大震災、社会学からの分析

遠藤薫編著『大震災後の社会学』(2011年、講談社現代新書)を読みました。いくつかの書評でも取り上げられていたので、読まれた方も多いでしょう。新書という体裁ですが、勉強になりました。表題の通り、社会学から今回の大震災が日本に与える影響、日本社会が大震災に対して取った反応などを分析しています。大震災のメカニズム、危機対応、復旧復興過程などについては、それぞれたくさんの論考が出されています。この本は社会学から、それらとは違った視点から、分析しています。

日々、現場での対応に追われている私にとっては、「こんな見方もあるのだなあ」と、視野が広がりました。
先日も書きましたが(3月11日の記事)、「大震災で何を失ったか」という視点でも、命、財産や街並み、日々の暮らし、政府への信頼といった、いくつもの次元があります。また誰にとってかという視点からは、個人や家族、企業、地域社会、日本社会、行政と政府といった主体別が考えられます。
拙著『新地方自治入門』(p190)では、地域の財産を、自然環境、公共施設、制度資本、関係資本、文化資本に分類して、形あるものだけでなく形のないものに広げて解説しました。

インフラや産業の復旧だけが、復旧復興ではありません。もちろん行政ができることとできないこと、行政が得意な分野と不得手な分野もあります。
そこで、NPOとの連携、企業の役割(ボランタリーと営業と)など、既存の行政に閉じこもらない発想を考えるように心がけています。また、東京で何をしたかではなく、被災地で何が実現したかを考えるようにしています。しかし、行政内部での発想は限界があり、外部の人の様々な視点が、有用です。

決められたことを実行する、これまでの延長線上で考えるのが「普通の公務員」。それを上手に実行した上に、より広い視点で新しい発想をするのが「良い官僚」だと自戒しています。そのような観点からは、復興は、官僚にとっても壮大な実験の場、国民や後世の人から審判を受ける試験の場です。官僚や行政に対する国民の信頼を回復するためには、地道に仕事をして期待に応えるしか方法はありません。

大震災関連の本はたくさん出版されていて、その多くを読むことができません。買って読んでない本も、たくさんあります。いつものように反省。