思い出の本、原書講読

大学3年生の時(1975年)に、政治学の岡義達先生のゼミに入れてもらいました。春学期は英語の本を読んで、分担して発表し、秋学期はそれぞれ論文(というほどでもないのでレポート)を書いて発表しました。

原書は、Enid Welsford著『The Fool: His Social and Literary History』(1935年、London)、道化の歴史について書かれたものです。先生からコピーを渡され、300ページを越える英文を、辞書を片手に格闘しました。毎週月曜日に、要約を(日本語で)原稿用紙に書いて提出し、翌日のゼミで先生の朱が入って返ってきます。毎週土曜と日曜は、半泣きになりながら徹夜状態でした。
1935年のケンブリッジ大学の英語は、内容が古今東西の道化の歴史でもあり、フランス語とラテン語がやたらと出てきます。漢文がふんだんに引用される日本の古い本を想像してください。フランス語は第2外国語だったので、まだ何となくわかります。ラテン語は仕方がないので、羅和辞典を買って、前後の文章から類推しました。
20歳の時の思い出です。そのときに使ったコピーの本は、粗末な紙に印刷されたものですが、捨てるに忍びなく、まだ持っています。
1979年には、内藤健二さんの翻訳が、晶文社から出版されました。著者のウエルズフォードさんが、女性だということを、そこで知りました。

この夏に、ふと思い立って、アマゾン(イギリス)で検索してみたら、古本がいくつか出ていました。1980年代に増し刷りされたものでも、結構高い値段がついています。その中に、「書き込みがあるが、それほど高くない」ものがありました。注文したら、1週間ほどで届きました。
便利なものですね。ロンドンで古本屋を探し回って見つけるといったことは、しなかったでしょう。それが、日本にいて、インターネットで楽々できるのです。支払いもクレジットカードですし。
届いた本は、さすがに古色蒼然としています。1935年の初版本なので、80年近く前の本です。表紙裏に、インクで署名があります。なんとそれが著者の署名で、「Feb.6 1956」と添えてあります。縁あって、東京まで来たのです。
暇になったらこつこつと読んでみようかと、本棚に飾ってあります。いつのことやら。