古くなりましたが、7月9日の朝日新聞オピニオン欄「強い社会保障って?」、宮本太郎北海道大学教授の「現役世代支援するサービスを」から。
・・大陸ヨーロッパ諸国では「大きな社会保障支出」が「弱い経済」と「弱い財政・財政赤字」を引き起こしている。一方、北欧諸国では「大きな社会保障支出」が「強い経済」と「強い財政支出・黒字財政」と連動している。
なぜ同じ「大きな社会保障支出」が、異なる経済状況や財政状況を生むのか。重要な違いは、対国内総生産(GDP)比で比べた場合、オランダを除く大陸諸国は現金給付に重点を置いているのに対し、北欧諸国は公共サービスに重点を置いていることだ。
例えば北欧諸国では、現役世代を対象とした公的職業訓練や保育サービス、介護サービスなどの比重が大きく、現金給付も児童手当や教育期間中の所得保障など現役支援型だが、大陸諸国では年金の割合が高い傾向にある。
北欧型の社会保障は、人びとが失業や病気、出産や介護などで仕事ができなくなり、元気を失う前に支援しよう、若い世代に教育や技能習得の機会を与えよう、というものだ。この「翼の社会保障」が、結果として「強い経済」と「強い財政」と実現している。
逆に、人びとが元気をなくしてしまった後に、現金給付や休業補償をする「殻の社会保障」は、支出が多いほど経済の足を引っ張り、課税ベースを縮小させ、財政を不安定なものにしてしまう。これは「大きな社会保障」であっても、「弱い社会保障」だ・・
「強い社会保障」が「強経済」や「強い財政」につながる条件として、具体的には3点が重要だ。一つは人びとの「能力」を高めるものであること・・二つ目は「参加」だ・・3つめは「安心」だ・・
スウェーデンに行くと、大小さまざまな「社会保障ハンドブック」を売っている。出産した時、失業した時、病気になった時、どういうサービスを受けられるのかが容易にわかる。スウェーデンの中学の教科書は、社会保障の話に多くのページを割いている。日本でもぜひ取り入れて欲しい・・