復興の3要素、その3

復興の3要素、その2」の続きです。
復興に携わって、これらの施策をどのように整理するのがよいか、どのように説明すると皆さんに分かってもらえるかを、職員と考えました。そして作ったのが、この表です。この3分類は、復興庁の施策体系でも採用しています。

「1インフラ・住宅の再建」がモノの復旧であり、お金と工事技術があればできるのに対し、あとの2つは、様相が違いました。それを、どのように表現したらよいかを、考えたのです。
施設設備が復旧しても、それだけでは、産業やなりわいが復旧したことにならないのです。小売りやサービスが再開されないと、また働く場所が戻らないと、復旧したことになりません。これまで政府も自治体も長年にわたり地域振興施策を続けてきました。しかし、施設設備への補助金だけでは成功しなかったのは、それが理由です。モノでなく機能が再建されなければなりません。そして、継続、持続する必要があるのです。その点で、施設設備は「容易」です。お金と技術があれば作ることができます。
コミュニティの再建は、もっと難しいです。モノでも機能でもなく、住民のつながりであり、それが持続しなければなりません。補助金でできるものではありません。産業なりわいの「機能」の再建は、お金や技術で支援することができますが、住民のつながり維持は、お金と技術では限界があります。

要約すると、次の通りです。
インフラ再建は、モノの復旧であり、お金でできました。そして、公共施設は国や自治体のものでした。技術も経験もありました。
産業・なりわいの再生は、機能の再生であり、主体は事業主でした。これまでは、事業主に任せていました。施設設備への補助金だけでは、機能は復旧しませんでした。
コミュニティの再建は、つながりの再建であり、主体は住民でした。これまでは、住民任せでした。再建支援は、手探りで行いました。

歴史的には、つい最近まで、私有財産の災害復旧には、公費を投入しませんでした。個人の住宅再建に公費を出す「生活再建支援金」の法律ができたのは、2008年です。産業・なりわいの再生とコミュニティの再建に国が乗り出したのは、東日本大震災からです。それは「まちのにぎわいの復興に必要な3要素」図の右端に書いておきました。

このように図にすると、個別の施策の位置づけが明確になります。目的、主体、手法なども、明確です。この表で、各施策を管理すると、何ができていて、何が不足しているかも分かります。
なかなか良くできた整理だと、自負しています。大学での公共政策論の講義でも、これを活用しています。もちろん、わかりやすくするために大胆な分類にしてありますから、すべてをきれいに整理できるわけではありません。
私はこのように、簡単な表にするのが好きです。というか、それも幹部の役割でしょう。例えば、麻生内閣でも、主な政策体系を図にしました。