建物の維持管理費

建物を建てると、その後の維持運営費が必要になります。建設を議論する際や、建物ができた際には、建設費が明示され、予算書やパンフレットに載ります。しかし、毎年の運営費は、パンフレットに載るのはまれで、議会でも余り議論になりません。
ビルを建てた場合の運営管理費を、鹿島建設が分析していることを、教えてもらいました。事務所、学校、ホテル、商業施設ごとに分析しています。単純化すると、建設費の4倍から5倍の経費がかかります。これは、50年間の試算のようです。
ただし、これは建物の維持管理費で、電気代とか修繕費です。役所が作る建物は、建物だけで終わりではありません。例えば、図書館だと、本を買い、司書を置きと、人件費やサービスのためのその後の経費が大きいのです。というより、毎年のサービスが主体で、建物は入れ物でしかありません。私の経験では、文化会館など箱物をつくると、年間の電気代などが1億円かかりました。その他に人件費は1人当たり1千万円ですから、10人置くと1億円が加算されます。そして、これは毎年かかります。
いったん建物を建てると、住民も議員さんもその運営費を忘れてしまいます。維持管理費にマイナスシーリングをかけると、電気代とか雨漏りの補修、さらには新刊書の購入費が、毎年1割ずつ削減されます。5年後の状況を想像してください。余り話題にならないので、財政課長も切りやすいのです。
バブル期に大きな箱物を建てた市で、後任の財政課長が「これなら建物を建てずに、飲んでくれた方がよかった」と言ったという笑い話があります。同じ金額を飲み代に使うと、何も残りませんが、維持費もかかりません。場合によって、建物は負の遺産になるのです。もちろん、飲むことは、お薦めではありません。