パンフレットも。施設では、どのような内容を見ることができるか、よくわかります。

展示資料や情報をすべて、インターネットで見ることができればよいのですが、著作権などの関係もあり、それはできないようです。

公務員の定年、恩給。欧米比較

2019年5月13日   岡本全勝

5月10日の日経新聞夕刊「公務員定年、欧米は撤廃・延長」から。

・・・欧米の国家公務員制度をみると、日本以上に定年を延長したり、定年そのものを撤廃したりする例が目立つ。ドイツとフランスはそもそも日本より高い65歳定年だった。公的年金の支給開始年齢の引き上げにあわせ、両国とも定年をさらに延長する予定だ。ドイツは12年から段階的に上げ始め、31年に67歳にする。フランスも16年から上げ始め、22年に67歳にする。
英語圏の国家公務員では定年そのものの廃止も多い。米国は1967年に成立した年齢差別禁止法で、雇用の場での年齢による差別を禁じた。カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどでも定年は廃止済みだ。英国は年金の支給開始年齢を2046年までにいまの65歳から68歳に引き上げる予定でそれにあわせて定年制を10年に廃止した・・

・・・定年がない国でも公務員の多くは日本の定年年齢の60歳前後で引退するという。年金や恩給の給付水準が高いためだ。稲継裕昭早大教授に聞くと「年金水準が高い米国などでは日本のように働かなくても生活に困らないため自発的に引退する職員が多い」と話す。
「公務員人事改革」(村松岐夫京都大名誉教授編著、学陽書房)によると、退職直前の最終所得と比べた年金・恩給支給額は局長級の場合、米英は日本の2倍以上だ。日本では年金支給額は最終所得の30%(年529万円)だが、米国は71.5%(同1209万円)で英国は62.1%(同1142万円)に上る。
定年制があるドイツでも恩給額は67.5%(同1150万円)。フランスは金額は日本と同程度の年528万円だが、最終所得比は59.1%と日本の倍近い・・・

わかりやすい表もついています。
へえ、こんなにも違ったのですね。もちろん、他国との比較だけでなく、国内の民間との比較も必要です。

「給料は安くても、官僚は国家のために働くのだ」という矜持と、「社会からも一定の尊敬を受けている」という意識が、これまでの官僚を支えてきました。
他方で、公務員への批判は、昔からありました。そして、20世紀の終わりから公務員バッシングも激しくなり、社会からの評価も低下しました。
大学の同級生たちが、民間企業で活躍し、はるかに高額の給料をもらっているのを見ると、転職しようという気持ちも出るでしょう。また、大学生たちも、公務員より企業を選ぶこともあるでしょう。

公務員バッシングのみならず「××バッシング」は、ポピュリズムの一つでしょう。
他者をうらやむこと、足を引っ張ることは、古今東西どこにもでもあります。しかし、時代と国によって、その広がりが違います。バブル崩壊後の日本において、その傾向が強まったのでしょう。
しかし、バッシングだけでは問題は解決せず、社会の機能は低下すると思います。

未完の成熟国家、平成日本

2019年5月12日   岡本全勝

4月30日の日経新聞社説は、「未完の成熟国家だった平成の日本 」でした。

・・・昭和は悲惨な戦争と戦後の高度成長の記憶とともに歴史に刻まれた。焼け野原から世界も驚く復興を成し遂げ、昭和の終わりには製造業の技術力と価格競争力で米国を脅かす状況すら生まれた。
1989年(平成元年)末の日経平均株価の終値は、史上最高値の3万8915円。バブル経済の熱気が社会のひずみを際立たせもしたが、近代日本の一つの到達点だったといえる。
日本は経済成長の先にどういう国家目標を定めるかが問われた。平成の出典となった「内平らかに外成る」「地平らかに天成る」の言葉には、日本と世界の平和と繁栄への思いが込められていた。
しかし90年代に日本が直面したのは、バブル崩壊の後遺症といえる金融機関の不良債権問題や長期デフレ、冷戦後の国際政治の激動という現実だった・・・

・・・グローバル化の進展に伴って日本は産業構造を変え、成熟国家として社会の形を見直す必要に迫られた。しかし政府も企業も過去の成功体験を引きずり、痛みを伴う改革を先送りした。国際的な地位低下と財政の悪化に、有効な手を打つことができなかった。
政治家も努力はした。有権者が政策本位で政権選択をしやすいよう、衆院選に小選挙区制を導入した。首相官邸の機能強化や中央省庁の再編も実現した。それでも低成長時代を見据えた有効な手立てを講じてきたとは言いがたい。
平成の時代に直面した最大の試練は、人口減社会の到来だろう。少子高齢化で人口が急減する恐れは早くから指摘されていた。しかし若年層の雇用や所得水準はむしろ悪化し、出産や育児、教育への支援策も後手に回った・・・

・・・政治や経済の行き詰まりが目立った半面、平成は日本にとって文化面では実り豊かな時代だったと振り返ることができる・・・
・・・日本は経済規模で中国に抜かれた。その差はさらに開くだろう。欧米ではポピュリズムと自国中心的な流れも目立ち始めている。日本は先進民主国家として、法の支配や自由貿易、最先端の科学と文化を通じ、世界で存在感を高めていく戦略と努力が重要だ。
平成が終わり、令和の時代が始まる。我々は多くの課題を抱えながらも、いま平和と繁栄を享受している。難しい問題を一つ一つ解決し、明るい未来を次の世代にひらいていく責任がある・・・