新前川リポート

経済財政諮問会議に置かれた「構造変化と日本経済」専門調査会が、2日に報告書「グローバル経済に生きる -日本経済の「若返り」を」を発表しました。これは、いわゆる新前川リポートです。
4日の日経新聞経済教室に、会長である植田和男教授の解説「新前川リポートとグローバル化対応」「開国なくして成長なし」が載っています。
元祖「前川リポート」は、1986年に発表された「国際協調のための経済構造調整研究会」(座長・前川春雄元日銀総裁)です。標題からわかるように、日本の大幅な経常収支黒字を、縮小させるためのものでした。そこでの具体的提言は、内需拡大、市場開放などでした。
今回の「新前川リポート」を、植田教授は「グローバル化の波に乗りきれなかった日本経済を再び軌道に乗せるための提言である」と位置付けておられます。そして、次のようなことを指摘しておられます。
新興国が世界経済に参加して資源高騰が起き、一方で金融不安が起きている。世界経済はグローバル化を進め、成長のためにはこれに乗らざるを得ない。また、日本のような非資源国こそ、グローバル化の利益を享受できる。一層の市場メカニズム活用と、他方での所得再分配機能強化が必要である。改革に躊躇すると、日本の衰退は必至である。
6日の日経新聞社説は、「経済若返り、問われる実現力」として、新前川リポートを取り上げていました。
・・かつて日本銀行総裁を務めた前川春雄氏が1986年に中曽根康弘首相に提出した経済構造報告書になぞらえて、21世紀版の前川リポートと位置づけられている。
この20年間に日本の経済構造は一変した。高齢化率は11%から21%へ上がり、出生率は1.7から1.3へ低下した。実質成長率(5年平均値)は4.8%から2.1%へ下がり、国と自治体が抱える長期債務残高の国内総生産(GDP)比は66%から150%に膨れた。
世界での地位低下も進んだ。93年に経済協力開発機構(OECD)で2位だった1人あたりGDPは18位へ後退し、世界競争力ランキングも22位に下がった。そこに資源高・食糧高という新たな制約がのしかかっている。まさに経済を若返らせなければ、日本はじり貧の道を歩まざるを得なくなる状況だ・・