年別アーカイブ:2011年

福島での意見交換会

2011年9月8日   岡本全勝

今日は、復興担当大臣のお供をして、福島県に、総理と知事の意見交換会、さらに総理と被災市町村長との意見交換会に、行ってきました。野田新総理は、原発などを視察してからの県庁入りだったので、意見交換会は夜になりました。
残念ながら、避難区域は解除されておらず、被災市町村は、復旧に進むことができません。市町村長からは、避難が続いている住民の苦悩や、除染を早く進めることへの強い要望が出されました。

被災地の健康と医療

2011年9月7日   岡本全勝

朝日新聞の大震災半年の特集連載、7日は健康・医療でした。病院と医師が不足している地域があること、避難者の健康不安、特に心の問題を取り上げていました。時間が経つに従って、健康の課題が変わっていくことも、解説しています。
この連載は、昨日まず雇用を取り上げ、今日は健康を取り上げています。この切り口は、よい視点だと思います。災害からの復旧といえば、通常は道路や建物の復旧を思い浮かべます。しかし、復興は、そのようなインフラだけではないのです。
また、がれきの片付けにしろインフラの復旧にしろ、復旧が進んでいます。そこで、このような課題にも、目が向いたのだと思います。そして、時間が経つにつれて、問題が変わってきます。

今回、このような課題を取り上げてもらったことは、私たちにとっても、ありがたいことです。被災者、被災地、そして国民の皆さんに、これまで気づかない課題を知ってもらうことができます。そして、私たちも、指摘された現地の課題の解決に、取り組みます。
もちろん、指摘されないようにすることが良いことなのですが、完璧は無理です。また、インフラの復旧が進んだので、それらではなく、このような課題が取り上げられているとも言えます。仮設住宅での孤立や孤独死については、早い段階から手を打ってきました。しかし、新しい課題は、次々と出てきます。
「復旧が遅れている」といった抽象的な指摘では、私たちは手の打ちようがありません。具体的な指摘は、ありがたいです。

復興の源は雇用

2011年9月6日   岡本全勝

大震災からもうすぐ半年になることから、各紙が特集を組んでいます。朝日新聞は、9月6日から連載を始めました。6日は、雇用・企業です。このページでも何度か書いているように、道路や住宅を復旧しても、街は復興しません。働く場があってこそ、生活が戻るのです。
記事でも紹介されているように、工場が休業した場合、まずは失業手当が給付されます。これも、震災に限った特例を作りました。しかし、失業手当は、期限が来ると終わります。企業が事業を再開し、求人をしないと、新しい仕事は見つかりません。岩手県と宮城県では、事業を再開した企業数は、約6割です。もう6割が再開したというべきか、まだ6割しか再開していないと見るべきか。
今回の災害で、政府が取った雇用政策に、雇用創出基金があります。被災した住民を市役所が雇ったり、市役所の委託を受けた企業が雇う制度です。約5万人の半年分を用意しました。事務作業だけでなく、がれきの片付けや、高齢者の見回りなどの作業にも、使ってもらっています。

もっとも、これはつなぎの制度です。安定的な雇用のためには、事業所の再開が必須です。一方で、被災地に新しく進出を決めた企業の例も、報道されています。ありがたいことです。
政府や自治体によるインフラの復旧、NPOやボランティア活動による支援、企業の支援も重要ですが、企業が活動してくれること。それ自体が、復興なのです。税金を納めてくれなくても、従業員を雇ってくれることが、復興になります。そして、その従業員を相手として、商店や飲食店などの自営業も再開できます。

なお、企業活動についていえば、被害は被災地だけに限りません。この記事も取り上げているように、大震災による経済への影響は、日本経済全体と世界経済への影響もあります。部品工場が被災し、全国のあるいはアジアの自動車工場が、操業を一時停止しました。さらに、原子力発電所事故は、電力供給を削減させ、工場の稼働率に影響を与えています。
今回の大震災からの復旧復興を見る際には、いろんな広がりや次元があります。災害と復旧のいくつもの次元については、いずれ解説しましょう。

