講評

今日、66人の成績評価を終えました。一人ひとりの学生にとっては、重大なことですから、私としても真剣・慎重になります。一通り読んで点数をつけた後、何度か読み返します。減点主義だと低くなりがちなので、良いところを探して、引き上げます。授業を理解していない(聞いていない)レポートが出てくると、悲しくなります。一方、学生がこれだけのものを調べて書いているのかと、感心するのもあります。この人は、文句なくA。
多くの人は、分量や内容に関して「良くこれだけ書いたな」と思うくらい、努力の跡が見えました(一部の人を除きます)。また、地方制度の現状や分権の課題などについて、十分理解してもらえているようです。この点については、安心しました。以下、講評を述べます。
1 テーマ
第1課題「地方公共団体への議院内閣制導入の是非」を選んだ人は10人、第2課題「道州制」を選んだ人は49人、第3課題「その他」を選んだ人は7人でした。
2 形式など
課題のペーパーに「評価の基準」として、「外してはいけない要素」「体裁」などを指示しておきました。これを守っていないレポートは、当然、評価は低いです。結論またはポイントを書いていないもの、長所短所を書いていないものです。
数人ですが、誤字のとてつもないもの、白紙が挟まっているもの、文章の途中で活字の大きさが変わるもの、「ですます」と「である」が混在しているものがありました。研究者の論文を引用する際に、氏名を間違えているものも。提出する前には、読み返してください。
3 道州制について
道州制についての理解は、ほぼ全員できていました(一部の人を除く)。
評価が低いのは、次のようなものです。
私の授業を無視して、議論を展開するもの。例えば、授業で取り上げ資料も配った「第28次地方制度調査会答申」に言及せず、第27次答申で議論するもの。都道府県・市町村の上に、さらに道州制を載せるものとして議論をするもの。それも一つの考えですが、その際には、なぜ都道府県を存続させるのかを、述べておくべきでしょう。
行政論を述べず、区割りだけを議論するもの。「立法権を付与する」と書いて、その内容や問題点を書かないもの。理由なく、長所短所を羅列するだけのもの。
道州制を導入すると、財政再建ができ、分権が進み、住民が自立するなど、考察もなくバラ色の社会を描くもの。国との対比をするだけで、現在の都道府県がどう変わるかを述べないもの。
評価が高いのは、次のようなものです。
バランス良く論点に言及しているもの。あるいは、論点が多いので、ある点に絞って深く考察しているもの。このテーマは論点が広く、それに言及し出すと、分量が大変になります。よって、論点を絞ることが望ましいでしょう。例えば、基礎自治体との関係に絞った人、経済に絞った人、行政分野を分けてメリットを分析した人などです。
4 議院内閣制と首長制について
制度と運用を、区別しない議論が多かったです。例えば、地方議員の資質が低いので、議院内閣制は導入すべきでないとか、議員立法が少ないから議院内閣制は導入すべきでないなど。また、首長制の方が市長が強いリーダーシップを発揮できるというのもありました。予算や条例を成立させるためには、議会の同意が必要です。小泉内閣を見ても、「議院内閣制だからリーダーシップが弱い」とは、言えません。
5 第3課題について
これを選んだ人は、それぞれのテーマについて、それなりに勉強していました。文献を読んで勉強していることは評価できるのですが、本人の意見・分析となると、何人かを除いて、踏み込みは少なかったです。
6 そのほか
授業の内容を、そのままレポートにしたのもありました。それはうれしいのですが、課題には「あなたの意見を書きなさい」と入れてあります。また、文献の書き写し=要約もありました。よく勉強しているのはわかりますが、これも、Aを上げるわけにはいきません。
私の授業では、地方自治の基本的知識と現在の問題を理解すること、そして日本の行財政に関心を持ってもらうこと、できればニュースを見て自分としての判断ができるような能力を身につけること、を目指しています。その意味もあって、テストでなく、レポートで採点しています。レポートを書くことで、あるテーマについて、授業を超えてさらに自ら勉強してもらえるからです。これからも、関心を持ち、自らの判断でニュースを見るようにしてもらえれば、幸いです。