船山徹著『仏典はどう漢訳されたのか』(2013年、岩波書店)が、勉強になりました。古代インドで成立した仏教の教え(経典)が、梵語(サンスクリット語)やパーリ語から、どのように中国語(漢文)に翻訳されたかです。
はるばるインドまで、仏典を求めて旅をした玄奘三蔵は有名です。鳩摩羅什の名前も、歴史で習いました。インドの仏典から漢文への翻訳は、後漢(西暦1世紀)から唐(9世紀)にかけてが、盛んだったようです。
全く言語が違う古代インド語を、中国語に移し替えます。単語の並びも違います、文法も違います。さらに、中国にはなかった概念を、持ち込まなければなりません。
翻訳が集団で行われたこと、みんなの前で解説しながら行われたことも多いこと、単語を逐語訳してそれから漢文に並び替えたことなど、「へ~っ」と思うことが、たくさん並んでいます。その過程は、原文(梵語)を読み上げる人、それを漢字で書き取る人、そして漢語に置き換える人、文字の順序を入れ替え通じるようにする人・・と、分業で成されます。
音訳したり、近い漢語を当てたり、新しい字を作ったり。仏、寺、塔、魔。精進や輪廻だけでなく、縁起や世界といった単語もだそうです。また、梵語にはRとLの違いがあり、漢語にはありません。
インドに旅することと、世界観というべき仏教を輸入することで、中国が世界の中心でないことも学びます。中華思想が、崩れるのです。
おもしろいです。お勧めします。
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NPOとの連携
「NPO等が活用可能な政府の財政支援」を、改訂しました。平成25年度補正予算と、26年度予算を反映しました。もっとも、26年度予算はまだ成立していないので、予定です。NPOの皆さんには、結構重宝してもらっています。行政では手の届きにくい課題について、民間に協力してもらっています。そこを行政が支援するという、新しい公の形だと考えています。
予算の概要だけでなく、これまでの活動例や、問い合わせ先も、載せてあります。工夫してあります。そのほかにも、いろんな連携を試みています。ご活用ください。
どの道路が通れるか、ホンダの貢献
自動車会社のホンダが、今回の豪雪で通れる道路を、インターネットで公表しています。「甲信地方の豪雪災害エリアの道路通行実績情報」。
これは、ホンダ車(カーナビを積んだ車)の通行実績を、地図に落としたものです。どの道路を通ったか=通ることができるかが、わかります。逆にいうと、この地図で青くなっていない道路は、通っていない=たぶん通れないということがわかります。
東日本大震災でも、大きな効果を発揮しました。ありがとうございます。ビッグデータの、代表的な活用例です。そして、行政だけが公を担っているのではない、という事例です。
官僚の板挟み、法律と信条が相反したら
読売新聞連載「時代の証言者」は、2月15日から、高木勇樹・元農林水産次官の「日本の農政」が始まりました。初回の見出しは、「農業の守り方、間違った」です。
食糧増産のために、秋田県八郎潟を干拓し、大潟村がつくられました。広い水田を求めて、1967年以降全国から589人が入植しました。しかし、この時期から米は余りはじめ、1971年、本格的な減反政策が始まります。
減反政策に従わず、作付けしてできた米は、ヤミ米と呼ばれました。当時の食糧管理法は、政府が買い取る政府米と、そうでない自主流通米とを認めていましたが、減反に従わないヤミ米の販売は違法とされていました。大潟村では農家が、減反順守派とヤミ米派に2分され、ヤミ米派3人が、国によって食管法違反で起訴されました。
・・でも、食管法が守られなくて困るのは役所だけ。売るために必死につくったヤミ米は政府米よりおいしく、消費者はそれを知っていました。食糧難の時代はとっくに終わっていたのです。
3年後、3人は不起訴になります。当時、食糧庁の企画課長だった私は、テレビ局にヤミ米派との対談を頼まれましたが、断りました。嘘をつくのが怖かったのです。官僚の私は口が裂けても「法が悪い」とは言えませんが、心の中には米政策に対する疑問が芽生えていました。それはその後も膨らむ一方だったのです・・
組織の能力、4。信頼という武器
組織の力の一つとして、「武器」(手段)を挙げました。ところで、行政組織の能力を考える際に、「武器の有効性」もあります。
すなわち、同じ政策で同じ手法あっても、受け取る国民・住民の意識の差によって、効果が違うのです。鉄砲やミサイルなら、性能が同じなら、相手に与える被害も同じです。
しかし、行政の手法の多くは、住民がそれに従ってくれることで、成果を発揮します。
自動車の速度制限をした場合や飲酒運転を禁止した場合、運転手が従ってくれると、コストは低いです。しかし、違反者が多いと、取り締まるための費用がかかります。
役所に対する住民の信頼度の差によって、行政の手法は、有効性(威力)が違ってきます。住民の信頼を得ている役所だと、仕事は進みやすく、そうでない場合は説明して説得するのに、時間と手間がかかります。
企業の場合は、企業ブランドでしょうか。同じような品質や性能の商品でも、老舗のブランドがついていると、消費者は知らない会社の商品より老舗のものを信用して買ってくれます。
商売や行政は単体で成り立っているのではなく、消費者や住民との関係の中で成り立っています。そこで武器の一方的性能とは違い、相手との信頼関係が有効性を高めるのです。武器はハードパワーであり、信頼はソフトパワーです。
さて、おさらいをすると、組織の能力は、次のようなものから、なっています。
まずは、職員の数と質、組織の編成。そして、仕事の仕方と社風。ここまでは、組織内の要素です。
つぎに、任務を達成するための「武器」(手段)があります。そして、住民からの信頼があります。これらは、相手方との関係です。