つながりによる経済への効果

2011年9月4日   岡本全勝

戸堂康之著『日本経済の底力』(2011年、中公新書)を、読みました。長期停滞を続ける日本経済、大震災後の日本の経済を立て直すには、どうすればよいのか。わかりやすかったです。
鍵は、グローバル化と産業集積であると、主張します。そして、もう一つ、これらの基礎にあるつながりの重要さを、指摘します(細かいことですが、目次の第4章「産業集績」は「産業集積」の間違いでしょうね)。

海外に輸出する、工場を造る、国際的共同研究をする、海外でサービス業を展開する、投資を呼び込む。これらが、日本企業を刺激し、成長をもたらすというのです。
地域の産業集積も、企業や研究者が近くにいることで、情報を得、刺激を受け、アイデアやヒントを得ることができます。それが、大きな効果を生みます。企業や研究者が「つながり」によって、新しい刺激を受けること。これが経済発展、研究開発をもたらします。

つながりといっても、仲間同士で内にこもっていては、よい効果は出ません。アイデアやヒントを求めている人にだけ、「違う世界」「違う考え」が、よい刺激になるのです。リンゴが落ちるのを見ていても、引力を見つけたのは、ニュートンだけでした。他方、あまり関係ない者がつながっても、これまた成果は少ないでしょう。

かつて経済学では、合理的行動をする経済人や企業を想定して、議論がなされましたが、近年では、制度や慣習の重要性が、指摘されています。経済主体だけでなく、その行動を制約する環境と条件です。そして制度や習慣が、簡単には変えることができないこと、そしていくつもの制度や慣習がお互いに依存しあっていることが、指摘されています。社会学では、当たり前のことだったのですがね。
その目に見えない制度と習慣をどう変えていくか。この「つながり」は、一つの視点だと思います。
もちろん、経済だけでなく、社会や政治の分野でも重要です。人はひとりでは生きていけない。安心できる社会は、できないのです。孤独死が明らかにしたことであり、マイケル・サンデル教授の政治哲学の視点です。

私たちが陥ってはならないこと

2011年9月3日   岡本全勝

復興本部職員一同、そして各府省の職員も、復旧と復興に向けて、精一杯頑張っています。平常業務の上に、この業務が負荷されています。さらに、これまでにない災害ですから、これまでにない対応が必要です。そして、対応は急がなければなりません。関係職員の努力には、頭が下がります。
ところで、職員が精一杯頑張ることと、現地の期待に応えることとの間には、ずれが生じることがあります。せっかく頑張っているのに、地元では評価されない、成果が出ないことがあるのです。この点について、私が、気をつけなければならないと考えていることは、次のようなものです。

まず、入力(input)と成果(out put,out come)の違いです。私たち官僚は、「予算を作りました」「新しい制度をつくりました」と胸を張ります。しかし、その制度が現場で使われてこそ、意味があるのです。せっかく作った制度が理解されていないことや、知られていないことすらあります。また、せっかく作った補助金が、市町村まで届いていないこともあります。
今回の災害対応でも、いくつかそのような事例が、報告されました。市町村長さんと話していて「××は都合が悪く、変えてもらわないと、困っているのです」と陳情を受け、「え~、それは既に制度を変えましたよ」といった場面があるのです。政治家の方からも、「あの点を、どうにかしてやってくれ」という話が持ち込まれ、調べると既に改正していたとか。

新しい制度をつくった場合や、運用を変えた場合には、通達を作って、県庁経由で市町村役場に伝達します。これが通常の行政過程です。しかし、災害時は県庁の担当者も忙しい、市町村役場ではそれどころではない。しかも、避難所対策や、がれき処理などは、平常時は担当者もいなかったり、いても少ないのです。例えば、がれき処理の補助金は、これまで廃棄物処理に関する補助制度はなかったので、市町村のがれき担当職員は、補助金申請そのものが初めてのことでした。

今回は、そのような指摘を受けて、各省の担当職員がチームをつくって、市町村にまで行って、制度改正や運用改正の説明会をしました。補助金交付については、申請書の書き方も、助言しました。
現地での説明会に行くと、私たちのつくった制度がどの程度理解されているか、どこが使い勝手が悪いか、どの補助制度が喜ばれているかが分かります。すると、次の改善につながるのです。

予算というインプットの量が、必ずしも成果(アウトカム)を表さないことについては、『新地方自治入門』第9章で解説しました。

反省と注意その1
いくら新しい制度や補助金を作っても、現場で使われなかったら意味がない。使ってもらって、なんぼ。