イラク行政官への講義

昨日3月6日、JICAの依頼で、イラク政府の行政官に、東日本大震災での経験を講義しました。
去年6月にあのISILが侵攻して以来、イラク国内での避難民が250万人に上るそうです。今回、国内避難民担当の行政官12人(中央政府、地方政府職員)を日本に招き、震災復興現場の視察や意見交換をします。そのトップバッターとして、私が大震災での経験をお話ししました。
アラブの人に話をするのは、初めてです。イラクでは、地震はあるとのことですが、砂漠の民に津波が理解されるか不安でした。また、津波や原発事故からの避難と、戦闘による難民では、条件が大きく違います。こちらはプレハブ仮設住宅ですが、向こうではテント住まいです。さらに、アラビア語に通訳してもらうので、「伝導率」はかなり低くなると想定しました。
そこで、資料は2部構成。第1部は写真と図表集です。津波と被害、体育館への避難、仮設住宅での暮らし、公営住宅建設や高台移転など。各ページに簡単な解説をつけて、それを事前にアラビア語に翻訳しておいてもらいました。第2部は、日本語と数字によるまとめ。これも、事前に翻訳しておいてもらいました。行政官の視察ですから、写真だけでは報告書は書けないと思い、サービスしました。また、肝心なことは文書にしておかないと、通じないし、覚えて帰ってもらえませんからね。
通訳が入るのですが、英語と違い、私の話のどこまでが翻訳されているのか、それすらわかりません。なるべく文章を短く切って、写真や図を指さしながら、話しました。記念に、アラビア語訳した私の資料をもらってきましたが、????です。もちろん、彼らにとっての日本語も、同じですわね。アラビア語が、右から書くのがよくわかりました。ところが、文中に出てくる数字(アラビア数字)は、左から書くのです。
質疑応答は熱が入り、2時間のところ、延長して2時間半かかりました。「各地に避難した住民をどのように把握したか」「行政サービスをどのように提供しているか」など、これは絶対聞かれると思って話したのですが、さらに詳しく聞かれました。
「仮設住宅での一人暮らしが問題だ。特に中年男性が引きこもる」と話したら、笑いながら「そのような発言は、差別にならないのか」と指摘されました。「いや、これは日本社会全体の問題なんだ」と、理解を求めました。「イラクではどうか」と逆質問したかったのですが、時間がなかったので。
「犯罪は多発しなかったのか」については、「日本では暴動や略奪が起きなかった。世界でも珍しい。逆に助け合いの精神が広がった」と自慢して答えました。通訳が「ほんと、コンビニにみんな並んで待つのですから。びっくりしました」と言ったので、「あんたの経験を踏まえて、話してくれ」とお願いしました。
2時間半の講義で疲れ、職場に帰ってきたら、たくさんの仕事が待ち受けていて、昨日はへとへとだったのです。