アメリカ政治とメディアの分極

山脇岳志・朝日新聞編集委員の「アメリカ政治とメディアの分極化ー鶏が先か、卵が先か?」から。詳しくは、原文をお読みください。

・・・1994年には民主党支持者と共和党支持者はかなりの部分で重なっているが、2017年には重なる部分が大幅に減少し、中心付近ではなく両極に位置する人々の割合が大きく増加している。両党の中央値も大きく離れている。ラクダにたとえれば、2004年調査までは「ひとこぶラクダ」だったのが、2017年には「ふたこぶラクダ」化していることがチャートから見て取れる・・・

・・・共和党支持者と民主党支持者の間の価値観が離れていくにつれ、対立政党に対する反感、否定的な感情のレベルが上昇している。下図からわかるように、2017年には、民主党支持者の81%が共和党に対し否定的であり、44%が非常に否定的である。同様に、共和党支持者も81%が民主党に対し否定的で、45%が非常に否定的である。対立政党に対し非常に否定的な意見をもつ人の割合は、共和党・民主党ともに1994年の2倍以上に膨れ上がっている。さらに、共和党支持者と民主党支持者の友人ネットワークのほとんどは、自党の支持者に偏っている。トランプ氏については、大統領に選ばれるずっと前から共和党支持者と民主党支持者の間に深い分断があるが、2017年の調査によると、トランプ大統領の職務能力に対する支持率の党派間格差は、過去60年間のどの大統領の支持率格差よりも大きい・・・

・・・メディアの分極化が国民の分極化を招いたのか、それとも、国民の分極化に応え、そのニーズを満たす形でメディアが分極化したのかについては、研究者の間でもさまざまな議論がある・・・
・・・この問題を研究してきたペンシルバニア大学准教授のマシュー・レバンドスキ氏(政治学)は、影響は限定的だとしつつ、メディアの分極化が国民を分極化させている一因だと指摘する。「人々は自分がもともと持っている考え方を強化するようなメディアを選択する。共和党支持者はFOX、リベラルな層はMSNBCを視聴する傾向にある」。番組によって、主に影響を受けるのはすでに極端な考えをもつ人々であり、「研究から示唆されるのは、イデオロギー分布の中心をシフトさせるのではなく、両極に位置する人々をもっと中心から引き離すことによって分極化の原因となる」としている・・・