津波避難者と原発事故避難者、その2

昨日に引き続き、福山哲郎著『原発危機 官邸からの証言』(2012年、ちくま新書)からです。福山氏は、当時、官房副長官でした。p176に「官僚らしからぬ発言」という見出しで、次のようなことが書かれています。

・・3月29日、原子力災害対策本部の下の、「原子力被災者生活支援チーム」が設置された・・このチームの発足に先だって、事前協議が各省庁の局長クラスで行われたときのことだった。かなり遅い時間だったと思う。各省庁から現状の取り組みと課題が報告された後、被災者生活支援チームで中心的な役割を果たしている、ある官僚が強い口調で発言した。
「1時間も2時間も、こんな会議をやっていてどうするんだ。何をやらなければいけないのか、保安院が率先してミッションを提示すべきだ。放射性物質が飛散する中で、我々も緊張感を持って作業に当たらなければいけない。それなりの準備もいる。岩手や宮城の状況とは、決定的に異なるのだ。それにもかかわらず、保安院や資源エネルギー庁から、まず今回の事故に対するお詫びやねぎらいの言葉が一言もないことは、理解に苦しむ。別にそんな言葉がほしいわけではないが、みんな必死に仕事をする中で時間をつくってこの場に出席している。会議が終われば、すぐ次の仕事が待っている。何をやるのか分からないような会議をしてもらっては困る」
出席していた官僚たちは一様にうなずいた。官僚らしからぬ率直な物言いだと、私は思った・・
それ以降、原子力被災者生活支援チームの会合は、副長官執務室に各省の副大臣を集め、担当の官僚同席のもと、最小限に時間を区切って毎日定期的に行うようになった・・

私も、鮮明に覚えています。各省からたくさんの幹部が、経済産業省の会議室に集められました。福山副長官から発言を促されたのですが、私は2度遠慮しました。「それでも」とおっしゃるので、上記のような発言をしました。
私が言いたかったのは、次のようなことです。
1 このチームの発足が、遅いこと(被災者生活支援本部は、すでに1週間以上も前から稼働していました)。
2 たくさんの幹部を集めた会議は、無駄であること。消防庁から気象庁まで集まっても、意味がない。課題を示し、それに関係する組織だけ集めてほしい。ここに集まった幹部は、それぞれ忙しく、部下たちは帰りを待っている。
3 会議でなく、課題を示しどのように対応すべきか、指示を出す集まりにしてほしい(被災者生活支援本部は、そのような形で運営していました)。
4 各省に作業をお願いするのだから、主催者からは、各省に対し「お願いします」の一言があっても良いのではないか。

福山前副長官は、かなり正確に書いてくださっています。もっとも、私は、この発言が「官僚らしくない」とは、思っていないのですが(笑い)。