7月23日の日経新聞に「技術交流の盛んな日本を始めよう」が載っていました。そこで、田中陽・編集委員が、次のようなことを書いておられます。
・・今から15年ほど前、ハーバード・ビジネススクールが、「味の素」の経営をケーススタディーとして取り上げたことがあります。主力の調味料に始まり甘味料、加工食品、飼料用アミノ酸、医薬品など多岐にわたる事業領域の是非について、ビジネスエリートたちが下した結論は「選択と集中。多くの事業から撤退すべき」というものでした。味の素の幹部もこの議論に参加し、多彩な事業展開の必要性を説明しましたが、彼らを納得させることはできなかったそうです・・
その後、味の素の事業領域は香粧品、電子材料なども加わり、さらに拡大しています。その大半は同社の中核であるアミノ酸やバイオ技術に裏打ちされた事業であり、それぞれが切っても切れない関係にあります。そこで培われた長年のR&D(研究・開発)の蓄積が今、さらに多様な分野でいかされようとしています。株式時価総額も15年前の6400億円が現在は7500億円まで増えました。あの時、ビジネスエリートたちの言うことに従っていたら、新しい価値を生み出すベンチャー精神の芽も摘み取られてしまっていたことでしょう・・
年別アーカイブ:2012年
復興庁半年の評価
8月10日の産経新聞が、「復興庁発足半年 国と地方の関係一変 被災地コンサルタントの威力発揮、初予算で問われる真価」と題して、次のような記事を載せていました。
・・7月末、復興庁原子力災害復興班の太田秀也参事官の姿は、この日も東京・霞ケ関の復興庁になかった。各省庁が財務省に提示する来年度予算の概算要求が大詰めを迎えた今も、「毎週のように福島に出張している」と太田参事官は言う・・
東京電力福島第1原発事故で警戒区域に指定された自治体の担当者は、国と地方の関係を根本から変える変化が3つあったと指摘する。「接触相手のレベル」「場所」「頻度」だ。
従来、中央省庁の課長級(参事官)が面会するのは、県なら知事か局長級、市町村は首長が会えるかどうかだ。それも霞ケ関までわざわざ足を運ぶ。それが現在は、復興庁の統括官や参事官が県に毎週のように赴き、市町村の課長どころか主任級の現場担当者からもヒアリングを繰り返し、各省庁と調整するなど、国と地方の関係は一変した・・
ありがとうございます。私たちがこの仕事に従事したときから、心がけていたことです。「復興は、霞ヶ関で進むのではない。現場で進む」のです。復興本部の現地事務所、復興庁の出先局を現地に置いて、窓口とし、地元からの相談に乗るようにしました。
特に、原発事故被害を受けた福島の復興は、政府が責任を持って進めなければなりません。東京に来てもらうのではなく、こちらから出かける。当たり前のことです。「国と福島県との協議会」も、大臣をはじめ責任者が、福島に出かけていって開催することから始めました。
サッカーの試合にたとえれば、県や市町村の職員にとっても、「ホーム」で協議をするのと、「アウェー」で協議をするのとでは、気分が違うと思います。もちろん、国の職員にとっては、出かけていくことは「アウェーで戦う」ことになります。
また、「紙でもらった意見には、紙で返す」ことをつとめています。放置や先送りを防ぐためです。もちろん、返事の中には「××の理由で、できません」というものもありますが。
日経新聞も、「復興庁発足半年、政策調整なお課題 窓口一本化は進む」と題して、「復興庁が発足して10日で半年を迎える。当初は縦割り行政の弊害が指摘されていたが、最近は複数の省庁を横断する窓口として機能し始めている・・」と書いていました。
警戒区域解除と帰還に向けての準備
8月10日から、福島県楢葉町が、警戒区域が解除され、避難指示解除準備区域となりました。宿泊はできませんが、自由に立ち入り、作業をすることができるようになりました。もちろん、インフラを復旧し、1年半の間、空き家になっていた住宅を住めるようにしなければなりません。
「除染も草刈りも、できていない」と書いていた新聞がありましたが、これからその作業ができるようになったのです。
8月10日の日経新聞が、福島県川内村を取り上げていました。川内村は、昨年9月にその大部分の地域が、警戒区域が解除されました。これまでに戻った住民は、26%です。しかし、商店や事業所は、約40%が営業を再開しています。
地域の復興には、インフラと住宅の復旧、各種サービスの再開、働く場の確保の3つが必要です。病院や学校といった行政サービスだけでなく、商店がないと暮らしていけないのです。また、働く場の確保が大きな課題になります。
福島出張
私も、今週は2回、福島に出かけてきました。町役場と、これからの復興の段取りを相談するためです。まだまだ十分な意思疎通ができておらず、いくつも苦言をいただきました。
すでに着手している個別の事業は、復興庁の担当参事官や各省が責任を持って進めてくれるので、私の役割はそれに乗っていない課題の拾い上げと、進め方の段取りをつけること、そして全体を調整することです。
この時期の東京駅や新幹線は、夏休みの親子連れで賑やかです。東北新幹線が賑わっているのを見ると、ここまで戻ったかと、うれしくなります。もちろん、沿岸部や原発事故区域は、まだまだそんな状態ではありません。仮設住宅の方には、不便なそして暑い暮らしで、申し訳ありません。
ソーシャル疲れ
7月30日の読売新聞オピニオン欄、鈴木謙介関西学院大学准教授の発言から。
・・ツイッターやフェイスブックをはじめとするソーシャルメディアの普及とともに、「ソーシャル疲れ」と呼ばれる現象が目に付くようになってきた。ソーシャルメディアをしじゅうチェックしていないと不安になるとか、人間関係の維持が面倒になってしまうとか、そういった出来事の総称だと思えばいいだろう・・
友達といっても、職場の同僚や学生時代からの付き合いの親友、恋人や配偶者に紹介された人など、いろんな領域に広がっているものだ。それらの領域がお互いに切り離されているからこそ、相手との付き合い方をコントロールすることができるのだ。しかしソーシャルメディア上では、友人は皆同じように自分の書き込みを読む。それでも私たちは、学生時代の友人と職場の同僚では異なった顔で接しているから、ソーシャルメディア上でもその使い分けを意識しなければならない。そうしたところに「ソーシャル疲れ」の一因がある。
また、ソーシャルメディアでは、自分の友人たちがいま何をしているのか、リアルタイムで知ることもできる。そのことが、ユーザーにとってある種の孤立感を生む原因になっているのではないか。
私たちが行った若者向けの携帯電話の調査からは、携帯電話を手放せなくなってしまう原因として、幅広い交友関係を持ちながらも、自分がその人たちから仲間はずれにされているのではないかという孤立感があることがわかっている。もしも、ソーシャルメディア上で、自分の友達が別の友達と仲良く遊んでいる書き込みを見たとしたら、おそらく携帯電話以上に孤立感を覚えることになるだろう・・