移民政策、ドイツの経験

先日、ドイツの総人口に占める移民系住民の割合が20%あることを、紹介しました(2014年7月16日)。7月17日の朝日新聞オピニオン欄に、元ドイツ連邦議会議長で移民受入れに関する委員会の委員長だった、リタ・ジュスムートさんのインタビュー「移民政策、ドイツの経験」が載っていました。
「ドイツは1950年代以降、戦後の復興を担う外国人労働者を南東欧やトルコなどから受け入れたが、本国に帰ることが想定されていた。だが、ジュスムートさんを委員長とする独立委員会が2001年、定住を前提にした受け入れや社会に溶け込んでもらう施策を提言。2005年に提言を盛り込んだ移民法が施行され、ドイツは「移民国家」に転換した」という書き出しです。
・・ドイツが受け入れてきたのはガストアルバイター(一時滞在の労働者)で、「3年間」などの期限が来たら帰ってもらうというものです。主要政党は右も左も「だから移民政策は取らない」が建前でした。
だが現実はそうならなかった。半数は本国に帰っても、半数はとどまった。ドイツの方が労働環境が安全で、収入も多かったからです。石油ショックや経済低迷で、1970年代には外国人労働者の受け入れが中止されました。しかし、いったん帰国したらドイツに戻れないことから定住が加速し、むしろ本国から家族を呼び寄せる人が増えました。
1980年代後半、私は保守系コール政権の閣僚として女性や若者を担当しました。そこでわかったのは貧困や差別などの問題を抱える女性や若者の多くが、ドイツに長く暮らす外国人だったことです。ドイツ語が十分に話せない。教育水準も低い。ほかの人と同じ権利や機会を持つ人間とはみなされていない。(移民はいないという)建前と(彼らを取り巻く)現実との深刻な矛盾に気づいたのです。
1990年代には、情報通信やバイオなどの分野で高い技術をもっている人材が足りないとの悲鳴が経済界から上がりました。さらに冷戦後に頻発した(旧ユーゴスラビアなどでの)地域紛争で難民申請者が増え、彼らを受け入れる責務も生じました。どんなに高い壁を築いても、戦乱から逃れてくる人々は必ず入ってきます。こうしてドイツは「いかに国を開くか」という切実な問いを突きつけられました・・
・・移民の受け入れは、単に労働力を受け入れることではありません。彼らも家族を持てば、子供を学校に通わせる。病気になれば医療機関で治療を受けるし、年をとれば年金をもらう。ただ、たとえ出身地が外国であっても、ドイツ社会の構成メンバーになるからにはドイツの原則や理念を受け入れてもらわねばなりません。かといって、価値観を一方的に押しつければいいわけでもない。彼らの固有の文化も尊重されてしかるべきでしょう。少数者の権利や文化を認めるということも、ドイツの基本的な価値観だからです・・
ぜひ、原文をお読みください。