新聞記者が語る金融危機の現場体験

朝日新聞夕刊連載「平成とは」に、原真人・編集委員が「金融危機」を書いておられます。1997年の金融危機の話です。
経験のない事態に、金融関係者も記者たちもとまどう様子が、ありありと書かれています。1月22日の「絶対書かないで」。

また、24日の「「ご解約ですか」に寒け」は、別の面から興味深いです。公的資金投入に反対だった社論を、方向転換する。「空気の支配」と「責任ある対応」を、考えさせられる場面です。朝日新聞編集局という知性の集団にあってもです。
・・・事ここに至って事態の深刻さがのみ込めた。「このままでは日本経済は恐慌状態になる」
何をどう報じるか。危機を抱えて年が明け、経済部長やデスク、論説委員、一線の記者らが集まって議論した。政府が検討していた銀行救済への税金投入をどう考えるかが最大のテーマだった。
金融機関への公的資金の投入は不人気政策だ。6850億円を投入した2年前の「住専問題」が尾を引き、新聞各紙はどこも銀行救済に厳しい論調だった。朝日新聞の論説委員室も、反対論を掲げた社説を何本も書いていた。
取り付けを実際に見ていた私は「今は税金をつぎ込んででもパニックを止めないと」と主張した。だが論説委員たちは納得しない。らちが明かないとみた経済部長が私に言った。「それなら君が、私はこう考えるという解説記事を自分で書けばいい」
数日後「公的資金投入は『投資』」という署名記事が載った・・・