政治の課題・社会の対立の統合

行政や政治を考える時には、社会との関係を考えざるをえません。拙著「新地方自治入門-行政の現在と未来」は、日本社会の発展と行政の役割が、一つの視座でした。
これまでの行政は、日本社会の経済発展と行政サービス拡大という大きな課題に、良く答えました。そして、この大きな課題=唯一の課題を達成したが故に、次の課題を探しあぐねているというのが、拙著の問題意識でした。
諸外国が多民族問題や階級問題に悩んだことに比べ、日本では、社会内での分裂が、あまり問題にされませんでした。それは、日本では国民がこぞって、経済発展に打ち込んだからでしょう。経済格差はあったのですが、働けば豊かになるという信仰の下、総中流意識になって、亀裂になりませんでした。それ以外の問題もあったのですが、「豊かになろう」という大きな課題の前に、隠れてしまいました。もっとも、最近では、格差が大きな問題になっています。
しかし、それぞれの社会階層を基盤した政党があって、争うといったような「対立」にならなかったのです。現在の二大政党も、社会集団の対立を反映したものではないというのが、大方の意識でしょう。
ところで、竹沢尚一郎「社会とは何か」(2010年、中公新書)は、次のように書いています。
西欧では、これまで社会を分裂させる主な要因として、貧富の格差や階級対立意識があった。しかし、福祉国家の実現とともに、この課題は社会の背景に退いていき、代わって20世紀の後半以降、文化の違いを理由とした排除の問題が主要な課題として浮上してきた・・
ヨーロッパでは、移民やイスラームが、経済停滞の中で、問題になってきたようです。