発展途上国の終了

なぜこれまで、ここに述べたような仕組みで、日本の官僚制はうまくやってこれたのでしょうか。そして今、機能不全になったのでしょうか。それは、日本がこれまで、発展途上国だったからです。その時代は、それぞれの組織が、仕事と組織を拡大すれば、それが日本の幸せにつながりました。予算や人員の増加が、そのまま成果につながったのです。予算と人員、作った法律の数という「入力」で評価しても、そんなに間違いではなかったのです。しかし、もはや無邪気な拡大・膨張で、社会が良くなる時代は終わりました。限られた予算と人員で、どれだけの成果を出すか。これが大きな課題なのです。
入力の評価から成果の評価へ、変えなければなりません。しかし、それができていない、できない仕組みなのです。これまでは、拘束時間で給料を払う仕組みでした。しかし、成果で給料を払う仕組みに、変える必要があります。
先に、組織に目標がなかったと、書きました。これも、ここに関連しています。目標がなくても良かったのは、発展途上国の時代は、それぞれの組織の向かうべき方向がはっきりしていたからです。欧米に追いつくように、事業を拡大すれば良かったからです。よって、目標は要らなかったのです。しかし、経済成長が止まり、限られた予算と人員をどこに投入するか、これが大きな課題になりました。部門別の配分見直しを、しなければなりません。すべての部門が拡大すればいい時代は、終わったのです。縮小すべき分野を、決めなければなりません。部門間の評価は、政策評価ではできません(「新地方自治入門」p252)。