メディアに踊らされ、妥協を許さない国民

講談社のPR誌『本』6月号、加藤陽子先生と高木徹さんの対談「国際メディア情報戦と日本人」から。
・・加藤 国内向けの顔と海外向けの顔ということで言うと、歴史的に見て、日本人は中間案とか妥協案をつくるのがすごく不得意な国民だと思います。仮にそういう案でトップが決断しようとしても、国内が許さない。極端に言えば、0か100しかない。
1941年の日米交渉で懸案となったのは日中問題でした。日中間は、1937年以降ずっと交渉途絶だったように見えますが、裏面では蒋介石の許まで和平交渉のパイプは届いていました。しかし、すべて失敗に終わります。日本内部で軍や外務など政治主体の足並みが揃わなかったからです。
吉野作造は1932年10月3日の日記に、リットン報告書は、客観的に読めば、欧州の正義の常識を書いたもので日本にも十分宥和的な案なのだと書いています。けれども、国民としては、希望的な観測を書き散らしたメディアのせいで、ずっと良い案が出ると思っていたわけですね。ですから、トップが妥結しようとしても国民が許さない・・