進歩は、多くの失敗の上に成り立つ

400トンの金属の塊が、時速1,000キロメートルの早さで、空を飛ぶ(ジャンボジェット機の場合)。私には、理解しがたいことです。
加藤寛一郎著『飛ぶ力学』(2012年、東大出版会)が数式なしで解説してあるとのことで、本屋に行ったら、関連する書籍がたくさん並んでいました。ふだんは立ち寄ることのないコーナーです。悪い癖で、何冊か買いました。
その中で、鈴木真二著『飛行機物語 航空技術の歴史』(2012年、ちくま学芸文庫。2003年中公新書を収録したもの)を、先に読みました。
リリエンタールのグライダー、ライト兄弟の初飛行、エンジンや翼の改良、ジェットエンジンの開発、ジェット旅客機と、この100年あまりの歴史が、テーマごとに易しく述べられています。ライト兄弟の初飛行は、1903年、たった110年前です。
これだけだと、一直線に開発改良が進んだと思えます。でも、この本を読むと、失敗の連続ですね。ここに至るまでに、どれだけの失敗や事故が重ねられたか。驚きます。それと同時に、不可能と思われたことに挑戦した先人たちの努力に、頭が下がります。鈴木先生も、あとがきで、次のように書かれています。
・・空を自由に飛びたいとする人類のロマンが、飛行機として結晶するまで、技術と科学の長い発展があったことを改めて知った。それは、段階を追った積み上げと、突然の飛躍が繰り返されることで達成されたが、いずれも人間のドラマがそこにはあった。過去の因習にとらわれることなく、空の飛行を成し遂げようとする人間のロマンが原動力になっていた。
近代の科学技術がいきなり導入されたわが国では、それらが簡単に手に入ってしまったために、新しい科学や技術が長い歴史の流れのなかで、人間の意志によってなかば必然的に作り出されてきたという認識が欠けているのではないかと思ってしまう・・