今日10日と明日11日は、自治大学校第1部課程の「政策課題研究発表会」です。4~5人の班で、5か月間に研究した政策提言を、みんなの前で発表します。15分の発表の後、同僚の研修生の他、大森弥東大名誉教授、宮島勝東工大名誉教授、本学で講師を勤めていただいている先生からの、厳しい質問が待っています。
この演習は、自治大学校の「ウリ」の一つです。かつての研修は、高名な先生から最新最高の授業を受け、それを覚えることでした。しかし、今や課題は、地元から発生します。それを自分たちで考えて、解決しなければなりません。
今日のテーマは、博物館の評価手法、人材活用、太陽光発電普及、年寄りの安全など、地域に密着した課題の研究でした。それぞれ、苦労の跡が、うかがえます。当初考えていたテーマでは結論が導けないとか、既に先行事例があったなど。正直に「議論の過程で、班が分裂しそうになりました」と述べる班もありました。でも、その過程が、この研修の狙いなですよ。
年別アーカイブ:2011年
組織を考える視点・その2
昨日の続きです。
(継承と変革)
最近、組織の設計と管理を考える時に、もう一つ重要な切り口があることに気づきました。それは、継承と変革です。
職員は、決められたことを実行しなければなりません。上司の命令、規則や法令に違反して、勝手なことをしてはいけません。しかし、現場でそれら規則に合わない事態が起きたときや、社会が変化してこれまでのやり方ではうまくいかない場合に、仕事のやり方や仕事そのものを変えていく必要があります。
そのために、組織論として、組織の中に、継承と変革の仕組みを組み込んでおくことが必要ではないかということです。
経営者が交代することで、変わる場合もあります。例えば、社長の交代、政権や首長の交代です。しかし、それは外部からの指示であり、たぶん大きな方針変更でしょう。そうではなく、現場での執行段階での変革の仕組み、組織内部での変革の仕組みが必要だということです。
「官僚機構とは、命じられたことを実行する仕組みである」と定義づければ、組織と職員による自らの改革は不要でしょうが、私はそうではないと考えています。
この場合も、組織と人との二つがあるのでしょう。
人の場合は、職員が改革意識を持っているかどうかです。幹部とともに、一般職員にその意識をどう植え付けるかが、課題になります。各職員の改革意欲であり、組織の文化・DNAです。しかし、これは人の意識に左右されるという欠点があります。
組織に着目すると、改革を担う部署を組み込んでおくということです。従来通りのことを続けていては、発展はありません。民間企業の場合は競争があるので、新しい製品を考えたり、業務の効率化を考えることが、組み込まれていることが多いのではないでしょうか。そのような部署とともに、カイゼン運動があります。
行政機関の場合に、どう設計するかです。これまでは、自らの予算や組織を大きくすることは、得意でした。事業の拡大ではなく、新しい問題を拾い上げること、今やっているやり方を変えること、場合によっては縮小することもです。この場合も、各人や各部署が、てんで勝手に好きなことをしては、収拾がつかなくなります。しかし、統制だけでは新しい変化は生まれません。かつて書いたように、秩序と混乱、維持と発展のバランスをどう取るかになります。
組織を考える視点・その1
会社にしろ、国家行政機構や地方自治体にしろ、組織の目的は与えられた課題をいかによく果たすかです。最小の経費で最大の利益をあげることであり、国民や住民が求めることを効率的に実行することです。評価の基準は、そのアウトプットでしょう。
それを達成するために、どのように組織を編成し、権限と資源(人や金)を分配するか。組織論、経営論、管理論、指導者論は、古くから関係者の大きな関心です。その切り口について、少し考えました。
(集中と分散)
その一つの切り口として、集中と分散があります。集権と分権、管理と自由、と言っても良いでしょう。
本社と支社、社長室と各事業部との間で、どこまで後者に仕事や権限を渡すかです。場合によっては、分社することもあります。すると、親会社と子会社との間にも、この問題は発生します。
軍隊にあっては、参謀本部と各部隊との間が、国家統治にあっては、中央政府と地方政府との間が、重要な課題になります。この問題は、組織が大きくなればなるほど、重要になります。官僚制は、仕事を分割することですから、その統合が必ず問題になります。
また、このような組織の間だけでなく、社長と部長の間、課長と部下との間というように、職員の間の集中と分散があります。ワンマンか、部下に任せる上司かです。こちらのほうは、分担をどう設計するかという問題もありますが、人間関係論に近くなります。
私は、仕事をする中で、長くこの問題を考えていました(例えば「システム思考、分割と統合」2010年3月18日、「部分と全体」2010年5月10日の記述)。
課長や部長としては、部下との分担をどうするか。どう振る舞うべきか。総務部長としては、県庁内での分担をどうするか。この場合は、知事と部下の関係と、県庁内の組織間の関係の二つがあります。省庁改革本部では、内閣と各府省との組織間の分担を勉強しました。官邸では、事案の分担(総理、官房長官、各大臣との間など)を勉強させてもらいました。そして、地方分権は、中央政府と地方政府との分担です。
このように、ここには、制度をどう仕組むかという組織・制度問題と、個別の事案にどう役割分担するかという運用・人の問題があります。なかなか考えはまとまらないのですが、いずれ考えを整理したいと考えています(いつのことになるやら)。(この項続く)
会計士による不祥事調査
3月7日の日経新聞法務欄は、「特命会計士活躍」でした。企業で発覚した不祥事の調査を、委託を受けた公認会計士が行うという話です。強制力は持っていませんが、電子メール記録の解析、文書や帳簿の調査をして、本人の自白を引き出すのです。推理小説のようですね。記事には、近年の企業の「不適切な会計処理」による不祥事の例が、表になっています。
管理者からすると、身内の調査ではいかに正しくても、なかなか世間の人に信用してもらえません。部外者を入れることで、信用度が高まるのでしょう。第三者による調査が、用いられるのです。もちろん、管理者からすると、隠したいことがあっても、隠すことはできなくなります。もし、会計士が「共謀して」隠すと、後で発覚すると信用をなくすことになります。アメリカのエンロン事件では、世界最大級の会計事務所が解散に追い込まれました。
政策拡充の効果検証、育児休業制度
3月4日の日経新聞「経済教室」は、大石亜希子千葉大准教授の「非正規社員の育休重視を」でした。
育児休業制度が法制化されて、19年になるのだそうです。まだ新しいのですね。この間、休業中の所得保障も拡充され、賃金の50%になっています。これは、OECD各国の平均を、上回っています。2009年度にこの給付を受給した人は、18万人です。しかし、年間出生数の2割でしかないのです。また、7割の女性は仕事を辞めていて、就業継続率はほとんど上昇していません。
教授の分析では、正規雇用社員は育児休業を取得し、就業を継続しています。しかし、非正規雇用が増え、彼女たちは就業を継続していないのです。25歳から34歳の女性雇用者のうち非正規雇用の割合は、1995年には27%だったのが、2010年には42%にもなっているのです。
ところで、この論文の中に、次のような耳の痛い記述があります。制度が拡充してきて、OECD各国を上回ったという指摘に続いてです。
・・ところが、このように相次ぐ育児休業給付の拡充が、実際に育児休業の取得を促進し、女性の就業継続率を引き上げる効果をもっていたかどうかは、これまでまったく検証されてこなかった。政策評価の観点からは、驚くべきことといえよう・・