年別アーカイブ:2017年

慶應義塾大学、公共政策論第14回目

2017年7月19日   岡本全勝

今日は、慶応大学法学部、公共政策論第14回、最後の授業でした。官僚の役割を実例を基にお話しした後、おさらいをしました。
一つは、私が考える公共政策論についてです。何を(社会の課題)、誰が(主体)、どのように解決するか(手法)について、従来の公共政策論より視野を広げました。社会のリスクは時代とともに広がっていること(かつては個人の責任だったものが、社会のリスクになっていること)、主体は、政治と行政だけでなく、企業や非営利団体も重要な主体であること。すると、規制・誘導・提供などの手法だけに限らないこと、などです。
もう一つは、実務家教員として経験を踏まえた、社会の見方や考え方です。これは、毎回の授業で折に触れて、お話ししていたことです。

その後、アンケートに答えてもらいました。この授業で何を学んだかと、私の授業についての評価です。慶應大学の学生は、紳士淑女ですね。多くの学生が、A4用紙にびっしりと書き込んでくれました。
「学んだこと」については、私が教えたかったことを、焦点の違いはありますが、それぞれに適確に書いてくれました。「新聞を読むようになりました」という記述も多かったです。
「授業への評価」も、高い評価をもらいました。「本に書いてないことを教えてもらった」「実体験の雑談が勉強になりました」「配ってもらう資料やレジュメがわかりやすかったです」とです。
毎回、学生に意見や質問を書いてもらい、次回の授業で主なものに答えるようにしました。これは、評判がよかったです。「前回授業の質問への回答がうれしかった」「ほかの学生が何に興味を持っているかが分かりました」「ほかの学生が、私とは違う考えだと分かりました」とか。

批判もありました。「話がどんどん広がるので、理解するのが難しかったです」「板書が汚くて読めませんでした」など。
多くの学生に喜んでもらえたことが、一部の学生には不満だったこともあります。「教科書を読んでいることを前提に授業をするので、わかりにくかったです」「前回授業への回答が長すぎます」「脱線が多いです」。もっとも、この不満は少数でした。もらった意見は、今後の授業に生かしましょう。

今日も55人の学生が出席したのですが、多くの学生が、14回を休まずに出席しています。9時開始の授業は、学生にとってはつらかったと思います。そのように記入した学生が、何人もいました。「でも、出席して良かったです」とも書いてくれました。

成績評価はレポートで行います。どのようなレポートが出てくるでしょうか。また、私の振り返りについては、別途書きましょう。

読書のサーフィン

2017年7月18日   岡本全勝

ひょんなことから、高田康成著『キケローヨーロッパの知的伝統』(1999年、岩波新書)を読みました。なぜこの本を読もうとしたのか、もう忘れたのですが(反省。別の本に紹介されていたのでしょう)。キケロは、長年気になっていたのです。彼の人生と言うより、中世から近世まで、ヨーロッパの教養としてその雄弁術が引き継がれたことについてです。
次に、吉村忠典著『古代ローマ帝国―その支配の実像』(1997年、岩波新書)を読みました。古代ローマ帝国の時代の話は、興味があるとともに、現代日本とは時空が離れているので、お気楽に読めるのですよね。寝転がってです。

さらに本棚にあった、石川明人著『キリスト教と戦争ー愛と平和を説きつつ戦う論理』(2016年、中公新書)を読みました。連想ゲームのようにです。
へえ、と思うことが多いです。特に、『キリスト教と戦争』では、初期キリスト教が、私たちがイメージしているような、絶対平和主義・非暴力主義とは異なっていたこと。後のキリスト教徒も、異教徒や他教派を迫害し、戦争や植民地支配を行って勢力を拡大したこと。
愛と平和を説きつつ、イスラム教徒と激しい戦いを続け、新大陸では原住民を虐待し、黒人を奴隷にする。組織的かつ大量にです(もっともこの本には、そのあたりはあまり取り上げていません)。異教徒である私には、理解しがたいことも多いです。この本は、現代日本のキリスト教団の「平和主義」についても、冷静に批判しています。

キリスト教の成立については、かつて読んだ、佐藤研著『聖書時代史新約篇』(2003年、岩波現代文庫)と、山我哲雄著『聖書時代史旧約篇』(2003年、岩波現代文庫)が、勉強になりました。というか、刮目でした。イエスは生きているときに、キリスト教をつくったのではないことなどです。今、彼が再度復活してキリスト教会を見たら、びっくりするでしょうね。中世に復活したら、もっとびっくりでしょう。
私の場合は、宗教・信仰としてではなく、歴史として読んでいます。

