公を支える官以外の主体

10月18日から朝日新聞夕刊の連載「生きている遺産、暮らしの知恵」が、歌や踊りでない無形文化遺産を取り上げています。一つの社会が受け継いできた、技術、制度、対処法などです。
18日は、スペイン、バレンシア平野の水法廷でした。灌漑水路にかかわる訴訟を、農家の代表が裁きます。会員は1万世帯あまり、1000年続く伝統だそうです。この裁判は、司法への市民参加、慣習的裁判所として憲法で認められ、一般の裁判所と同じ効力を持ちます。地域の制度資本ですね。
一方、日経新聞19日の夕刊「ニュースの理由」は、イギリスのキャメロン政権が、大胆な構造改革に取り組んでいることを伝えていました。「大きな社会」を掲げ、中央政府の権限を民間企業や地域社会、慈善団体に委譲します。サッチャー首相が進めた「小さな政府」は、政府の役割を縮小し市場経済に委ねようとしました。これに対し、キャメロン首相は、大きな政府を代替するのは市場ではなく、「社会」「家庭」「個人」としています。「国家対市場」でなく「国家対家庭」の戦いだそうです。
政府が拡大したのは、行政サービスを拡大したこと、そしてその背景には市場の失敗と家庭の失敗を引き受けたことにあります。民営化、民間委託は、政府が行政サービスに責任を持つが、執行は民間企業に任せることです。ごみ集めの民間委託を考えて下さい。
さらに、福祉サービスなどは、家庭や地域社会が担っていた役割を、国家が引き受けました。すると、その仕事を政府から委譲する場合は、相手は企業ではなく、家庭や地域社会、NPOに渡すことは合理的ですね。