リスク学と行政

大論文「行政構造改革」執筆のために、改めていろんなことを勉強しています。関係論文にあたったり、行政法の教授に教えを請うたり。随筆ではないので、それなりに大変です。平日の夜は懇談会があったり(今日は台風で中止。よって、これを書いています)、土日は疲れて・・。なかなか進みません。「副業」だから、仕方ありません。
三権分立を再確認するために、憲法の教科書を新しく買いました。昭和憲法は書き換えられていませんが、議論はどんどん進んで変化しているのですね。改めて、驚きました。
行政の新しい任務を考えている過程で、「リスク学入門」(岩波書店、2007年)を少しかじりました。現代社会で、リスク(危険・不確実性・不安)が増え、大きくなっています。もちろん原始時代の方が、人間の能力は小さく、自然災害や病気、飢えなどのリスクは大きかったのです。しかし、科学技術の進展で、それらのリスクが小さくなり、豊かになりました。ところが、その科学技術の発展が、新たな危険や不安を生んでいるのです。環境汚染、遺伝子組み換え、原子力発電所の事故、BSE、薬害。いじめや迷惑メールなどもあります。また、寿命が延びたことで、生活費・痴呆の不安も生じます。
「産業社会」が豊かさの光の面であるのに対し、リスク社会はその不安の影の面です。私の主張では、これまで政府は、産業振興で豊かさを増やす施策を行っていました。もちろん、その過程で、リスクを減らす施策にも取り組みました。社会保障・環境行政などです。しかしまだ、産業振興の方に重点が置かれ、生活の安全安心のための施策が少ないのではないか、ということです。その一端は、「再チャレンジ支援施策に見る行政の変化」月刊「地方財務」8月号に書きました。
さらに言うと、豊かさという目標に誘導するのが、これまでの行政でした。豊かさを達成し、各人の幸せが単一のものでなくなった時に、幸せの追求は各人にしてもらい、行政はそのための条件作り=障害除去が仕事になると思うのです。