3連休

2017年7月17日   岡本全勝

3連休、皆さんは、どのように過ごされましたか。暑いですねえ。

先週もよく働きました。月曜日は甲府で講演。火曜日は福島で勤務。水曜と金曜の午前中は、慶応大学で講義。夜は異業種交流(先週は少々控えめ)と。
霞が関では定例の人事異動があり、後輩たちが挨拶に来てくれました。みんな、紺の上着を着ているので、ネクタイなしでも汗だくでした。

私は、この週末は、比較的余裕を持った休みでした。毎週、このページでぼやきを書いているので、たまには気分のよいことも書かないと、読んでくださる皆さんに申し訳ありませんよね(笑い)。
連載「明るい公務員講座・中級編」は、続きを連休前に書き上げて、編集部に出稿しました。これで、8月7日号まで書いたことになります。とはいえ、すぐに次の締めきりが追いかけてくるのです。
日本財政学会(9月17日)の報告要旨が、17日締めきりだったのですが、これは土曜日の朝に完成させ、提出しました。慶應大学の講義の準備も、半分は進みました。最終週なので、これまでのおさらいと、私が伝えたかったことをお話しする予定です。
時々、風呂場で水のシャワーを浴びて、冷たいお茶を飲んで、頑張りました。
日曜と月曜は、京子さんのお供をして一泊旅行に。暑いときに外出はしたくないのですが、「はい」という返事しか許されていないので。

小説の読み方

2017年7月16日   岡本全勝

池澤夏樹著『世界文学を読みほどくースタンダールからピンチョンまで(増補版)』(2017年、新潮社)を読みました。この200年の世界の小説10本を、池澤さんが解説します。京都大学での講義を、文章にしたものです。名前は知っている本のほかに、聞いたこともない本も並んでいます。不勉強を恥じます。

私は、小説は読みません。というか、ほかに読みたい本がたくさんあって、とても手が回りません。それに、小説より現実世界の方が奇々怪々で、緊張し想像力を働かせなければならない舞台なので、「間に合っている」のです(苦笑)。司馬遼太郎さんや塩野七生さんは好きですが、小説として読んでいるより、事実を基にしたものの見方として勉強しています。学生の頃は、「赤と黒」や「罪と罰」なども読みましたが、どこまで理解できたやら。

この本を読んで、「なるほどそのように読むのか」と勉強になりました。近代小説って難しいことが分かりました。で、やはり、原著は読まないでしょうね。
当分の間は、読むより書くことに追われます。そして、買って積んである本をどうするかと、書斎と寝室にあふれている本を処分することを考えなければなりません。

「あなたが大うそつきか、日本の財務省が狂っているか、どちらかだ」

2017年7月15日   岡本全勝

日経新聞夕刊「人間発見」今週は、ウェルスナビ社長の柴山和久さんです。柴山さんは財務省在職中にアメリカのハーバード大学に留学し、アメリカ人と結婚します。その後、イギリス財務省に出向します。
13日の記事「日本の働き方、妻に通用せず。官僚辞め仏の経営大学院に」から引用します。
「帰国し財務省主計局の課長補佐に。働き盛りで帰宅は連日深夜。それが当たり前と思っていたが、米国人の妻にはそんな日本の官僚の生活がまったく理解できなかった」という書き出しです。

・・・英国財務省に出向していた時も、日本の財務省に戻ってからも、仕事は同じ予算作りです。英国時代、勤務時間は10時から16時まででした。それが帰国後は日付が変わっても帰ってこないし、泊まり勤務も珍しくない。日本の官僚社会では、それが普通だと説明しても、妻はまったく聞いてくれません。「あなたが大うそつきか、日本の財務省が狂っているか、どちらかだ」。
もう辞めるしかないなと思いました。妻の言い分も、もっともだと思ったからです。例えば日英に共通した官僚の仕事に、国会での野党議員の質問対応があります。日英ともに議員は72時間前に質問内容を通告することになっています。英国では時間通りに通告があり、48時間前には官僚の手で答弁資料が作成され、24時間前には大臣に渡されます。十分に吟味し、準備する時間がありますから、野党議員と大臣の国会での議論は中身の濃い、見応えのあるものになります。
日本では72時間前に質問内容を通告する野党議員は、まずいません。多くは前日の夜遅くです。それから答弁資料を作成し、大臣に説明し、慌ただしく討議に入るのです。準備不足の大臣を立ち往生させ、失言を引き出すのが狙いなのでしょう。ただ、私自身も、妻と歩調を合わせるように、非効率きわまりない仕事に、どこかむなしさを感じ始めていたのも事実です・・・