内閣府に置かれた「地方分権改革有識者会議」の第5回会議(9月30日)で、西尾勝先生が、この20年間の地方分権改革の総括と今後の展望を、簡潔に述べておられます。
・・シャープ勧告・神戸勧告に始まる戦後の地方制度改革では、国・都道府県・市町村の間の事務配分および税財源配分の見直しと、事務委譲の「受け皿」を再編成する町村の合併、特別市制の実現、道州制の実現が繰り返し論じられ続けた。すなわち、所掌事務拡張路線に属する改革が一貫して指向され続けていた。これに対して、機関委任事務制度の全面廃止、行政的な関与の縮小・緩和とその定型化を中心にした「第一次分権改革」は、自由度拡充路線に属する改革を基調としたものであって、地方分権改革論議に新しい地平を開いた。
「第一次分権改革」で将来に「残された課題」は、地方分権推進委員会の『最終報告』の最終章で、以下の6項目に整理されている。すなわち、①地方税財源の充実確保、②法令等による義務付け・枠付けの緩和、③事務権限の移譲、④地方自治制度の再編成、⑤住民自治の拡充、⑥「地方自治の本旨」の具体化である。①と②は自由度拡充路線に属するもの、③と④は所掌事務拡張路線に属するものである。地方分権推進委員会としては、当面は①と②の自由度拡充路線に属する改革を続行し、その上で③と④の所掌事務拡張路線に移行することを期待していたと言える。
その後の推移を見ると、小泉内閣が政治主導で進めた「三位一体の改革」は上記①の実現を目指したものであったが、残念ながら、所期の意図に反する結果になって挫折した・・
この項続く。