ハードパワーとソフトパワー

先日、考えたことです。世の中には、人を動かす力として、ハードパワーとソフトパワーがあることを、拙著「新地方自治入門」p264で書いておきました。「もう少しわかりやすく説明しろ」ということで、次のように説明しました。
相手を動かすときに、一番簡単なのは、力をもって脅すこと。国際関係では軍事力、国内ではピストルを持った警察官。もう一つは、金で言うことを聞かせること。この二つがハードパワー。一方、ソフトパワーは、武器も金も使わずに、言葉だけで相手を動かすこと。マクドナルドを食べてアメリカをあこがれ、アニメを見た外国の人が日本を好きになってくれることです。
日常生活の道具で言うと、金槌(ぶっ壊す道具)とドライバー(力で作る)がハードパワー、磁石(相手が寄ってくる)のがソフトパワーですかね。
ちょっと簡略化しすぎですが。

財政再建への道筋

17日の経済財政諮問会議で、「日本経済の進路と戦略」が了承され、18日の閣議で決定されました。これは、経済運営の中期指針です。期間は基本的には5年間で、小泉内閣では決定した後毎年改訂されました。2007年1月に安倍内閣が「進路と戦略」を定め、今回はその改定になります。よって、期間は2007年から5年間、2011年度までとなっています。今年から数えると、4年です。
本文とともに、そこに添付された参考試算(リンク先のp22)が、話題になります。ここには、これから4年間の経済の見通しと財政の見通しが試算されています。詳しくはそれをごらんいただくとして、ポイントを説明しましょう。
試算は、合計4つのケースでされています。経済については、成長シナリオとリスクシナリオの二つです。日本の持つ潜在成長力(産業の実力)が発揮される場合と、発揮されない場合です。後者は、簡単に言えば、機械や設備があるのに使われない場合と考えてください。
財政については、「骨太の方針2006」で決めた歳出削減の二つのケースです。すなわち、2011年度までに14.3兆円削減する場合と、11.4兆円削減する場合です。この組み合わせで、4通りになります。
一番良いのは、経済は成長シナリオで財政は14.3兆円の削減をする場合です。すると、2011年度では国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)は、GDP比0.1%(7,000億円)程度のマイナスになります。悪いのは、経済はリスクシナリオで財政は11.4兆円削減する場合です。これでは、GDP比1%のマイナスです。2011年度のGDPは、570~550兆円程度です。
政府は、2011年度でのプライマリーバランス黒字を、公約しています。そこで、新聞報道では、「増税必要に」と書いたのがありました。その報道は、やや不正確です。
まず、2011年度での黒字化の道筋を示したのは、「骨太の方針2006」(リンク先のp50)(2006年7月)です。そこでは、自然体では16.5兆円の赤字が生じると試算しました。そして、14.3~11.4兆円の削減を打ち出しました。この時点では、14.3兆円歳出を削減しても、その差の2.2兆円赤字だったのです。それについては、「歳入改革による増収措置で対応する」と書いてあります。それは、主に増税になります。
次に、2007年1月に、「進路と戦略」の参考試算を出しました。この時点では名目成長率が上がり税収が増えたので、成長シナリオで歳出削減を14.3兆円行うと、2011年度で黒字化するとなりました。そして、1年たって、今回の試算です。そこでは、2007年の名目成長率が低くなったので、2001年度で黒字化せず、赤字になりました。それでも、「骨太の方針2006」時点での良くて2.2兆円赤字より、赤字幅は小さいです。すなわち、この赤字幅は、経済の状況に左右されます。もちろん、歳出削減を、既定方針通り実施する必要もあります。
さらに、この目標は基礎的財政収支の黒字化であって、財政の黒字化ではありません。そのためには、さらなる歳出削減と増税が必要です。

主権国家を超える経済

17日の日経新聞「やさしい経済学ー21世紀と文明」、田中直毅さんの連載「多元化する世界と日本」から。
・・第二次大戦後の経済史は、主権国家とこの枠を超えようとするものとの対抗として描くことができる。通貨をめぐる経済政策の変遷は、明らかにその中心に位置する・・
ドル紙幣の半ば以上が米国以外で使われるという歴史的展開に伴い、米国の金融政策が米国経済の内部のみに焦点を当てて行われてよいわけではないとの認識が広まる・・この非居住者が保有するドルの発生に始まる、主権国家と自由を求めるカネの流れとの間の相克の中で、ついに主権国家の方が自由なカネの流れを前提として受け入れたうえで、自らの守備範囲を制限する方向に転じたのである・・
ユーロの創設の過程で、主権国家の内側の問題とされた金融と財政の枠組みが、主権国家を離れることになった。価値保蔵という機能を持たされる共通通貨の受容とは、金融と財政に関する主権の放棄につながらざるをえなかった・・欧州連合諸国では、景気刺激のための金融と財政の組み合わせという概念が消えた。
バブル崩壊後の日本では、不況ならば歳出増と金融面からの刺激という提言が、経済学者から相次いだ。前提は、主権国家の内部におけるマクロ経済の整合的な運営という「神学」であった。結果として、文明史の読み誤りであった・・

国の財政

14日の朝日新聞政治面、一こま漫画(山田紳画)は、なかなかのものでした。大雪で傾いた国会議事堂(立て札が立っていて、そこには「ほぼ倒産?」とあります)の上で、小泉総理と竹中大臣とおぼしき2人が、雪下ろしをしておられます。
小泉総理は「地方に破綻責任を問うなら」と言い、竹中大臣は「国の財政をこんな風にしてしまった責任も問われますよね?」と答えておられます。

寒い3連休

3連休は、いかがお過ごしですか。東京は、寒かったです。大学と少しのお出かけ以外は、こもっていました。呼ばれている講演の準備が、進みました。執筆も順調に進み・・とは、いきませんねえ。こちらの方は。
棚の封筒に入れてある資料をひっくり返していると、「こんなのもあったよな」と、忘れていた資料が出てきます。ひどいのは、「え~こんなところにあったのか」という資料も。ないので、再度入手したのに。自らの記憶力の悪さ、資料整理の悪さに、がっかりします。